千歌「GANTZ?」【前編】

144 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 02:14:57.72 pvRBcGWb0 122/267

昔の話が色々出てきたので一章より前の時系列を一応確認



五年前:ミューズを乗せたバスが事故に遭い東京のガンツの部屋へ

?年前:梨子が東京チームへ参加

三年前:千歌(当時中学二年)が沼津(静岡)チームに参加する
    
    新宿のミッションで東京チームは穂乃果、梨子以外全滅
    100点を獲得した梨子はここで解放を選択
    (このミッションは沼津チームと合同で行われており、千歌も参加)

一年前:曜(当時高校入学前)が沼津チームへ参加
    この時のミッションで100点を獲得した千歌は解放を選択

半年前:果南が沼津チームへ参加
    
三日前:善子が参加(この時のミッションで曜が死亡)
   

現在(一章):千歌が再び沼津チームへ参加



こんな感じの設定で話を進めております

149 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:06:53.88 pvRBcGWb0 123/267

五章

ガンツのミッションは基本的に人の少ない場所で夜に行われる
一般人への被害を最小限に抑えるためだが
星人の行動によっては夕方から始まったり夜でも人が多い街中になったりもする

時刻は夜8時、平日とはいえ秋葉原には多くの人が往来していた
そんな中、大量の星人出現
千歌達が転送された時にはすでに多数の死者が出ていた
警察や自衛隊も出動しているが事態は未だ終息していない

150 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:07:24.69 pvRBcGWb0 124/267




――
――――
――――――


千歌「こいつら! 一体ずつがかなり強い!!」キンッ! キンッ!


二人の前には四体の星人が立ちはだかっていた
大きさが3m弱で金棒を持っているのが二体
何も持っていないのが一体
その後ろに4mを超える星人があぐらをかいて座っている

全員鬼のような見た目であった


鬼の一体が雄叫びをあげながら千歌目がけて金棒を振り下ろす

――バックステップで回避
振り下ろされた場所には大穴が空いた


追撃を加えようとした鬼だが、曜の放ったYガンにより拘束された



ガンツの武器にはXガン、ガンツソードのような殺傷武器の他に
捕獲用の武器であるYガンが配備されている
3つの砲身がYの字に配置された外観をしているこの銃は
上下のトリガーを引くことで銃口から実弾式のアンカーボルトを発射する
目標付近でワイヤーを実体化させ対象を束縛
アンカーは地面や建物に固定することで拘束する
その後、上トリガーを引くことで星人を上へ転送する事ができる

曜はこのYガンを多用している

151 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:07:59.31 pvRBcGWb0 125/267



「よし捕らえた! これで……」


上トリガーを引こうとするが側方からの鬼の攻撃により妨害される
その隙に武器を持っているもう一体の鬼がアンカーを破壊し
拘束が解除される


千歌「この星人……沼津港で戦ったのに似てる。ちゃんと連携がとれている」

「だったらこっちも連携して戦うまで! 幼馴染の力の見せどころだね」ニヤ


千歌「――よし、曜ちゃんはその銃で動きを止めて! すぐに私が仕留める!!」

「任せて!!」カチャ




~~~~~~


鞠莉「――ったく、しつけのなってないワンちゃんね!」バキッ!

善子「速いなもう!」ギョーン!ギョーン!


神田明神の境内には数十匹のオオカミ型の星人が出現
全方位から絶妙なタイミングで襲ってくるので
決定的なダメージを与えられないでいた

二人は背中合わせで対峙している


鞠莉「善子! 何匹倒した!?」

善子「まだ一体も! 速すぎて当たんないのよ」ギョーン!ギョーン!ギョーン!

152 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:08:40.28 pvRBcGWb0 126/267




一匹一匹はそれほど強くは無い
一対一なら戦闘力の劣る花丸でも容易に倒せる

だが基本的に戦いは数が多い方が有利
徐々に二人を追い詰める


――不意に星人が善子の手首に噛みついた
弱いとはいえスーツを着ていなければ噛み千切られていただろう



――パキン!



何かが割れる音がした



――スーツの耐久性能には限界がある
一定量以上のダメージを受けるとスーツ各部にあるレンズ状のメーターから
ゲル状の物質が漏出し、全ての機能を失う

しかし、メーター自体を破壊された場合
受けたダメージに関係なくその部位のスーツの機能が無くなる


星人の牙は偶然にも手首にあるメーターを貫き
善子の手首を噛み砕いた




善子「―――っ!? がああああぁぁぁああ!!!?」ギョーン!ギョーン!

反射的に撃ったXガンは星人に直撃
爆発四散した

153 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:09:09.88 pvRBcGWb0 127/267



善子の手首の骨は完全に砕かれ
辛うじて一部の皮膚だけで繋がっていた

当然、女子高生が耐えられる痛みのハズが無いが
一度腕を切り落とされた善子は何とか意識を保っていた


善子「ふー……ふー……」ドバドバ

鞠莉「無事なの!? 善子!!?」


うずくまっている善子のケガを見て鞠莉は絶句する



鞠莉(出血がひどすぎる…このまま戦わせれば失血死しちゃう)


考えている間も星人は攻撃を仕掛けようとしている
迷っている場合ではない


鞠莉「――ごめん! 善子!」バキッ



鞠莉は善子を本殿まで蹴り飛ばした
一旦引かせるためとはいえ、今の一撃で今度こそ手首が千切れてしまった事に
罪悪感を覚える鞠莉



鞠莉「さて……正念場ってやつかな?」



善子によりやっと一匹倒したが
まだまだ数は多い


再び全方位から襲い掛かってくる――

154 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:09:52.02 pvRBcGWb0 128/267




~~~~~~


梨子「ハァー……ハァー…」ポタッ ポタッ


四体いた星人も梨子により半分に減っていた
ただ、その代償に左ひじを骨折していた

指先から血が滴る



花丸「さ…桜内さん……」ブルブル

梨子「ハァー……国木田さん、ちょっと一人でこの二体を倒すのは厳しそう。何とかして退路を作るから助けを呼んで欲しい」


花丸「え!? そんなケガなのに一人で戦うなんて無理だよ!」

梨子「…大丈夫、時間稼ぎなら……できる」ハァーハァー



実際には二人で戦っていない
花丸には下がるように命令し、梨子一人で戦っていた

花丸では相手にならないことを直感で分かっていたからだ



花丸「私だって…私だって戦えます! だから――」


梨子「黙って指示に従いなさい!! あなたじゃ無理なの、一瞬で殺されるの!!」

花丸「っ!?」ビクッ


梨子「…もう国木田さんを死なせるわけにはいかない。あなたをこの地獄から守り切る事が巻き込んでしまった私の責任であり使命なの」

梨子「その為なら……私の命だって賭ける覚悟よ」ハァーハァー

155 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:10:31.54 pvRBcGWb0 129/267



梨子は脅されていたとはいえ、自分の手で殺めてしまったメンバーに対し
強い罪悪感を持っていた
彼女達が生き残る為なら危険な囮役でも即死級の攻撃でも身を挺して庇うことも
命を捨てる覚悟があった

特に花丸は一度死なせてしまっている
これ以上繰り返すわけにはいかなかった




――星人が鎌を振りおろす

ガンツソードで防ぐが片手ではパワー不足だ
刀ごと近くの手すりに叩きつけられる


花丸「梨子さん!!」

梨子「――早く行きなさい……国木田 花丸!!!」グワッ





~~~~~~


ルビィ「――しっかりして!! 目を覚ましておねぇちゃん!!」


アルパカ小屋の裏側に二人は身を隠していた
頭から血を流し、意識は朦朧としているのはダイヤだった
スーツはすでに壊れている


退路を確保しつつ逃げながら戦っていた二人だったが
校舎に生徒が残っているのを見つけてしまったのだ

救出に向かったダイヤ
しかしその生徒は星人が化けていた偽物であった
不意の攻撃に受け、ダイヤは頭部に大きなダメージを受けたのだ

ルビィにより何とかその星人を撃破、ダイヤを救出し
今の場所まで逃げてきた

156 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:11:27.76 pvRBcGWb0 130/267



ダイヤ「……申し訳…ありません……完全に…油断しました……」ハァーハァー

ルビィ「おねぇちゃんは悪くない! 誰でも助けに行った、星人が卑怯だっただけだよ!」ポロポロ


ダイヤ「どうですかね……きちんとレーダーを見ていれば…」



星人はまだまだ残っている
頭をケガしている以上この場を動かすわけにはいかない

残された選択肢は
助けが来るまでここで待つ
ここの星人を全て倒す
後は……


ダイヤ「ルビィ……逃げなさい」

ルビィ「……え?」

ダイヤ「わたくしも…少し休んだら追います……ここに二人でいても仕方ありません」



ダイヤは分かっていた
この量の星人ではここが見つかるのも時間の問題

ここにいたら二人とも助からない
今のダイヤがルビィを守るために出来ることは
一刻も早くこの場から逃がす事だけであった



ダイヤ「心配しないで……必ず追いつきますから…」ニコッ


ルビィ「―――嫌だ、絶対に置いていかないよ」

157 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:12:00.87 pvRBcGWb0 131/267

ダイヤ「!? ル……ビィ?」


ルビィ「私だって見れば分かるよ…今のおねぇちゃんのケガは休んだくらいじゃ良くならない事くらい」

ダイヤ「っ!! でしたら、どうしてこんな事を言っているかも…理解しているでしょ!?」

ルビィ「うん……おねぇちゃんはルビィを逃がす為に自分を犠牲にしようとしてるんだよね?」


ダイヤ「なら―――」

ルビィ「でも、そんな事されて生き残っても嬉しくないよ」



ダイヤ「…仮にここで死んでも……100点を取れば生き返る」ハァーハァー

ルビィ「このミッションで全滅したら? それにおねぇちゃんを生き返らせてくれる人がこの先必ずしも生き残るとは限らない」

ルビィ「それに……もうおねぇちゃんが死ぬのはもう二度と見たくない」



ルビィの目がいつもとは違う事にダイヤは気が付いた
自信が無くおどおどとした目つきでは無く
戦う覚悟を決めた…あの時の鞠莉と同じ目をしていたのだ



ルビィ「――『黒澤家にふさわしいのは常に勝利のみ』」

ダイヤ「!?」

ルビィ「私だって黒澤家の人間だよ。いつまでも負け続けるわけにも、守られるだけの自分でいるわけにもいかない……」

ダイヤ「………」


ルビィ「――今度は私がおねぇちゃんを守る番。おねぇちゃんはここで待っててね」ニコッ



――ダメだ
このままルビィを行かせるわけにはいかない

ダイヤは引き留めようとするが
もう声を出すだけの気力は残っていなかった

意識を失う前に見たものは
戦場へ向かう大切な妹の後ろ姿だった

158 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:12:30.04 pvRBcGWb0 132/267






~~~~~~

辺り一面穴だらけになっていた
道も壁も止まっていたトラックも

千歌と曜が戦っている大型の星人によって開けられた穴である


二人のコンビネーションにより
三体の鬼星人の討伐、捕獲が完了済みである

最後に残った後ろの星人との戦闘に入っているが……


ガンツソードで切り付けるが余りの硬さに折れてしまう
Yガンでの拘束を試みるも、自力でワイヤーを引きちぎる
Xガンによる攻撃もダメージが薄い



千歌「まずいよ…攻撃が全然通じない」ゾワッ

「動きはそこまで早くない! とにかく手足を攻撃して逃げられないようにしよう!」



このタイプの星人は捕獲し転送するのが一番良いのは分かっていた
しかし撃っても撃っても
手足が落ちる事は無い

159 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:13:00.40 pvRBcGWb0 133/267




――ドゴ!



