温泉都市 アルカンレティアでの一件以降、俺 サトウカズマは気ままな日々を送っている。
コタツでダラダラしたり、悪魔のバニルと商談をしたり、めぐみん等に連れてかれ嫌々クエストを達成したり、コタツでダラダラしたり、ゆんゆんとめぐみんの不毛な争いを観戦したり、コタツでダラダラしたり………
元スレ
めぐみん「はぁ…やめてくださいカズマ…頭がおかしくなってきますぅ……
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1490168354/
俺はふと考えた。
この先も、こんなことの繰り返しで人生を消費していくのだろうか。
特にバニルとの取引で金銭面に心配がなくなったのは嬉しい。
でもおかげで俺の日常は退屈極まりないものとなった。
刺激が欲しい。
また魔王軍幹部と死闘を繰りひろげたり、古代兵器が街を破壊するのを阻止したり、検察官のお姉さんに国家転覆の容疑をかけられて逮捕されたり……
いや、最後のは2度とごめんだわ
俺はソファーに座って一緒に暖をとってるアクアに話しかけた。
カズマ「なぁー、アクア、最近 面白いことない?」
アクア「え?どうしたの急に、そーねー……
あ、そーいえば、私のかわいいかわいいアクシズ教徒達がね、布教のためにこの街に教会を建てようと計画してるらしいのよ
崇拝される女神としてはこれほど嬉しいことはないわ」
なにそれ…笑えない
カズマ「引っ越そうかな…」 ボソ
アクア「え?」
カズマ「じゃなくてさー!!こう…なんていうか……危険だけど、多少 心が踊る……そんな感じの!!
盗まれた卵を取り返すためにつがいの火竜が街を襲いに来るーとかー??
めぐみんが医者では治せない魔法障害にかかっちゃって、仕方なく紅魔一族の村?まで連れ添うことになるーとかー??
アクシズ教会が建つとかただただ恐ろしくてただただめんどくさい事案じゃん!負×負じゃん!」
アクア「ちょ、かわいい教徒達を恐ろしいとかやめてよ!
てかどうしたの ほんとに?」
カズマ「少し前まではイベント続きの日々だったのに、なんでこう、極端に平和になっちゃうかな~って……」
めぐみん「まあ、なにか物足りないというのは分かります」
ひょこっ
風呂上がりのめぐみんがリビングに入ってきた。
アクア「でも、イベントが起きたら起きたでそれは辛いことかもしれないし…今の平和な時間を噛み締めることが大切よ」
カズマ「一年だぞ」
カズマ「もう、アルカンレティアの件から一年も経ってるぞ」
めぐみん「え?……もうそんなに経ってました?」
アクア「アハ…嘘………でしょ?」
カズマ「おそらく 刺激がなさすぎるせいで時間が過ぎるのがはやく感じるんだろうな
俺もカレンダーを確認したときは驚きすぎて小便漏らした」
アクア「一年もの間、私は何をやってたのかしら………
どうしよう…酒場でシュワシュワ飲んだことしか思い出せない!!」
カズマ「さすがにそれだけではないだろう」
めぐみん「クエスト一緒に行ったじゃないですかアクア」
アクア「あ、そーそー!!クエスト…クエスト……え?クエスト!?どんな内容だったっけ?」
めぐみん「色々あったじゃないですか、この前だって………………??
うむ…どうやら私もド忘れしたようです」
カズマ「ったく、2人とも大丈夫か?
一番最近のって言ったら………あれ?
なんで思い出せないんだ??」
カズマ「なんだこれ?」
3人を沈黙が包んだ。
めぐみん「どーやら私達3人は頭がおかしくなったようです、気付けも兼ねて爆裂魔法を打ち込んでみますか」
カズマ・アクア「やめなさい」
カズマ「どーゆーことなんだ、これは……そういえば聞こえなくなったよな?
”声”」
アクア「何?それ?」
カズマ「え?お前ら聞こえてなかった??
クエスト中、俺たちがリアクションするたびにどこからか分からないけど……聞こえてきたじゃん?
”笑い声”みたいなのが」
めぐみん「あー、私も聞こえたことあります。
私がお風呂でカズマと言い合いしてた時のことです、
なんだか 私を賞賛するような声が聞こえました」
アクア「………
あぁぁぁ!!!!!!
私も……ある!!
