男「お、あんなとこに猫カフェがあるぞ! 最近増えたよな、猫カフェ」
女「ちょうど猫ちゃんをさわりたかったんだ~。入ろうよ!」
男「そうだな、一時間ぐらい猫とたわむれるってのもいいかも」
男「お邪魔しまーす!」
キィィ…
カランカラン…
猫「……いらっしゃい」
元スレ
男「猫カフェがあるぞ!」女「入ろう!」 猫「……いらっしゃい」
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男「え……」
女「あれ……」
男女(このカフェのマスター……猫じゃん!!!)
猫「……どうした? 入り口にぼーっと突っ立って」
男(しかも、やたら声渋いな!)
女(洋画の吹き替えとかできちゃいそうな声だわ!)
猫「好きな席にかけるといい」
男「じゃあ、カウンターで……」
女「私は隣……」
男(静かなジャズが流れてて、雰囲気いいな……)
女(室内の装飾も、いかにもレトロな喫茶店って感じ……)
猫「二人ともコーヒーでいいか? 今日はいい豆を仕入れたんでな」
男「はい……」
女「はい……」
猫「元気がないな。借りてきた猫のように大人しくなっちまって」
猫「コーヒーができるまで時間がかかる。リラックスして、トークでも楽しんでくれ」
男「あの……立派なお店ですね」
猫「そんなことない。猫の額みたいな狭さだろ」
女「えーと……どうして猫なのに言葉を話せるんですか?」
男「お、おいっ!」
猫「…………」ギロッ
女「ひっ!」
猫「冗談だ。当然の疑問だよな」
猫「長く生きてると、言葉のひとつやふたつ話せるようになるのさ」
猫「尻尾はまだ一本だがな」フリフリ
猫「コーヒーだ。さ、飲んでくれ」
男「いただきます……」ゴクッ
女「私も……」ゴクッ
男「あ、うまい!」
女「おいしい!」
猫「ありがとう」
猫「お客の“うまい”“おいしい”は、どんなキャットフードよりも、俺にとってご馳走だよ」
猫「ところでお前さんたち、さてはここを一般的な猫カフェだと思って入ったクチだろう?」
男女「!」ギクッ
猫「図星か。まあ、こちらも紛らわしい看板を出してすまなかった」
猫「他にいい名前も思いつかなかったんでな」
男「いえ、そんな……」
猫「コーヒーを褒めてくれた礼だ。一般的な猫カフェにいる猫のように、鳴いてやろう」
猫「にゃんっ♪」
男女(か、可愛い……!)
男「あ、あのもう一回!」
女「今の、もう一回お願いします! スマホで撮りたい!」
猫「バカいえ……あんなの一回だけだ」
男女(照れてる姿も可愛い……!)
バタンッ! カランカラン…
男女「!?」
チンピラ「おうおうおう! このドラ猫! 誰に断って、この土地に店を出してんだァ!」
猫「もちろん、役所に正式な手続きをして店を出してるよ」
チンピラ「あぁん!? この辺りじゃ、新しく店を出す時はオレに金を払うって決まりがあんだよ!」
猫「そんな決まりは知らんな」
男「みかじめ料ってやつか……!」
女「ど、どうしよう……!? 猫さんが危ないよ!」
チンピラ「これ見ろ」サッ
チンピラ「でけえドスだろ? こいつで刺されたくねえだろ?」
猫「刃物をちらつかせれば、誰でも言うことを聞くとは思わないことだ」
チンピラ「ンだとコラァ!」
チンピラ「だったら望み通り、三味線にしてやるよ!」ビュオッ
女「キャーッ!!!」
ジャキッ
チンピラ「うっ……!?」
チンピラ(オレの首筋に……爪が!)