星人の拳が曜の腹部に直撃し後方へ吹き飛ばされる
建物を突き破り、かなり遠くまで飛ばされたようだ
曜の安否が確認できない

しかし、そんな事を星人は許さない
続けて千歌へ腕を薙ぎ払う

刀を盾にして防ぎ、踏ん張るが――


千歌「っ!!? 重い!?」グググ


スーツのパワーではこの星人と渡り合う事は出来なかった
側方の壁に叩きつけられる



千歌「――かはっ…」バタン


うつ伏せに倒れる千歌のもとへ
星人はゆっくりと近づく

早く逃げなくては……
しかし、想像以上のダメージにより思うように動かない



千歌(このっ! 動け! 動いてよ!!!)グググ


千歌は星人を睨み付けるが
その背後の景色が目に入り絶望する…

先ほど倒した星人と同じ姿をしたものが
続々と現れていたのだ

160 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/17 23:13:56.94 pvRBcGWb0 134/267




千歌(何で…何で今回に限ってバラバラに転送したの……? こんなの……無理だよぉ)ポロポロ



泣くなというのが
絶望するなというのが無理な話である

いくら戦いに慣れ始めたとはいえ、彼女達はまだ高校生だ
死の恐怖には抗えない

千歌にはもう立ち上がる気力は残っていなかった



千歌(ごめんね…みんな……もう疲れちゃったよ……)グタッ



星人はもう千歌の目の前まで近づいていた
あと数歩で拳が届く



――ズドン! ――ズドン!



圧倒的な――――――が
―――――を上から押しつぶした

164 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:02:11.10 f/muyODb0 135/267






――
――――
――――――


人生は普通で満ち溢れている

朝寝坊した日、曲がり角で運命の人とぶつかる事は無い
強敵を前にして突然新しい力が目覚める事は無い
正義が悪に負けることなんてざらにあるし
主人公補正なんてものも無ければ
絶体絶命のピンチにライバルが助けに来るなんて事も無い

どんなに良い人間も
どんなに良い仲間に恵まれていても
死ぬときは案外あっさり死んでしまうものだ

私は少年漫画のような王道展開より
こういう現実味を帯びた邪道な展開の方が好みだ




――でも、彼女たちの人生は普通だろうか?
死んだと思ったら勝手に再生されて
訳のわからない宇宙人と殺し合いを強いられる

いくらなんでも可哀想だとは思わない?


そんな彼女たちをもし手を伸ばせば助けられるなら
こんな捻くれた私だって迷わず助けるよ




ああ、ちなみに王道な展開が嫌いなわけじゃないよ?
正義の味方には今でも憧れているし
あの熱い展開はやっぱり癖になるもんね!








――ねえ知ってる?
ヒーローは遅れてやってくるんだよ――

165 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:02:58.71 f/muyODb0 136/267






――圧倒的な見えない何かが
星人の全てを上から押しつぶした




千歌には何が起きたのか分からなかった

星人がいた場所は大きな円柱状に削り取られた穴が二つ出来ていて
底に血の海が出来ていた


――目の前に黒いモノホイールバイクが止まった

千歌達の部屋にもあったバイクだったが
誰も運転できないので今まで使用しなかった


千歌(今回は誰かが持ってきたの……?)



バイクには二人、運転席と後ろに乗っており
どちらも千歌達と同じ黒いスーツを着ていた

後ろに乗っている人物が倒したようだが
持っている大きな黒い武器に見覚えが無いが

その持ち主の顔は確かに知っている
あの時とは違い、いつものサイドテールをしていた



???「ふー…何とか間に合ったみたいだね……」

穂乃果「……私が倒してくる。ことりちゃんはここで待ててね」ガチャ


千歌「ほ……穂乃果さん………」ポロポロ



千歌は涙する
だが今回は絶望したからではない

音の女神のリーダーは千歌の無事を確認し微笑んだ




穂乃果「―――もう大丈夫。後は任せて」ニコッ

166 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:03:30.98 f/muyODb0 137/267






~~~~~~


鞠莉はボロボロだった

二人でギリギリ対処していた敵だ
いくら格闘に優れた鞠莉といえども相手にならなかった


スーツの耐久にはまだ余裕を残しているが
体力の限界が近かった


鞠莉(きっつ!? こいつら手首のレンズを狙ってくるから油断できない!)



疲労による一瞬の隙を付き星人は鞠莉の手足に噛みつく
じりじりとスーツにダメージが入る



鞠莉「このっ! 放しなさい!!」ブンブン


必死に振りほどこうとするが
噛みつく力は相当なもので銃以外では対処出来ない
急がないと鞠莉も、出血中の善子も危ない



――ダン! ダン!



――空から黒スーツを着た二人組が舞い降りた


???「うげ!? 数が多すぎでしょ!? こんなの一人で相手するのは無理ね」

???「あーあ……本堂も境内も滅茶苦茶やん。こりゃ、星人にはた~ぷりお仕置きせなあかなぁ?」



鞠莉(誰!? Xガンの二丁持ちに……あの武器は何?)


にこ「私はあの子に噛みついてる奴を撃つ! 希は周りをお願い!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!

「了解や!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!


鞠莉に噛みつく星人は爆破
周囲30cmの星人は全て圧死した


鞠莉「うお!? 私ごと巻き込むつもり!?」ゾワッ

167 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:04:21.55 f/muyODb0 138/267




~~~~~~

ルビィ「―――まだ増えるの?」



出来るだけダイヤから遠ざける為に戦場を校庭に移し
大小様々な星人の相手をしていた

それなりに訓練や実践を積んできたルビィではあるが
その戦闘力は花丸とほぼ同じ
恐怖を克服したとはいえ劇的に強くなった訳では無い

やっとの思いで倒しても次から次へと新手が現れる
強敵がいないのは不幸中の幸いだが
終わりの見えない戦いはルビィの精神力をごっそりと削り取る


倒した星人は七体
本来なら十分過ぎる成果だが今回に限ってはまだ足りない


ルビィ「まだ…まだ倒れるにはいかない……負けるわけには…」



大型の星人が棍棒は横に薙ぎ払う
予備動作もハッキリあり、速度も速くない



――ドゴッ!



避けるのが容易い攻撃でさえ彼女の脇腹に直撃する

……もう限界だった
誰が見てもルビィはよく戦ったと評価するだろう
倒した星人も普段の実力では倒せない強さだった
諦めても誰も文句は言わないだろう……



ルビィ「――うううぅぅぅ!!!!」グググ



――それでもルビィは立ち上がる



ルビィ「私は…負けない!! おねぇちゃんは……私が守るんだ!!!!」


ルビィの死はそのままダイヤの死に直結する
大好きな姉とこの戦いから解放されるまで
絶対に諦めるわけにはいかない

168 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:04:56.67 f/muyODb0 139/267


しかし、もう立っているだけで精一杯

武器を構える事も出来ないルビィに対し
星人は容赦なく襲い掛かる


ルビィ「っ!! うわあああああ!!!」



――スパッ!