この一年くらいは全く耳にしてないわ」
カズマ「なんだったんだあれ……」
3人が3人とも空白の時間を過ごしている。
そして一年ほど前まで当たり前にあったものが気がついたら なくなっている。
カズマ「あの”声”は俺たちがイベントを起こすたびに聞こえていた気がする……
つまり、強制的に起こしてみるのはどうだ?」
めぐみん「そうですね…試してみましょう」
アクア「でも、何をするの?…」
ガチャリ
ダクネスが入ってきた。
ダクネス「風呂空いたぞ、カズマ
いやぁ、いい湯加減だった、身体中の疲れが解消されたぞ…
ん?どうしたんだカズマ
そのいかにも考え中、妄想中って感じの顔は」
カズマ「よし いくぞ」
ダッ
カズマはダクネスに向かって勢いよく走り出した。
そしてダクネスの寝間着姿の胸部へ
その両手を
伸ばした
むにょっ
ダクネス「ふわわっ!?な、何をするんだ貴様わーーー!??」////
カズマ「静かに」
カズマ、アクア、めぐみんの3人はじっと耳をすませた。
ダクネス「な……」
めぐみん「聞こえませんね…」
アクア「なんでかしら?前ならこーゆー時、絶対歓喜の”声”が上がっていたのに…」
カズマ(あー、この感触を忘れる前に部屋に行きたい…)
ダクネス「どーゆーことだカズマ!!なんだこれは!!説明次第ではお前の首を飛ばすことになる!!」
カズマ「まぁ、待て待て……
アクア、めぐみん、お前らの口から説明してやってくれ」
2人はダクネスに事の詳細を話した。
ダクネス「…言われてみれば確かにと思ってしまう……不思議な感覚だ」
めぐみん「やはりダクネスもですか」
アクア「もしかしたら 私達だけじゃないのかもしれないわね」
ガチャリ
カズマ「説明終わった?」
めぐみん「はい、どうやらダクネスも同じようです」
アクア「どこ行ってたのよカズマ」
カズマ「いや…ハハ…ちょっと廊下に出て頭を冷やしてきた
実はいろいろ思い返してみたんだけどな、
俺、異世界……いや、この街に来る前の事 全然覚えてないんだよ」
めぐみん「え?どーゆーことですか?」
アクア「チャック開いてるわよ カズマ」
カズマ「おっとと……
田舎に住んでいたことは覚えてる。
んで、買い物帰りだったことも覚えてる。
でもそれ以降が何も思い出せないんだよなー
両親の顔とか、学校の思い出とか」
めぐみん「言われてみれば私も…あれほど紅魔族紅魔族言ってたくせに、ゆんゆん以外の他の紅魔族のことが思い浮かびません」
ダクネス「なんだか怖くなってきたな…」
アクア「と、とりあえずクエストいきましょ?みんな」
カズマ「ああ…そうだな」
街は不気味なくらい静かだった。
4人はギルドで受付を済ませ、街の門のところへ行った。
めぐみん「さあ!今日も元気にカエルを狩りましょう」
アクア「食べられないようにしなきゃ。。。」
ダクネス「囮役は私に任せてくれ!」
カズマ「やれやれ」
いつもの感じで一行は門の外へ足を踏み出した。
ガンッ
何かがカズマの進行を妨げる。
カズマ「なんだこれは…」
カズマは唖然とした。
透明な壁のようなものが街全体をドーム型に覆っているのだ。
ダクネス「ぐぬぬ……はぁダメだ」
ダクネスが押したがビクともしない
アクア「なによこれ…」
めぐみん「昨日までこんなものはなかったはずなのに……いや、昨日…………そもそも昨日のことが思い出せません」
カズマ「……っっ」
その時カズマは考えた。
俺達は気づいてはいけないことに気づいてしまったんじゃないのかと
例えば この世界のタブー。
この素晴らしい世界の構造。真理。
アクアは近くにいる住民に話しかける。
しかし彼らはなにも言わない。
ダクネスは近くにあった建物のドアを開けようとした。
しかしそのドアは開かない。
カズマはふと気づいた。
そういえばこの感覚は初めてじゃない。
たしか……そう!
国家転覆罪の容疑でギルドに検察官供が押しかけてきた後もそうだった。
俺たちはしばらく空白の時間を送っていた。
そして何かが息を吹き返したように、またイベントが立て続けに起こったのだ。
あの時も”声”が聞こえた…
「このす…きけってい」
おぼろげには覚えてるのだが思い出せない。
なんでこんな大事なことを忘れていたのだろう。
カズマ「訳がわかんねぇ……
訳がわかんねえよおおおおおおおおおおうおおおおおおおクリエイトウォータアアアアア!!!」
壁は水をはじきかえす
めぐみん「はぁ…はぁ…
やめてくださいカズマ…頭がおかしくなってきますぅ……」
めぐみんはその場に頭を抱えて座り込んでいる。
一行は絶望していた。
謎の孤独感、虚無感が街全体を漂っているような気がした。
カズマ「なんなんだよこれ…」
ガチャッ
何かが外れる音。
カズマ「!?」
めぐみんは周りを見渡す。
街が再び活気付いている。
それはまるで長い呪縛から解き放たれたような感覚だった。
めぐみん「何か聞こえます」
アクア「え?ほんと!?」
「このす…きけってい」
ダクネス「ほんとだ!」
カズマ「これは…?」
「このすば…んきけってい」
カズマは耳をすませた。
今度ははっきり聞こえた。
「このすば、三期決定」
おわりw