猫「音楽は好きだが、あいにく楽器になる趣味はないんでな」
猫「窮鼠猫を噛むように……追い詰められた猫が人を噛むことだってあるんだ」
チンピラ「…………」ゴクッ
チンピラ「ちっ、ちくしょう! なめやがって!」
チンピラ「いいか、オレの親分は“傷だらけの仁王”と恐れられてる――」
猫「ああ、よく知ってる」
チンピラ「え」
猫「なにせ、あいつのあの傷は俺がつけたもんだからな」
猫「もっとも今では、あいつとは大の親友だが……」
チンピラ「あ、あ、あ……親分のお知り合い……?」
チンピラ「すみませんでしたぁ~!」タタタタタッ
猫「やれやれ、手下の教育がなっていないな」
男「すっげえ……」
女「刃物を持ったチンピラをあっさり追い返しちゃった……」
ブロロロロロ… キキッ
女「あれ、店の前におっきいリムジンが止まったよ」
男「なんだろう?」
猫「……またか」
カランカラン…
社長「猫くん!」
猫「……なんだ、社長」
男「ん? あの人、どこかで見たことあるような……たしかテレビで……」
女「あれよ! ≪ドトーバックス≫の社長よ!」
男「ホントだ! なんで世界的カフェの社長が、この猫カフェに……!?」
社長「用というのは他でもない」
社長「ぜひ、我が社のイメージキャラクターになってくれ!」
社長「君のような喋る猫がイメージキャラクターになれば、我が社の売上は倍増する!」
猫「その話は断る……といったはずだ」
猫「俺は目立つのが嫌いなんだ。大企業の客寄せパンダになるのはゴメンだ」
社長「…………」
社長「これでもかね?」カパッ
猫「……金、か」
男「うわっ!? トランクぎっしりの札束だ!」
女「いったいいくら入ってるの!? 何千万とか?」
男「そんなもんじゃない……億はいってるだろ」
女「億ゥ!?」
猫「社長……俺が金になびく猫だと思ってるのか? だとしたら見くびられたもんだな」
猫「そういうのを“猫に小判”というんだ」
社長「うっ……!」
猫「帰ってくれ……これ以上粘られると出入り禁止にせざるえない」
社長「す、すまなかった! ここのコーヒーを飲めなくなるのはイヤだ! 許してくれ……!」
男「うおおお……!」
女「大企業の社長が猫に平謝りしてる……!」
カランカラン…
美女「ごきげんよう」
猫「……久しぶりだな」
男「うはっ! 今度の客はすっげえ美人!」デレー…
女「うぐぐ……たしかに嫉妬する気にならないほどの美人だわ……」
女「その気になれば、今すぐモデルにでも女優にでもなれそう……」
美女「来月……結婚することになったの」
猫「そうか」
美女「相手は……大財閥の御曹司よ。パーティーで一目惚れされちゃったの」
猫「……おめでとう」
男「やっぱり、あんな美女と結婚できるのは、大金持ちなんだなぁ……」
女「私は、貧乏人と結婚することになりそう……」
男「誰のこと?」
美女「今でも昨日のことのように思い出すわ。あなたに振られたあの日のこと……」
猫「……すまない」
猫「お前の気持ちに応えてやれなくて……」
美女「ううん、いいの」
男女「ええええええええええ!?」
男「し、しかし、あの猫さんならあの美女と並んでも絵になる……」
女「たしかに……」
美女「最後に、この首輪を贈るわ」
美女「もし……私より下の女とくっついたら、許さないんだから」
猫「猫に鈴をつける、というわけか」
猫「俺が結婚する時は……お前以上の女を選ぶ。約束する」
美女「私の気持ち、受け取ってくれてありがと」
猫「お幸せにな」チリン…
男女(とてもなにか口を挟める雰囲気じゃない……)
男(また客が俺たちだけになった……)
男「……うん、うまい」ゴクッ
女「ここのコーヒー、どうしてこんなにおいしいんだろうね?」
男「そりゃ、あの猫さんの腕もあるだろうけど……やっぱり豆が違うんだろ、豆が」
女「どう違うの?」
男「いや、俺あまりコーヒー詳しくないし……ってあれ?」
コロコロ…
男「あんなところにフンが落ちてる」
女「ホ、ホントだ! 誰のだろ!?」
猫「それは……俺のだ」
男女「え!?」
猫「さっき、どうしても砂のトイレまで我慢できず、つい出してしまったんだ」
猫「俺のフンは汚くはないが、できれば保健所には黙っておいてくれ」
猫「叱られてしまうんでな」
男「ええ、いうつもりはないんで、安心して下さい」
女「……あ、そういえば!」
男「どうした?」
女「私聞いたことあるんだけど、ある種の猫のフンってコーヒーの材料になるんだって!」
男「あ、それ知ってる!」
男「たしか、ジャコウネコって猫のフンが、コーヒーの材料としては最高級らしい!」
女「ここのコーヒーがこんなにおいしい理由も分かってきたね!」
男女「つまり、マスターの正体は……」
男女「ジャコウネコだ!!!」
猫「いや、ただの雑種だ」
男「なんだよ!」
女「雑種かーい!」
猫「雑種で何が悪い!」
男女「!!!」ビクッ
猫「雑種だろうがなんだろうが猫は猫! そこに貴賎などない!」
猫「だいたい雑種だからといって、低く見る傾向は以前から感心しなかった……」クドクドクドクドクド
男「完全無欠に見えて、妙なコンプレックス持ってるんだな……」ヒソヒソ
女「でも、こういうところがある方が親しみ持てるかも……」ヒソヒソ
男「ごちそうさまでした!」
女「コーヒー、とてもおいしかったです!」
猫「こちらこそ楽しかったよ」
猫「気が向いたら……また遊びに来てくれ」チリン…
男「はい! ここのコーヒーの味は忘れられませんよ!」
女「またこの二人で来ます!」
男「最初は面食らったけど、とてもいい猫カフェだったな」
女「私、あのマスターにすっかり癒やされちゃった~」
男「また来ような!」
女「うん!」
あなたも休みの日には、こんな猫カフェはいかがですか?
~おわり~