無残にも肩から腰にかけて切断される
だがそれはルビィでは無い

ルビィに襲い掛かった星人の一体が何者かに切られた


そのまま後ろに倒れそうになるルビィを誰かが抱える
増援は二人いたのだ
目の前にいる金髪の女性と抱えてくれた女性は
ルビィに優しい声で話しかける



???「…ハラショーよ。貴方の覚悟は痛いほど伝わったわ」

???「たった一人でこの数を……私があなたと同じ年齢の頃だったら逃げ出していたよ」


ルビィ「……え? この声は?? え?」


どちらの声も聞き覚えがあった

聞き間違えだと思ったがそんな事は無い


毎日彼女たちの歌声を聴いているし
姉とライブのDVDも数えきれないほど繰り返し観ていた

今、目の前にはダイヤが憧れていた人物が
後ろにはルビィが憧れていた人物がいるのだ



絵里「花陽、その子は任せたわよ? こいつらは私が始末する」チャキ


花陽「うん! 頼んだよ絵里ちゃん!」

169 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:08:04.75 f/muyODb0 140/267





~~~~~~

壁に寄りかかっている梨子の意識は朦朧としていた
スーツはとっくに機能を停止しており戦闘不能になっていた


梨子(どうなったんだっけ? スーツが壊れるギリギリで一匹倒した事まで覚えてる……そうだ…花丸さんは上手く逃げたかな……)


意識が徐々にハッキリとしてくる
頭も段々回るようになってきたところで
一つの疑問が浮かんだ



梨子(――なんで私は生き残ってるの?)


星人は最初四匹いた
少なくとも一匹は確実に残っている
花丸が命令通り逃げてくれたのならとっくに自分は星人に止めを刺されているハズ

生き残っているということは……


完全に意識が覚醒した梨子の目の前では
花丸が残りの星人の攻撃を紙一重でかわし続けていた



梨子「んな!? どうして逃げてないの!!?」ゾワッ


梨子の声に気付いた花丸は一旦星人から離れ
梨子の近くまで来た



花丸「――よかった! 意識が戻ったずらね!!」ハァーハァー

梨子「そんな事はどうでもいいの!! 何でここにいるのか答えなさい!!」


花丸「……梨子さんの命令だったからだよ」

梨子「は?」

花丸「私は梨子さんが大嫌いずら。ルビィちゃんやマルをこんな地獄に突き落とした張本人なんだもん。今でも許せないし、仲良くなるつもりもない」


梨子「だったら、なおさら私なんか置いて逃げるべきでしょ!?」

花丸「……でも、梨子さんも責任を感じている事は伝わった。本当に命がけで守ってくれることも分かった」


花丸「――ただね、命を懸けるのは今じゃない。こんな敵、マル一人でも倒せる」



梨子はどうして花丸が守ろうとしているか理解できなかった
殺したくなるほど憎いはずの自分を何故見捨てないのか

今まで一度も目も合わせた事も無い
訓練中に殺意を感じた事も一回や二回ではなかった


そんな花丸が何故……


170 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:08:42.20 f/muyODb0 141/267



梨子(―――そんな事はどうでもいい!! 早く行かなくちゃ!)ググッ



立ち上がろうとするが
足に力が入らない

その間にも花丸は再び星人の方へ向かっていく



梨子「ダメお願い!! お願いだから逃げて!!!」


梨子の叫びは花丸に届く事は無く――







???「―――うにゃああああ!!」バキッ


突如、奇声を上げながら星人の側方から飛び蹴りを食らわせる
謎の少女が現れた


花丸「ずら!?」ビクンッ

梨子(ガンツのスーツを着てる!? 誰なの!?)



茶色い髪でショートカットのその少女も
梨子たちと同様の格好をしていた


???「ヤレヤレ…昔は一人でガンガン点数稼いでた梨子さんもこんなにボロボロになっちゃって……私が死んでた間に弱くなったんじゃない?」クルクル



一人の女性が赤い髪を指で巻きつけながら梨子に近づいてきた



梨子「ま……真姫さん!? どうして……!?」

真姫「久しぶりね梨子さん。まさか、あなたがまたこの戦場にいるなんてね?」


真姫「色々と話したい事はあるけど手当が先ね……凛! 一人で大丈夫そう!?」



「うん! サクッと倒すから大丈夫にゃ!!」パシッ!


「さて……まずはその鎌から引き千切ろうかな」ニヤリ

171 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:09:13.54 f/muyODb0 142/267





~~~~~~

果南「ふー……さすがに疲れたよ~」



一人敵の大群のど真ん中に転送された果南だが
完全に無双状態だった

決して星人が弱かった訳では無い
千歌達が相手をしていた鬼
鞠莉達のオオカミ
ルビィ達の大型妖怪
梨子達のヘビ

それらの個体より若干劣ってはいたものの
ほぼ同等の力と姿をした星人が入り乱れていたのだが
本気を出した果南の相手にはならなかった


大量にいた星人も今や残るは一体だけ
般若面を付けた人型の星人だ
腰には日本刀を携えている



果南(こいつだけ他の星人とは違う……放っているオーラが別格だね)ゾクゾク


ガンツソードを構える果南だが
彼女の直感が警告している

――こいつには勝てないかもしれない



だが逃げるわけにはいかない
こいつを倒さねば仲間に合流出来ないしミッションも成功しない



――覚悟を決める





???「――おや? もうあの星人しか残っていないのですね?」


果南の背後から誰か話しかけてくる
振り向くとそこには綺麗な長い黒髪の女性…
そう、まさしく大和撫子がそこにいた

彼女の両手にはそれぞれガンツソードが握られていた



???「貴方……かなりの実力者ですね。あれだけの星人をたった一人で…穂乃果と同じ強さかもしれませんね?」クスクス

果南「えっと……あなたは私の味方って判断していいの?」

???「ええもちろん。その為に私はここに来たのですから」



海未「――私の名前は園田 海未です。僭越ながら助太刀に参りました」カチャ

172 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:10:06.53 f/muyODb0 143/267






~~~~~~

穂乃果「ことりちゃん、千歌ちゃんをお願い」


バイクの運転席に座っていたことりに穂乃果は指示を出す


ことり「千歌ちゃん! 穂乃果ちゃんから聞いてたけど……大きくなったね」ニコ

千歌「ことりさん!? どうして!?」

ことり「驚くよね? あの後、穂乃果ちゃんが“全員”再生してくれたの」



千歌は絶句した
昔、東京チームと合同で参加した新宿でのミッションの際
東京チームは穂乃果と梨子以外は全滅していたのだ

それから約三年
彼女は少なくとも八回は100点を取ったことになる



ことり「…よかった、スーツは壊れていないみたい」


「――千歌ちゃん!!」ガラ



建物の穴から吹き飛ばされた曜が戻って来た


千歌「曜ちゃん!! 無事だったんだね!」グスッ

「あれ!? その二人は誰なの?」


ことり「はじめまして♪ あなた達の味方だから安心してね」ニコニコ

「味方? あ…ここ東京だもんね。東京チームも来てたんだ……ってあの人、一人で戦ってるよ!? 加勢しなきゃ!!」ゾワッ


ことり「大丈夫、今はここで休んでいて」

173 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:11:29.48 f/muyODb0 144/267



多数の星人からの攻撃を余裕を持ってかわす
隙を見ては撃つ

穂乃果は未知の武器を使用していた
グリップを間に挟んだ形状の双銃身の黒い大きな銃
Xガン同様タイムラグの後
円柱状に押しつぶす

威力は絶大で
Xガンやガンツソードで倒せなかった星人も一撃、多くとも三撃で仕留める



千歌「あれって…100点の武器なの?」

ことり「そうだよ。新宿のときから持ってたけど、狙いが定まらなくて使えなかったの…そのことで穂乃果ちゃん凄く後悔していたな」

千歌「確かに…あれだけの武器があったなら……」



――ズドン!



最後の一体を倒す
ダメージは一切食らっていない



穂乃果「――この武器で一撃で倒せない敵がいるなんてね……二人はよくこの星人と戦って生き残ったね?」


千歌「いえ…完全にお手上げでした。穂乃果さんが来てくれなければ今頃――」



千歌「……あっ!? 他のみんなは!? バラバラに転送されたんです!! 早く向かわなくちゃ!!」

ことり「慌てなくても大丈夫。そっちにも増援は向かっているよ! みんな強いから問題ないはずだよ」


174 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:12:01.85 f/muyODb0 145/267




~~~~~~


「――よし、ひとまずこれで大丈夫や」キュッ



神田明神に出現した星人を殲滅した三人は本殿に蹴りこまれた善子のもとへ
善子が自身である程度の止血はしていたが希がキチンと手当てする


善子「……ありがとう…助かったわ……」ハァーハァー

にこ「かなり衰弱しているわね…もう少し早く来ていればっ!」ギリッ

善子「いいんです……痛いのは慣れています…から……」



鞠莉「でもまあ、驚きました…まさかあなた方が生きているなんて……」

にこ「何? 私達のこと知ってたの?」

鞠莉「はい。あの部屋について調べていたときに知りました。その…穂乃果さん以外は三年前に……」


にこ「…穂乃果には悪い事をしたと思っているわ……先輩である私達が弱かったせいであの子に負担をかけてしまった…」

「だから再生してもらったからには、穂乃果ちゃんを守れるくらい強くなる覚悟で今まで戦ってきたんや!」

鞠莉「ふふ……見た所何回か100点を取ったみたいですね」



にこ「―よし、一休みしたら他のメンバーの増援に向かうわよ! まだ鞠莉にも戦ってもらうからね?」


鞠莉「――ええ! もちろん!!」パシンッ

175 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:12:54.69 f/muyODb0 146/267



~~~~~~


ダイヤ(……体が…動かない………ルビィは…どうなりましたの?)


「頭――血が!? ―丈夫な――すか!?」アワアワ

「まず――ね……意識がハッ――して――いわ」

「しっ―り―て!! お――ちゃん!!」



ダイヤ(誰…ですの? うまく……聞き取れない)



ダイヤ「……ル…ビィ………?」

ルビィ「おねぇちゃん! 良かった……気が付いた!!」グスッ


ダイヤ「一人で……倒したん……ですか?」

ルビィ「うんうん、絵里さんが助けに来てくれたの!! おねぇちゃんの大好きなエリーチカだよ!!」

絵里「あなたがダイヤさんね? ルビィちゃんから話は聞いたわ。妹にとっても愛されている素敵なお姉さんね?」


ダイヤ「絵里……さん…? あなたが……ルビィを…?」

絵里「私は少し手伝っただけよ。ほとんどの星人はルビィちゃんが倒していたわ。
あなたを守る為に」


ダイヤ「……そう……ですか……」



ダイヤ「ルビィ……気が付かないうちに…ずいぶん強く……なりましたね………安心…しました……」


ルビィ「………」

ダイヤ「…ふぅ……お姉ちゃん……少し……眠いん…です……ちょっとだけ……休んでも………よろしい……ですか……?」

ルビィ「……うん、大丈夫だよ。少し休んでね。しばらくしたらちゃんと起こすから安心して?」


ダイヤ「…少し……目を閉じるだけ…ですから………頼み……ま…し………たよ……」




ダイヤはそう告げて目を閉じた
その寝顔はとても安心しきった
安らかな表情であった




ルビィ「………」

花陽「ルビィちゃん………」


絵里「――レーダーに反応があるわ。こっちに近づいて来る」


ルビィ「……行きましょう。おねぇちゃんが休んでいる間に終わらせます」

絵里「……ええ、そうね。花陽はそこでダイヤさんを守っていてくれる?」


花陽「…はい! 任せてください」ウルッ



ルビィは再び戦場へ向かう

もう涙は流さなかった
覚悟は……とっくに出来ていた

176 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:13:54.12 f/muyODb0 147/267






~~~~~~

真姫「見事に折れているわね。一応吊ってあげるから少し我慢しなさい」グイ

梨子「~~~っ!!?ズキンッ あ……ありがとうございます」


真姫「頭もケガをしているみたいだけど、意識もハッキリしているし問題は無さそうね。ただスーツは壊れているから大人しくしている事ね」


梨子「……穂乃果さんはミューズのメンバーを全員再生したんですね?」

真姫「…ええ、最初の方に再生したメンバーも途中で100点を取ったけど…結局は穂乃果が全員再生させたわね」

梨子「穂乃果さん……本当に一人で…」




「――真姫ちゃーん! 終わったよ!!」



話している間に凛はもう星人を片付けていた
星人は四肢を千切られており見るも無残な姿となっていた



真姫「……凛、素手で戦うのは構わないけど…もう少しその倒し方は何とかならないの?」

「えぇ!? だって鎌は危なかったし…そもそも仕留めるなら首から上を壊せばいいって言ったのは真姫ちゃんだよ?」

真姫「そうだけど……引き千切るってのはどうなの? 正直ドン引き…」

「武器で破裂させたり切り落としたりするのとどう違うのさ!?」


花丸「凄くどうでもいいずらぁ……」ヤレヤレ

177 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:14:54.92 f/muyODb0 148/267





「――…それで、これからどうするにゃ?」

真姫「そうね…私はここで梨子さんと待機してる。レーダーを見て危なそうな場所に増援に向かう。二人はまだ星人が残っている花陽達の場所に向かって」

「了解!」ビシッ


梨子「わ…私の事はいいです! 真姫さんも…」

「大ケガしてスーツも壊れた人を一人にしておくと思う? いいからここで真姫ちゃんと待っててよ」

真姫「そうね…ここで昔話でもしながら待機している」


「そうそう! じゃあ行くよ花丸ちゃん!!」ダッ

花丸「ちょっ!? 待ってほしいずらぁ!!」ダッ



梨子「二人とも行っちゃいましたけど…凛さんは大丈夫なんですか?」

真姫「まあ…頭はそこまで良くないけど、私よりよっぽど強いから問題ないわ……多分」

梨子「あはは…」





――
――――
――――――

ミューズの参戦により戦況は大きく変わった
星人の数も激減している
ミッションももう少しで終わると誰もが思っていた

ただ、増援があるのは千歌達だけではない
本ミッションにおける最重要ターゲットの二体が
秋葉原の街に舞い降りようとしていた――

178 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:16:14.74 f/muyODb0 149/267





~~~~~~


穂乃果「――さて、そろそろ二人とも体力も回復したよね?」


千歌「はい! 大丈夫です!!」

「同じく!」グッ


穂乃果「さっきは『任せて』って格好つけたけど、あなた達がここに来たって事は今回のミッション、東京チームだけでは足りないってガンツが判断したから。ここからは二人にも手伝ってもらうからね?」



ことり「――敵が近づいて来る! 構えて!!」




――ズシン!




空から星人が落ちてきた
ガンツに表示されていた奴と同じ顔
今回のボスである



天狗「ほほーう……この鬼どもを蹴散らすとはな。中々はやるではないか」ニヤリ



千歌「!? しゃべった!!?」

穂乃果「…中には私達の言葉を理解している星人もいる……そんな星人は例外なくかなり強いよ」



右手に長い棒を持つこの天狗は先ほど倒した鬼とは異なり
やや細身の体つきであった
身長も2m程であり見た目はそれほど強そうでは無い

179 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:17:03.38 f/muyODb0 150/267




―――ギョーン! ギョーン!




穂乃果は引き金を引く
今まで多くの星人を倒したこの武器だ
当たればこの天狗も間違いなく死ぬ


――天狗は後ろに下がり攻撃をかわす



天狗「…その武器はもう知っている。隙を作らねば当たらんぞ?」


ことり「そうみたいだね? なら作るまでだよ!!」ダン!



ことりは天狗に向かって一気に距離を詰める
同時にホルスターに収めていた刀を展開、斬り付ける


キン! と金属がぶつかり合う高い音がした
天狗は右手の武器でことりの攻撃を防ぐ

タイミングをずらし千歌も斬りかかるが
それも容易く捌く


曜もYガンで拘束を試みるが当たらない



天狗「“その”武器も、もう知っているぞ! 見える分避けやすい!」



――瞬間
背後にことり、正面に千歌がまわる


ことり千歌「「―――っ!!!」」シュッ


――同時に斬りつける

180 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:17:33.97 f/muyODb0 151/267




天狗「―――甘い」


千歌の斬撃を武器で
ことりの斬撃は素手で受け止めた


――バキッ! ドゴッ!!



そのまま千歌を蹴り飛ばし
ことりの頭を鷲掴みにして地面に叩きつける



千歌「ことりさん!!」


しかし、ことりは抵抗する素振りは見せない
それどころか天狗の足を両手で力いっぱい掴む




―――ギョーン! ギョーン! ギョーン!




穂乃果は再び引き金を引く
近くに、ことりがいるにも関わらず――


千歌「――何やってるんですか!!!??」ゾワッ


千歌は穂乃果の行動に絶句した
あろう事か、ことりごと天狗を始末しようとしたのだ



千歌(ダメ! もう間に合わな……)


「―――ギリッ!!」ダンッ!



穂乃果が発砲した瞬間
曜は動きだしていた

天狗を完全に無視し
ことりを強引に引きはがす

181 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:18:15.17 f/muyODb0 152/267




――ズドドドン!!



――刹那、天狗は見えない円盤に三度押しつぶされる
曜は直撃を避けられたものの
ことりの左足首は巻き込まれ、削り取られた



「っ!? 大丈夫ですかことりさん!?」

ことり「う……うん、大丈夫…」ズキッズキッ



千歌「穂乃果さんどうして!? もう少しで二人とも巻き込まれて死んでたんですよ!?」


穂乃果「――だからどうしたの? ことりちゃんを助けてっていつ頼んだ?」キョトン

千歌「……は?」


穂乃果「ことりちゃんが隙を作ってくれたから私が攻撃した。何か間違っている?」

千歌「…本気で言っているんですか?」


穂乃果「仮に巻き込んで殺しても、私が“再生”すれば問題ないでしょ? あなた達は自分の仲間だけを助ければいい。巻き込んでもそっちメンバーは私が再生できないからね」



「このっ!? あんたは自分の仲間を何だと……!!?」


激情し穂乃果に向かおうとする曜をことりは引き留める



ことり「いいの! 私は気にしてないから……」

「気にしてない!? あいつはことりさんを“モノ”と同じ扱いをしたんだよ!? なんでそんなに平気な顔をしていられるの!!」


ことり「それは……」

182 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/18 21:19:49.24 f/muyODb0 153/267




――グググッ




潰されたはずの天狗が再び立ち上がる


天狗「ハアアアア……こりゃ効くな! まさか仲間ごと撃つとは…やるな、女ぁ!!」


千歌「死んでない!? なんてタフなの!?」

穂乃果「………」


天狗「いいや? 確かに死んだぞ? だが一回殺したぐらいで、わしはくたばらん!!」



穂乃果は持っていた武器を放り投げ
手首に装着したコントローラーを操作した



穂乃果「……なら二度と立ち上がらなくなるまで殺してあげるよ」ピッピッピッ


コントローラーに入力したその直後
穂乃果の体に身の丈程の高さで大木のような太さの腕と
フルフェイスのマスクが転送・装備された



「あれは……スーツなの?」

穂乃果「千歌ちゃん…天狗の動きを止める事だけ考えて。決定打は私が与える」


千歌「……はい」



天狗「楽しませてもらおうか!! さあ、かかって来なぁ!!!」グワッ!

187 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:20:12.55 SuvZJJS40 154/267



千歌「―――曜ちゃん! そのままことりさんをこの場から離して!」ダッ!



穂乃果と千歌は天狗との距離を詰める
曜は千歌の指示通り、ことりを担いで離れる


先ほど転送された装備によりかなり重厚な姿になった穂乃果だが
その見た目とは裏腹に、未着用時と全く変わらないスピードだった

千歌が天狗の初撃を刀で防ぎ
穂乃果が顔を地面に叩きつける



――ドゴ!!




通常のスーツでは考えられない威力だった
腕に付いたジェット噴射装置により加速されたパンチは
天狗の頭蓋骨をアスファルトごと粉砕する



一瞬の静寂――



しかし、頭部が破壊されたまま立ち上がる天狗
飛び散った頭部の破片が元の場所に集まり再構築されていく



天狗「いいパンチだ! まさか一撃で砕けるとはなぁ!!」


穂乃果「――再生するタイプか…厄介だな!!」ドゴッ! バキッ!



穂乃果は何度も拳を天狗の体に食らわせる

188 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:21:14.22 SuvZJJS40 155/267

天狗の全身の骨はボロボロとなり
たまらずひざまずく

穂乃果は肘に付いた鋭利な刀で首を落とす
落ちた頭に手の平を向ける

そこには発射口があり対象を削り取る光線が発射される
光線により天狗の頭部は完全に消滅した



千歌(凄いな……私、必要無いじゃん)



千歌の言う通り、圧倒的な強さで天狗を追い詰める穂乃果に対し
加勢はむしろ邪魔になるだろう
穂乃果の方も、もはや千歌は意識の外にあるようだ


しかし、天狗はなおも立ち上がる
消滅した頭部も粉々となった全身の骨も治っている



天狗「面白い装備だな? 多用な武器が内蔵されているようだが……今ので全部か?」

穂乃果「…頭を潰しても消し去ってもダメ……なら全身を消滅させる!」



天狗と穂乃果は再び衝突する――





~~~~~~

学院の校庭ではルビィ、絵里と一体の星人が睨み合っていた
鷲のような風貌をした人型この星人は今回のボスでは無いが
それに近い強さを秘めているのは嫌でも感じ取れた


絵里「――ルビィさん…この星人を二人で倒すのは厳しいわ……増援が来るまで生き残る事だけ考えなさい」

ルビィ「………」ダッ!



絵里の指示を無視しルビィは犬神に突っ込む



――ビュオオォォ!!


辿り着く前に後ろに吹き飛ばされた

189 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:21:42.48 SuvZJJS40 156/267


星人が手を横に薙ぎ払うことで生み出した風圧だけで
人が吹き飛ばされたのだ

余波で校舎の窓ガラスも全て割れる



絵里「くっ!!? ルビィ! 無事なの!?」

ルビィ「――大丈夫です! あの手には当たらない方がいいですね……」

絵里「…もう勝手に突っ込まない事。戦うなら二人でやる方がいい」

ルビィ「……増援が来るまで逃げるんじゃないんですか?」


絵里「そうしたいけどね……星人は私達を逃がさないでしょうね」



星人は二人に襲い掛かる
ルビィはXガンで応戦するもこのレベルとなると中々当たらない

絵里のガンツソードも全て回避される



「――――っ!!」シュッ!


星人の鋭い突きがルビィに突き刺さる
スーツの防御力により体に穴が開くことは無かったが
耐久値を一気に削り、無力化された

星人はトドメの手刀を繰り出すが絵里により防がれる
ルビィを担ぎ、一旦距離をとる



ルビィ「っ!! すいません……」ギリッ!

絵里「仕方ないわ…一撃でやられなかっただけ運がいい」



星人にはまだダメージは無い
絵里一人では手に余るが……

190 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:22:12.72 SuvZJJS40 157/267





――ズドドドン!!



突如、星人が押しつぶされた
絵里が振り向くとそこには希達が増援に到着していたのだ



「間に合ったみたいだね…ケガは無い、えりち?」

絵里「ええ…来てくれて助かったわ……」フゥー


善子「痛っ! とんでもなく痛いわ……」

鞠莉「ここにはルビィがいたのね……他に一緒にいたメンバーはいる?」

ルビィ「………っ」

鞠莉「ん? ルビィ??」


にこ「――にしても凄まじい威力ね? 見事にぺっちゃんこじゃない」スタスタ



にこは無意識の内に倒れた星人に近づいていく
いつもならあの銃を食らったほとんどの星人は死ぬ
希は念を入れて三発撃ち込んでいたので
間違いなく倒したと思っていた


――星人の指先がピクリと動いたのを善子は見逃さなかった


善子「――っ!!? 近づいちゃダメぇぇぇ!!!!?」


にこ「……は?」



善子は叫ぶがもう遅い
星人は右腕を振り上げ鋭い衝撃波を放つ

その威力はスーツの耐久を無視し
にこの左腕と少し離れていた希の右腕を肩から切り落とす

191 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:22:42.10 SuvZJJS40 158/267




絵里「希!? にこ!!!?」ゾワッ


死んだと思った星人はよろよろと立ち上がる
全身血まみれとなっていたが
その表情は怒りに満ちている

あまりの激痛にうずくまる にこ
星人はもう一度右腕を振り下ろす――




――バキッ!




――凛の拳が星人の右腕をはじき、軌道をずらす
花丸がにこを抱えるのを確認し二人はみんなの所まで下がる



絵里「希! しっかりしなさい!! 今止血する!!」キュッ

「うぅ……油断したわ……まさか生きてるなんて…」ドバドバ


にこ「全く……助けに来た二人が最初にやられるなんてね……」ハァーハァー

「花丸ちゃんも止血お願い!!」



怒り狂った星人は絵里達のもとへ襲い掛かる――

192 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:23:15.93 SuvZJJS40 159/267






~~~~~~

曜はことりを建物の中に避難させた
消滅した足首の止血を済ませ、急いで戻ろうとする



ことり「――ちょっと待って! 曜ちゃんは誤解してるの!!」

「……誤解ですか?」


ことり「…穂乃果ちゃんは仲間を大切にしない人じゃない、むしろ凄く仲間思いな子なの
……」

「………」


ことり「昔の穂乃果ちゃんは凄く明るくて笑顔の素敵な子で……ミッションで誰かがケガをするたびに涙を流す優しい子だった」

ことり「でも…あるミッションで穂乃果ちゃん以外のメンバーが全滅したことがあったの……」


ことり「しばらくしてから私は穂乃果ちゃんに再生された。私は泣いて喜んだよ? また大好きな穂乃果ちゃんに会えたんだもん……でも穂乃果ちゃんは表情一つ変えなかった」


ことり「その後に再生したメンバーに対しても同じ……それどころか目つきも冷たくなっていた…」



ことり「――穂乃果ちゃんの心はあの時に壊れちゃったの……大好きだった人達を一度に全員失った悲しみに耐えられなくてね…」


「……だったら解放を選べば…部屋での記憶は消されるんでしょ?」

ことり「私達はあの部屋に行く前から友達だった。解放を選んでもメンバーを忘れることはできない……」

ことり「それに……穂乃果ちゃんの100点メニューに一番の選択肢が何故か無くなっていたの」


「選択肢が無い!? 人によっては無くなる選択肢があるんですか!?」

193 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:23:51.93 SuvZJJS40 160/267


ことり「それは分からない……無くなっていたのはまだ穂乃果ちゃんだけだから。……あなたに想像できる? 大切な人を失い、この地獄からの解放も選べない……仲間が死んでは再生を繰り返していた穂乃果ちゃんの気持ちが…」


「………」

ことり「全部……私達が悪いの…私達が弱いばっかりに――」



「――だとしても、再生されるなら仲間ごと撃っていい理由にはならないし、そもそもそんなの仲間だとは思わない」

「穂乃果さんが辛い思いをしていたのは分かった。こんな地獄を五年間も経験していることも知ってる……」


ことり「よ……曜ちゃん?」

「本当に心が壊れたのなら今日まで生き残っていないし、そもそも仲間を再生したりしない……」


「――仲間ごと撃つように言ったのはあなた達ミューズのメンバーですね?」

ことり「!?」


「確かに穂乃果さんは強い、多少の犠牲を払ったとしても確実にミッションが成功するためには戦法として間違ってはいない……あの時は感情的に怒っちゃったけど、昔の穂乃果さんの性格からして最初から抵抗無しに仲間ごと撃つなんて出来るはずが無い」



「……本当に壊したのはあなた達だった、違いますか?」

ことり「それは……!」



「――まあいいです、私達には関係ないことですから。私は千歌ちゃんの所に行きます。ことりさんは待っていて下さい」

ことり「………」

「……穂乃果さんがどう思っているか、しっかり話し合ってください」



曜はそう告げ、建物を後にした

194 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:24:20.06 SuvZJJS40 161/267







~~~~~~


真姫「――穂乃果から聞いたけど、私が死んだミッションの時に100点取ったらしいわね? あの戦いに生き残ったなんて流石ね」

梨子「…いえ、運が良かっただけです。あの時、皆さんがいなかったら今ここにいません」


真姫「私達もあれから色々あったわ……ずいぶんと長い事戦い続けてる。まあ穂乃果程ではないけどね?」

梨子「…私はあの時解放を選んで本当に良かったんでしょうか? 私が残っていれば……」


真姫「さあね? そもそも解放は穂乃果に勧められたんでしょ? ならあなたが気に病むことでは無い」

梨子「………」



真姫「あなたのチームの千歌ちゃん……少し気にかけた方がいいかもね?」

梨子「どういう意味ですか?」

真姫「あの子この前、穂乃果の所に行ったでしょ? 多分その時に何らかの重大な話を聞いているはずよ?」

真姫「――恐らく、今後あなた達も関係するであろう“何か”をね」


梨子「どうしてそう思うんですか?」

真姫「それは―――!?」ピピピッ



真姫の手首に付いた端末が鳴り出した



梨子「? それは何なの?」

真姫「ああ、ミッション中でも連絡が取れるように作った腕時計型の端末よ。いつも戦闘中に壊れちゃうからあんまり使えないんだけど……」


真姫「……梨子さん、ちょっとここにいて。今から建物の屋上に行ってくる」

梨子「屋上?」


真姫「―――援護要求がきたんでね?」カチャッ

195 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:24:48.97 SuvZJJS40 162/267





~~~~~~

果南「――いやーー、あなた凄いね! 素人でも分かるくらい綺麗な剣術だったよ!!」

海未「いえ……むしろ、あなたの動きに驚かされました! 本当に我流なのですか?」



果南と海未により刀持ちの星人は倒されていた
海未の剣術と果南の圧倒的な運動神経の前に星人は太刀打ち出来なかった



果南「えへへ……取り敢えずここら一帯の星人は殲滅したけど…どうする?」

海未「……駅の方で大きな音がしていましたね。そちらには穂乃果とことりが向かっていましたが……私は一応そちらに向かいます」

果南「なら私も行くよ! あなたとは相性が良さそうだし」

海未「はい! では行きましょう!」ダッ!

196 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:25:18.18 SuvZJJS40 163/267






~~~~~~


穂乃果「―――…ハァー……ハァー…ハァー…」


穂乃果は未だ天狗と交戦中であった
もう確実に十数回は殺しているが、その度に再生し立ち上がる
それどころか再生するたびに体はより筋肉質になり
今では出現当初より二回り大きくなっていた



天狗「うーむ……さすがに体力切れか? そろそろ刈り取ってもいいかのぉ?」

穂乃果「刈り取るだって? 散々私に殺されてるくせに……ずいぶんと上から目線じゃない?」イラッ


千歌(あれだけ倒しても復活する……再生制限は無いんだね)



千歌もただ二人の戦闘を見ていた訳では無い
天狗の攻撃パターンや再生速度等
様々な情報を分析し、撃退の手がかりを模索していた



千歌(急所への攻撃も、頭部の完全消滅も無意味……殺傷は無理って事?)



―――ゴシャ!




二人の拳が衝突する
ただ、まだ穂乃果の威力の方が強い
天狗の腕はグシャグシャになり後方に吹き飛ぶ


天狗「ほう! まだ力負けするのか」


穂乃果「――いい加減に倒されてよ!!!」ギョーン!ギョーン!ギョーン!



手の平から光線を連射する
星人はかわす素振りすら見せずに攻撃を食らう

光線は天狗の心臓や顔、腕を貫くがすぐに再生される

197 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:25:55.28 SuvZJJS40 164/267





天狗「……さて、そろそろ頃合いかのう」



天狗は穂乃果に接近する



穂乃果「何度やったって同じだよ!!」


もう一度拳が激突する
…が、今度は穂乃果が力負けし腕がはじかれる



穂乃果「んな!?」

天狗「ほらほらぁ!! まだ終わらんぞぉぉ!!!」



チャンスとばかりに怒涛のラッシュ繰り出す

穂乃果の装備は通常のスーツより耐久性がはるかに高い
スーツでは一撃で機能が停止する攻撃もこの装備なら
余裕をもって耐えることが出来る

穂乃果も応戦するも徐々に装備の損傷が増す



――バキン!




穂乃果の顔を覆っていたマスクが壊される
その顔には多少の焦りの表情が浮かんでいた



天狗「―――トドメだ」



天狗の渾身のストレートを両腕でガードするも
耐久値の限界を超えた腕は崩壊し
穂乃果は後方の建物に突っ込んだ



千歌「穂乃果さん!!?」


天狗「……さて、次はお前なわけだが…あの女と同じ装備は無いのか?」

千歌「……生憎持ってないんでね。あるのはこれだよ」シュッ!



千歌はガンツソードを構える
天狗は少しがっかりした表情を見せた


天狗「やれやれ…せめて一瞬で倒され――!?」

198 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:26:38.10 SuvZJJS40 165/267




突如、Yガンによるワイヤーにより拘束される


「よし!! このまま……」



しかしそう簡単にはいかない
力を込めた天狗は自力でワイヤーを千切り
拘束から解放される


天狗「ハァ!! 惜しかった――!?」


この一瞬を突き、千歌は天狗の右腕を切り落とす
天狗の蹴りは食らったものの
まだ無事である



「ごめん千歌ちゃん!! 少し遅くなった…」

千歌「大丈夫……それよりも穂乃果さんがやられた!」


「!? 死んだの!!?」

千歌「分からない……あの装備ごと中のスーツも壊れてた…あいつの本気パンチを食らった終わりだよ!!」


天狗「…さっきいた女か……逃げずに帰ってきたことは誉めてやろう」ニヤリ


「それはどうも! 絶対に逃げないから安心し……?」

千歌「――!?」



千歌と曜はある違和感に気付いた
穂乃果が強すぎるが故に見落としていた天狗の特徴
二人は目を合わせる



「……千歌ちゃん、あいつって再生する星人なんだよね?」ボソッ

千歌「そうだよ…曜ちゃんも気が付いた?」ボソッ


「だよね? なら確かめる必要がありそうだね!」

千歌「うん! 曜ちゃんは足止めお願い!!」ダッ!

199 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:27:18.97 SuvZJJS40 166/267






~~~~~~


絵里「――さて、どうやって戦いましょうかね……?」シュッ!


鞠莉「銃なんか使わないでぶん殴って倒す!!」パシンッ

「あの羽……引き千切ってやるにゃ!!」


絵里「……見事に脳筋しか残ってないわね…」ヤレヤレ



先ほどの攻撃で腕ごと希の持っていた銃は壊されてしまった
三人の両足のホルスターにはガンツソードとXガンが入っており
絵里はガンツソードによる戦闘が得意だが
残りの二人はスーツによる格闘を得意とする


絵里「いい? あいつはかなり動きが早いわ。私の攻撃がかすりもしなかった……手刀による攻撃には気を付け――」



絵里が話し終わる前に二人は飛び出した
腕による攻撃に注意し
足や胴に少しずつダメージを与えていく

遅れて絵里も参戦
星人にとって打撃よりも刀の攻撃の方が致命傷となる
絵里の攻撃が二人の格闘攻撃をより生かす


――星人の裏拳が凛の顔面を捕らえた


「――っ!!!?」


大きく吹き飛ばされる凛



鞠莉「―――っ!!」バギッ!


鞠莉は凛を吹き飛ばした方の腕をへし折る

星人は一旦距離をとった




絵里「凛! 無事なの!?」

「ぐうぅぅ……大…丈夫……スーツは壊れちゃった…」



これで残るは二人
徐々に追い込まれていく……

――星人は翼を広げ鞠莉と絵里の頭上を越えていく

200 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:27:47.85 SuvZJJS40 167/267




絵里「え!? なんで!?」ゾワッ

鞠莉「花丸! 善子! 気を付けて!!!」



星人は後ろにいる負傷者を先に仕留める事にした
そもそもこの星人にとって絵里達はどうでもよかった
ターゲットはただ一人
自分に大ダメージを与えた希だけだった



花丸「き…きたずら!!?」

ルビィ「花丸ちゃん! 武器を構えて!!」

「あいつの狙いは多分うちや!! ケガ人連れて早く逃げて!!!」




「――大丈夫です。任せてください」




背後から声が聞こえてくる
振り返るとそこには――


ルビィ「――花陽さん!?」



花陽は腰のホルスターに手を置いている
まるで居合斬りのような構えで星人を待つ

星人との距離が2mを切ったとき――
星人は花陽から放たれる殺気に気付く



花陽「―――っ!!!!」シュッ!!!



目にも止まらぬスピードで繰り出された花陽の抜刀は
星人の両足を切り落とす
あと一瞬、感じ取るのが遅れていたら胴体が真っ二つにされていただろう

Xガンで追撃するも射程よりもはるか高い所まで飛んでしまった
どうやら上空で回復を待つらしい


鞠莉「あんな高さまで!? どうすんのよ!?」

花陽「………」

絵里「とにかく構えておきなさい! 次こそ仕留めるわ!!」スチャ




花陽「――もう大丈夫です。もう倒しましたよ」

鞠莉「……へ?」キョトン


花陽「10秒…経ちましたから」ニコ



上空で星人の頭部が破裂する音が校庭に響いた――

201 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:28:26.34 SuvZJJS40 168/267





~~~~~~


真姫「――ふぅ、何とか当たったわね」



真姫はビルの屋上に立っていた
構えていた武器はXショットガンである

以前、善子が遠距離からの狙撃に使用したこの銃は
遮蔽物が無い限り着弾までに時間はかかるが数キロ先まで狙撃が可能である
真姫が立っているこの場所は校庭の上空を飛ぶ星人をギリギリ狙える
ただ一つの場所であった


花陽から連絡を受けた真姫はすぐさま狙撃ポイントに急ぎ
ひたすらその時を待っていたのだ

そして星人の姿がスコープに映った瞬間に狙撃
見事頭を撃ちぬいたのだ



真姫「多分誰かの手柄を横取りした形になったかもしれないけど……ま、いいか」



一仕事終えた真姫は梨子のもとへ戻る――

202 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:29:00.86 SuvZJJS40 169/267






~~~~~~


絵里「――なるほど、真姫に連絡して狙撃してもらったわけか」フゥー

鞠莉「狙撃!? どっから狙ったっていうの!?」キョロキョロ

花陽「真姫ちゃんは凄いからね! 止まってる“的”なら数キロ先からでも狙い撃ち出来るんだ!」エッヘン


「何でかよちんが自慢してるのー?」アハハ

ルビィ「……おねぇちゃんはどうしたんですか? そばにいるって言ってたじゃないですか!」

花陽「ルビィちゃん……あのね――」




再び校庭に星人の群れが出現した
数はどんどん増えていく


絵里「……話は後ね。もうひと踏ん張りよ!!」

203 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:29:45.32 SuvZJJS40 170/267




~~~~~~

穂乃果(体が……動かない…)


天狗によって吹き飛ばされた穂乃果は全身打撲と両腕の粉砕骨折という重症を負っていた
このミッションで再び戦うのはもう不可能であった


穂乃果(倒されれば倒された分だけ強くなるタイプだったか……多分倒そうとして戦うと一生勝てない)

穂乃果(私達のチームに“あの銃”を持っている人はいない…頼んだよ……千歌ちゃん――)






千歌「―――はああ!!!」ズバッ!



千歌はもう片方の腕を切り落とそうと刀を振る
しかし天狗は刀の軌道に自らの急所をねじ込んだ

当然、天狗は死ぬが―――



天狗「いかんいかん……つい足を滑らした。死なないと分かっていると動きが雑になる」


すぐさま再生
千歌の与えたダメージは全て治る

だが、今の再生で二人の違和感は確信に変わった



「―――千歌ちゃん!!」

千歌「うん! もう大丈夫……次で終わらせるよ!」


天狗「ほほーう…終わらせるか? 言っておくが、今のわしの攻撃を一発でも食らえば即死だが……分かっているのか?」ニヤリ


千歌「…そうだね。また再生させちゃったからより強力になったもんね……でも、当たらなければ問題無いよね?」フフ




天狗は二人との距離を一瞬で詰める
パワーだけでなく当然スピードも強化されている

――が、このスピードは想定内
二人は初撃をかわす


曜は後ろに下がりつつYガンを連射
今の天狗にはすぐさま壊される事は分かっていたが
少しでも動きが止められれば良かった

一発だけ命中
ワイヤーが天狗の体に巻き付く

204 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:30:49.59 SuvZJJS40 171/267





「――そんな!?」ゾワッ



天狗は腕に少し力を込めただけでワイヤーを破壊した
もはや一瞬の足止めにすら役に立たない




天狗「――まずは一人」グワッ!


天狗に斬りかかろうとした千歌の刀を弾き
拳を千歌の腹に叩きこむ――


千歌はそのまま後方に吹き飛んだ



千歌「―――まだだ!!」ビュン!



後ろに飛ばされながらも持っていた刀を天狗の太もも目がけ投げつける



――グサッ!




見事命中、左の太ももを貫通した


天狗「はっ! ギリギリで後ろに飛んで威力を殺したかぁ!! だが、手応えはあったぞ!!!」



天狗の手応えは正しかった
即死は回避したものの、スーツの防御力を大きく上回る攻撃は
千歌の内臓に深刻なダメージを与えていた



千歌「ぐふっ! まだスーツは壊れて無い…まだ戦え――」ボタボタ



――グサ!



――天狗の右足の甲にガンツソードが投げつけられ
深々と突き刺さり地面と固定する
完全に不意攻撃にさすがの天狗も一瞬硬直した

千歌の背後から二人が猛スピードで駆け抜けた

205 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:31:35.09 SuvZJJS40 172/267





果南海未「「――――っシュ!!!」」



二人は天狗とすれ違いざまに両腕を切断
勢いそのまま、地面に体を引きずった


果南「――今だ! 撃って曜!!!!」


曜は二人が両腕を切断すると同時に発射していた
もうワイヤーを壊す腕は無い


天狗「!? この女どもがぁぁぁ!!!!」



千歌(穂乃果さんが……すぐにトドメを刺しちゃうから気が付かなかったけど…あいつの再生には特徴があった)ハァーハァー

穂乃果(恐らく…あいつに再生回数に限界は無い。何度だって生き返るだろう……倒すにはYガンによる転送しか方法は残っていなかった)



「――あんたが再生出来るのは“死んだ時”だけ。だから邪魔な腕は先に落とさせてもらったよ?」ニヤリ


曜は今度こそYガンの上トリガーを引く
断末魔と共に天狗の転送が始まった



海未「どうやら…役に立てたようですね?」

果南「着いたと途端、凄い形相で腕を斬ってって言われた時は何事かと思ったよ」フー


海未「――っ! 果南! もう一人の仲間の様子が!!?」





「――千歌ちゃん! もう倒したよ!! しっかりして!!」

千歌「……ハァー…ゴホッ! よ…曜ちゃん……やった……ね…」ニコ


「どうして転送が始まらないの!? 早くしないと千歌ちゃんが!!」ポロポロ

果南「千歌!? そんな……!?」ゾワッ


海未「……すいません、私は穂乃果とことりは……どうなったのですか…?」

千歌「大丈夫です……二人とも無事です……うぅ…」

「もうしゃべらないで! ガンツ!! 早く始めてよ!!!」


206 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:32:04.37 SuvZJJS40 173/267





――ジジジジジ



果南「よし! 始まった!」

「!? 千歌ちゃん! 私達は先に帰るね! 待ってるから絶対に帰ってきてね!!!」ポロポロ


千歌「………う……ん」ニコ



手を握っていた曜が転送され
支えを失った千歌の手は力なく地面に落下した――

207 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:32:34.00 SuvZJJS40 174/267






――
――――
――――――


~ガンツの部屋~


絵里「――今回はかなりの強敵だったわね…まさかZガンで倒せない敵がいるなんてね?」

「まったくや……武器の過信は命とりやね」

にこ「ハァー…もうあの痛みは味わいたく無いわ…」



花陽「真姫ちゃん! 助けてくれてありがとう!」ニコ

「真姫ちゃんお手柄にゃ~」スリスリ

真姫「ウエェェ!? ま……私にかかれば何て事ないわ!」プイ



海未「二人共無事でしたか! 駆け付けた時にいなかったので心配しました…」

穂乃果「そっか……あの二人が倒してくれたんだね」

ことり「………」



『――だとしても、再生されるなら仲間ごと撃っていい理由にはならないし、そもそもそんなの仲間だとは思わない』

『……穂乃果さんがどう思っているか、しっかり話し合ってください』




ことり「――ねえ、穂乃果ちゃん…」

穂乃果「ん? どうしたの?」

208 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:33:03.54 SuvZJJS40 175/267



ことり「――私と組んだ時に強い星人と戦う事になったら私ごと撃ってもいいよって提案したよね? あの提案…聞いた時に穂乃果ちゃんはどう思った?」

穂乃果「………」

海未「ことり!? あなたはそんな提案を出していたのですか!?」


穂乃果「――…別に、いい案だと思ったよ? じゃなかったらあの時撃ってないよ」

絵里「ちょっ…撃ったの!? ことりごと!?」

穂乃果「うん。だってことりちゃんが命懸けで作ったチャンスだったんだよ? あそこでためらったら…ただの犬死になってた」

穂乃果「それにもし…もしことりちゃんが私のせいで死んでも私が再生すれば問題ないよね。今までだってそうしてきたわけだし」


「穂乃果ちゃん……」ゾッ

「確かにそうだけど……それって…」

真姫「………」



穂乃果「星人を倒さなきゃミッションは成功しない。その為にはどんな手段を用いても倒すしかないんだよ! ……だからことりちゃんの提案を採用した、それだけだよ」


ことり「……わかった、ならもう一つ聞くね?」



ことり「――穂乃果ちゃんが私に向けて撃った時、どう思った?」

209 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:33:32.56 SuvZJJS40 176/267


穂乃果「は?」


ことり「私ね…穂乃果ちゃんに再生してもらった時、凄く嬉しかったの。穂乃果ちゃんの為なら、穂乃果ちゃんの役に立つなら自分の命を捧げてもいいと思ってた。だからあんな提案をしたの」

ことり「穂乃果ちゃんの心を壊したのは……私だったんだよ」


穂乃果「な…何を言ってるの? さっき言ったよね? ミッションの為ならどんな手段も……」

ことり「今はミッションとか義務感とか全部考えないで答えてほしい……穂乃果ちゃんの“こころ”を教えて欲しいの」




今まで見た事のない真剣な眼差しで見つめることり


穂乃果「それは……だから…――」


にこ「正直に答えなさい。隠さないで……全部しゃべっちゃいなさい」

真姫「そうよ。穂乃果は自分の気持ちを抑えすぎなの…このままだと本当に壊れて廃人になっちゃうわ!」


穂乃果「…いや……だからね……」


「教えてほしいにゃ! 穂乃果ちゃんの本当の気持ちを!!」

花陽「お願い穂乃果ちゃん!!」




穂乃果「………だから……」


「…私達は仲間でしょ?」

海未「聞かせて下さい……あなたの心を」

210 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:34:17.00 SuvZJJS40 177/267









穂乃果「―――――――――…いじゃん」







穂乃果「―――撃ちたいなんて思うわけないじゃん!!!」

穂乃果「だってことりちゃんは穂乃果の大切な親友だよ!? 生き返るからって自分の手で殺せるはずが無い!! 他のみんなだってそう! 撃てるはずが無いんだよでも仕方ないじゃん!!! 誰かがやらなきゃいけないんだもん!!倒さなきゃ終わらないんだもん!!! ほかに手が無いならやるしかないんだよ!!! だって穂乃果が……穂乃果がこのメンバーで一番強いんだから!! だから!!! ……だからぁ………」グスッ






穂乃果「――――――――――…穂乃果もう……戦いたくないよぉ……」ポロポロ



ことり「………」

海未「穂乃果……」


絵里「私達は…穂乃果に頼り過ぎていたのかも……ね?」

「そうやね…何度も100点を取っているから慣れてると思い込んでた」

花陽「穂乃果ちゃんには……お休みが必要だと思う」



「あ! 穂乃果ちゃんの採点が始まっているよ!!」

211 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/22 21:35:48.84 SuvZJJS40 178/267




ガンツ『ほのか 75点 TOTAL155点』


100点メニュー
1.記憶を消されて解放される
2.より強力な武器を与えられる
3.メモリーの中から人間を再生する



穂乃果「え? どうして……」


海未「今まで消えていた一番が復活してます! 穂乃果…分かっていますね?」

ことり「一番だよ……穂乃果ちゃんはもう戦わなくていいんだよ…」


にこ「あんたがいなくてもこのメンバーなら大丈夫よ。…長い事地獄に拘束して悪かったわね……」

絵里「私達も今回のミッションで100点を取っているハズだから、穂乃果も一緒に解放されましょ?」


穂乃果「………ふふ、みんな…ありがとう」






穂乃果「―――二番、今すぐに用意しておいてね?」

ことり「穂乃果ちゃん!? どうして二番なの!!?」


穂乃果「……私は戦わなくちゃいけないの…」

真姫「説明してくれるわよね?」


穂乃果「この話をしたら……みんなも一番を選べなくなるかもしれない」

穂乃果「―――その覚悟があるの?」




――静寂が続く
穂乃果は全員がその覚悟があると理解した


穂乃果「わかった……これから話すのは近い将来起こる『カタストロフィ』についてだよ」

218 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/24 22:01:06.82 Weg88UqZ0 179/267

最終章 エピローグ



~GANTZの部屋~


鞠莉「――ふぅー…今回も生き残れたわね♪」

善子「最後の怒涛の星人ラッシュは冷や汗ものだったわ……ケガした手が片方だけで良かった」

花丸「でも! あの数ならもしかしたら100点まで行ったかも!?」



梨子「――花丸さん…無事だったのね」

花丸「あ……梨子さん…戻って来たずらか」


梨子「教えて欲しい! どうしてあの時私を助けたの?」

花丸「……別に…ただの気まぐれだy―――」


善子「ああ、私が頼んだのよ。梨子さんがピンチの時は助けてあげてってね?」

梨子「ど……どうして!?」

善子「前にも言ったでしょ? この部屋に来た人は全員仲間だって。花丸に仲間を見殺しにするような事をして欲しくなかったから言っておいたの」

花丸「……納得は出来なかったけど、確かに生き残るには梨子さんの力は必要だった。マルやルビィちゃんが解放されるまでは責任もって守ってもらうから覚悟するずら!!」プイッ

梨子「花丸さん……」

219 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/24 22:01:41.39 Weg88UqZ0 180/267





――ジジジジジ




鞠莉「あら? 果南と曜も帰ってk――」


果南「鞠莉!! 千歌は!!? まだ転送されて無いの!!!?」グワッ

「千歌ちゃん!?」ゾワッ


善子「まさか千歌さん……そういえばダイヤさんもいないじゃん!?」

ルビィ「………っ!!」ギリッ


花丸「る……ルビィちゃん?」

ルビィ「お……おねぇちゃんは…少し休んでるだけです…! る、ルビィが絶対に起こしに行くから……だから…!!」ジワッ

鞠莉「う……ウソでしょ…? ダイヤが……」


「お願い……お願いだから………帰ってきてよ!!」ポロポロ








――ジジジジジ





「あれ? みんなどうしたの!?」アセアセ

「どうやら……わたくし達が最後だったようですね?」

220 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/24 22:02:18.38 Weg88UqZ0 181/267




ルビィ「―――お…おねぇ……!! うわあああああ!!!」ダキッ

ダイヤ「心配かけましたね…よく頑張りました……」ナデナデ

鞠莉「ダイヤったら全く……心配させてもう!!」



「千歌ちゃん……良かったぁ…」ペタン

千歌「あはは……凄く心配させちゃったみたいだね?」

「本当だよ!! もうダメかと思ったんだからね!?」

果南「まあまあ、みんな無事だったんだからそれでいいじゃない?」




全員の転送が完了し採点が始まった

221 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/24 22:04:48.09 Weg88UqZ0 182/267



善子「――私からね?」


GANTZ『堕天使(笑) 95点 TOTAL100点』



善子「そっか……また取れたのね」


ルビィ「おめでとう善子ちゃん!!」

花丸「これで卒業出来るずら!」


善子「ルビィ…ズラ丸……」ジワッ



画面が切り替わる

    100点メニュー
1.記憶を消されて解放される
2.より強力な武器を与えられる
3.メモリーの中から人間を再生する



善子「―――…一番、私を解放しなさい!」



――ジジジジジ



善子の体が足元から転送され始めた



善子「……皆さん! 今まで本当にありがとうございました!! みんなの事は忘れてしまうけど……きっとまた友達になってください!!」ペコ

花丸「当たり前ずら! ……あの時約束したもんね?」ニコ

ルビィ「また教室でね!」


善子「……ええ! 二人とも頼んだわよ!」ウルッ


善子「千歌さん! 最初あなたと二人になった時は正直もうダメだと思っていたわ! でも違った…ここまで来れたのは千歌さんのおかげよ!! ……本当にありがとうございました!!」ポロポロ

千歌「善子ちゃん……こちらこそありがとう! お疲れさま!!」

222 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/24 22:06:14.54 Weg88UqZ0 183/267




善子の体の転送は完了した
続いては花丸の採点



GANTZ『ズラ丸 100点 TOTAL101点』




花丸「――…一番をお願いするずら」



転送が始まる



花丸「弱かったマルがここまで来れたのはみんなのおかげです! また仲良くしてくれると嬉しいずら」ニコ

ルビィ「また明日ね! 花丸ちゃん!!」

花丸「うん! ……梨子さん、もしルビィちゃんも今回解放されるなら……もうお役御免ずら。あなたもこんな部屋から解放された方がいいよ」

梨子「……でもそれは…」


花丸「私がいいって言ってるんだからいいの! 次に会う時は……仲のいい友達になりたいずらね?」ジジジジジ

梨子「っ! ……ええ、よろしくね!」ニコ




GANTZ『ピギィ 85点 TOTAL101点』




ルビィ「やった! おねぇちゃんやったよ!! ルビィが100点を超えたんだよ!」

ダイヤ「ふふ……本当に強くなりましたね? お姉ちゃんもすぐに行きますから家で待っていてください」ニコ

ルビィ「うん! みなさんもまた明日、学校で会いましょう!」ジジジジジ

223 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/24 22:07:19.91 Weg88UqZ0 184/267






鞠莉「一年生メンバーが全員解放されたわね? あの子達が100点なら私達も大丈夫でしょうね」

ダイヤ「どうでしょうか…私はギリギリの可能性が――」



GANTZ『硬度10  87点 TOTAL100点』



ダイヤ「ふぅー…最後に倒せた星人が高得点で助かりました。姉が100点を取れなかった、なんてカッコ悪すぎですもの」

千歌「お疲れ様です、ダイヤさん…」

ダイヤ「ええ…千歌さんには大変お世話になりました。私達を導いていただき感謝していますわ!」ジジジジジ





GANTZ『小原家 90点 TOTAL119点』



鞠莉「…ま、私は果南に会うためにこの部屋にきたわけだから……目的が達成出来て満足よ♪」

果南「全く…相変わらず鞠莉は無茶するよね」ジトッ

鞠莉「……この部屋のメンバーで過ごした日々はとても楽しかった…今度はこのメンバーで別の活動をしてみたいものね! μ’sみたいなシャイニーなスクールアイドルとかね♪」ジジジジジ




GANTZ『かなん 100点 TOTAL125点』




果南「……あれだけ倒したんだから当然かな? 私もここを卒業かー」

果南「最初に千歌が来たときは本当に驚いた……あの時死んじゃってごめんね。千歌に辛い思いさせちゃってさ…」


千歌「大丈夫だよ! ……果南のあのノートが無かったら生き残れなかった…ありがとうね!!」

果南「そっか…役に立てて良かった!……それじゃ、またね」ジジジジジ

224 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/24 22:08:49.22 Weg88UqZ0 185/267






残るは二年生だけとなった
採点は続く




GANTZ『なしこちゃん 85点 TOTAL120点』




千歌「おめでとう梨子ちゃん…今度こそ自由になれるといいね」

梨子「……そうね…」


「―――あー…その前に梨子ちゃん、ちょっといいかな?」

梨子「ん? 曜ちゃん?」





「―――歯、食いしばれぇぇ!!!!」バキッ!


梨子「――っ!!!?」ドサッ



曜の渾身のストレートパンチが梨子の頬に直撃
スーツを着ているはずの梨子の顔には激痛が走り
鼻血も出ている



千歌「ちょっ!!? 曜ちゃん何やってるの!?」

「あぁ~~~~っ!! スッキリしたぁ!!」

梨子「ハァー…ハァー……ハァー…?」ドクドク



「千歌ちゃんは気にして無いみたいだから今まで黙っていたけど、せっかくこの部屋から解放されたのにまた連れ戻したあなたを本当は許せなかった…殺してやろうとも思ったよ? 仲良くしないと千歌ちゃんが悲しむから表には出さなかったけどね…」

梨子「……っ!」

「でもね……梨子ちゃんが千歌ちゃんを連れ戻してくれなかったら…私はここにいないのも事実。だから今のでチャラにする。いきなり殴ってごめんね?」


梨子「……本当に私は多くのメンバーに嫌われていたのね…覚悟はしてたけどやっぱりショックね…」シュン

「花丸ちゃんも言ってたじゃん! 今度は仲のいい友達になろうって! 今ので私も許したんだしもう嫌いじゃないよ?」


梨子「ふふ……ありがとう…曜ちゃんのパンチ、この部屋に来てから一番痛かったわ」ジジジジジ

225 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/24 22:09:55.10 Weg88UqZ0 186/267





千歌「曜ちゃん……理由は分かったけど、やり過ぎじゃない? 絶対に奥歯も折れてたよ?」ジトッ

「……いや、スーツ着てるから大丈夫だと思って…意外と効いちゃったみたい」アハハ



千歌「――あれだけいたメンバーも二人だけになっちゃったね?」

「そうだね……次は私みたい…」




GANTZ『ヨーソロー 91点 TOTAL109点』




「そういえば…千歌ちゃんにまだ謝ってないことがあったね?」

千歌「ほぇ? 何かあったっけ??」キョトン



「―――…あの日、一緒に登校する約束破っちゃってごめんね?」



千歌「……ぷっ…あはははは!! 何かと思えばそんな事か!」ケラケラ

「むっ! そんな事とはひどくない!? 私があの時どんな覚悟で―――」



千歌は曜を抱きしめた
突然のことで曜は驚くがすぐに優しく千歌の体に腕を回す



千歌「――曜ちゃんにまた会えて本当に良かった…もういなくならないでね?」グスッ

「……うん、もう千歌ちゃんを悲しませるような事はしないよ…じゃあ、先に待ってるね?」ジジジジジ





――こうして部屋には千歌だけが残った
九人もいたこの部屋も今はガンツと千歌しかいない
これがどういう意味なのか千歌にはもう分かっていた



千歌「……良かった、私の順番が最後で……まあ、今回私はそもそも選べないもんね? そうでしょ? ガンツ」




そして、千歌の採点が始まる





GANTZ『ちかっち 65点 TOTAL78点』





231 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/25 20:35:18.59 TcpJvvs60 187/267






――
――――
――――――

~四か月後 浦の星女学院~


(季節はもう冬、内浦も今のも雪が降りそうなくらい寒い日が続いているよ)

(理由は分からないけど、わたくし渡辺曜は高校入学前から今年の夏休み前までの記憶がすっぽり無くなってしまっているのであります…)

(なんでも、私は春先に行方不明になっていたり静岡駅や秋葉原で大事件が発生していたりと、とんでもない事が起きていたらしい)

(そして、私にはいつの間にか学年をまたいで多くの友達が出来ていたのだ! どうやって友達になったのかはみんな分からないんだけど…細かい事はどうでもいいよね!)

(今は授業も終わって放課後になったんだけど……)



善子「――曜さん! リリー! 迎えにきたわよ!!」ガラガラ

梨子「よっちゃん! 廊下を走ってきたわね? ケガしたらどうするの…」ヤレヤレ


花丸「……梨子さんの言う通り…ずら……追いかけるマル達の事も考えて欲しいずらぁ…」ゼェーゼェー

ルビィ「い……息が出来ない……」フューフュー

「あはは……みんな走ってきたんだね…」


善子「だってこれからみんなで今日からオープンするカフェに行くのよ!? 楽しみ過ぎて走るなってのが無理なのよ!」ウキウキ

梨子「はいはい、今から準備するから少し待っててね?」

善子「はーやーくー! リリィー!!」


「あれ? 果南ちゃん達はどうしたの?」

ルビィ「おねぇちゃんと果南さんは鞠莉さんのお手伝いをしています。少し時間がかかるらしいので先に行っててと言ってました」

梨子「そっか、なら行こうか!」



花丸「――今日も高海さん来ていないんですね?」

「……うん」




曜の後ろの千歌の席は夏休み明けからずっと空いていた
夏休み中、一度も連絡が取れなかった千歌は曜達の知らない間に休学届を提出

それ以来、誰一人連絡が取れない状況が続いていた
千歌の家族に尋ねてもダメだった


善子「…曜さんと果南さんの幼馴染なんですよね? どうして突然いなくなったんだろう……」

「それが分かればね……何も覚えて無いから困ってるんだよね」

梨子「……早く連絡が欲しいわね…」


「――千歌ちゃん……」ボソッ

232 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/25 20:36:19.93 TcpJvvs60 188/267




~夜 曜の自室~

曜はベッドに寝転んでいた
みんなと遊びに行ったのは楽しかったが……
やはり千歌の事が気になってしまった


「千歌ちゃん…どうしていなくなったの? ひどいよ……」グスッ



曜にとって千歌は家族同然だった
そんな千歌が行方不明となったのだ、ショックは大きい



――ゴトッ



「――ん? 何の音?」



机の方から何かが落ちた音がした
目を向けると、そこには見覚えのない物が置いてあったのだ

それは過去に梨子の家に送り付けられたものと同じ物なのだが
当然、曜はこれが一体何なのか知る由も無かった――





「――――この黒い球は……なに?」




233 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/25 20:37:57.27 TcpJvvs60 189/267





――
――――
――――――

~某日とあるマンションの一室~



――ジジジジジ



「――お! 新しいメンバーだね? ああ、取り敢えず落ち着いてよ!」


「――うん、ここは天国でも地獄でも……いや、どちらかと言えば地獄なのか…とにかく、まだあなたは死んでは無いよ」


「――うーん…ちょっと違うかな? 正確にはまだ生き返ったわけでは無いよ。その一歩手前って感じだね」


「信じられないと思うけど、これから私達は宇宙人と戦うの。――あはは…変な事言ってるように聞こえるでしょ? 私も最初はそう思っていたよ」


「しばらくしたら、あそこにある黒い球が開くから自分の名前が書いてあるケースを見つけて? 私が着ているスーツが入っているからこれだけは必ず着て! あなたの命を守ってくれるからさ」


「今回は初めてだから見ているだけでいいよ! まずはこの部屋のルールを覚えてもらわないとね!」ニコ


「――なんでもう着てるのか? それは私がもう何回もこの部屋で戦い続けているからだよ! 自分で言うのもなんだけど、結構強いんだよ!」エッヘン


「――何者って言われても……ただの女子高生だよ? ――もう! 大丈夫だってば!! ……え? 別に怪しんでいるわけじゃないの?? ならいいや」エヘヘ


「あ! まだ名前を聞いていなかったね? あなたの名前は? ――分かった、――ちゃんだね! これからよろしく!!」




「私の名前はね――――――」








千歌「……GANTZ?」 完

234 : ◆ddl1yAxPyU - 2016/11/25 20:39:48.55 TcpJvvs60 190/267

ここまで読んで頂きありがとうございます!
原作のキャラの登場やストーリーをなぞる展開等を極力避けて
書いてみたのですが、GANTZの雰囲気は出ていましたでしょうか?
ぜひ、感想や指摘などお願いします


千歌を主人公としたこの作品はここで終わりですが
まだ回収していないものがありましたね…


千歌「GANTZ?」【後日談】

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