魔王「はぁー暇。マジ暇」
側近「……」
魔王「なんか楽しいことはないもんかねぇ」
側近「……」
魔王「なぁ側近ちゃんよぉ!!無視は良くないよなぁ!!??」
側近「わぁビックリしたぁ。私に言ってたッスか」
魔王「お前以外いねぇじゃん」
側近「私は今ゲームやるのに忙しいッス」
魔王「なんのゲーム?」
側近「育成ゲームッス」
魔王「育成か…」
魔王「俺もなんかペット育ててみたいな」
側近「はぁ、そッスか…」
魔王「提案しろよぉ!あれはどうですかとかよぉ!!」
側近「うるさいッスね…じゃあ…魔王様みたいなペット初心者なら>>4がいいんじゃないッスか?」
元スレ
魔王「なんかペット育ててみたいな」側近「>>4なんてどうッスか?」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1534951305/
5 : 以下、?... - 2018/08/23 00:22:20.267 n/l/QzpG0 2/48幼女
側近「魔王様みたいなペット初心者なら幼女がいいんじゃないッスか」
魔王「あー幼女ね。小さいしかわいいし初心者にはうってつけ…」
魔王「って人間やないか!ダメだろそういうのは!!」
側近「なに言ってるッスか悪逆非道の魔王のクセに…」
魔王「さ、攫ってこいと!?そこまでの悪さを俺に強いるのか!?」
側近「いや別に攫わなくても、奴隷商から買い取ればいいッス」
魔王「奴隷商!?そんなひどいやつがいるのか!?」
側近「いやあなたの部下ッスけど…」
魔王「けしからん!ちょっと会ってくる!」
奴隷商「魔王様ともあろうお方がこんな小汚いガキどもをお求めになるとは珍しいですな」
魔王「おう珍しいだろ!で、その小汚いガキはどこにいる?」
奴隷商「檻の中にたくさんおりますよ!特にオススメなのはこの>>22で>>25な幼女です」
22 : 以下、?... - 2018/08/23 00:29:42.209 nnAtcil6d 4/48淫乱
25 : 以下、?... - 2018/08/23 00:30:51.344 EVaN2hQGp 5/48デレデレ
奴隷商「特にオススメなのはこの淫乱でデレデレな幼女です」
幼女「ふわぁ…イケメンさんに見られてるよぉ…おたま濡れちゃうよぉ////」
魔王「なんてガキだ、お前がこういう性格に仕込んだのか?」
奴隷商「もちろん!全員しっかり教育を施しておりますよ!なぁガキども!」
幼女たち『……』ビクビク
側近「むぅ…話には聞いていたけどひどいもんッスねぇ。こんなふうに檻にぎゅうぎゅう押し込んで…」
奴隷商「ひどいのはこのガキを引き渡した親たちですよ!」
側近「どうせ『子供たちを差し出せばこの村を潰さずにおいてやる』とか言ったんでしょ?そういう顔してるッスよ」
奴隷商「ご名答!子供を差し出すような屑の溢れる村だからきっちりと潰しておきましたがね」
魔王「屑はお前だよ」ガシッ
奴隷商「へっ?」
魔王「地の底に沈め」グイッ
奴隷商「あええええええええ!?」ズブズブズブ
側近「え、ちょっとちょっと」
魔王「オラ出ろ幼女たち、自由にしてやる」
幼女たち『えーん、こわかったよー』ワラワラ
側近「なにやってるッスか!」
魔王「これでいいのだ」
34 : 以下、?... - 2018/08/23 00:40:07.285 iHKMkE9g0 7/48それよりおたまでオナるのはマニアック過ぎないか
奴隷商「魔王様あんたなんてことをするんだ!」
魔王「ふん、この俺に黙ってそんな無茶苦茶なことしてたとはな」
魔王「お前はこのまま首だけ出した状態で反省していろ」
側近「あれっ檻の中にまだ幼女がいるッスよ」
魔王「なに?」
幼女「………」ジーッ
魔王「なんだお前は?出てこないのか?パパとママのところに帰るがいい」
幼女「パパもママもあんたたち魔族に殺された…」ギラッ
魔王「む!?」
側近「刃物!?」
ザクッ!!!
幼女「かたきうちよ!」
魔王「物騒だな、だが狙いが甘いぞ」ポタポタ
幼女「く…!」
魔王「そうか、パパとママはいないのか…」ヒョイ
魔王「なら俺が面倒見てやる」
幼女「!?は、離せ!」ジタバタ
魔王「おいコラ、暴れるなチビ」
側近「え、えー…」
側近「……」チラッ
奴隷商「な、なんですかな?」
側近「あんたさっき全員教育したと言ってたじゃないッスか。なぜ刃物を持った子が?」
奴隷商「ひ、ひとりいたんですよ…私がいかなる手を使おうとも決して怯まない頑固な子が…」
側近「…ああ、そッスか」
奴隷商「さすがに食事抜きにしたら大人しくなりましたが…まさかいきなり襲い掛かるとは」
側近「…つまり魔王様がケガをしたのは、あんたの教育不行き届きが原因ってわけッスよね?」
奴隷商「え?え…!?」
側近「そういうの、側近としちゃー見逃すわけにはいかないッスよ」ブンッ
奴隷商「ぐぇ!?おご!もごごぉ!」
側近「あとはもう一生そうして鼻先だけ出して暮らすッスね」スタスタ
奴隷商「んごごぉ!!」スーハー
魔王「というわけで、今日から俺がおまえの飼い主になってやるぞ」
幼女「なにがというわけでよ…ふざけないで…」
幼女「あんたの言いなりになんて絶対にならないわ」
魔王「言いなりとかそういうんじゃなくて、ペットってのはこう…素直に可愛がるもんだろ」
幼女「ペット…!?そうやって、人の命を軽んじるおまえみたいなやつが私の村を…!」クラッ
幼女「う……」ドサッ
魔王「???」
側近「どうやらその子、ろくに食事も与えられてなかったみたいッスよ」
魔王「そういうことか、ならなにか作ってやれ」
側近「…ほんとにこの子ペットにするッスか?」
魔王「おまえが幼女にしろっちゅーたやんけ」
側近「まぁ、そうッスけど…」
幼女「う……」パチッ
側近「あ、起きたッスね…」
側近「ご飯用意したッスよ、食べられるッスか?」
幼女「あなた…何!?」
側近「あー…私は魔王様の側近ッス」
幼女「側近…つまりあんたも同類ってことね」
側近「ずいぶん難しい言葉使うッスねぇ」
幼女「出ていって、あんたたちの作ったものなんて食べたくないわ!」
側近「食べないと死んじゃうッスよ」
幼女「死んだほうがマシだわ」
側近「奴隷商のところでも最初はご飯もらってたんでしょ?」
幼女「それは、食べないと他の子が心配するから…」
側近「えらい気配りのできる子ッスねぇ」
幼女「他の子たちは無事に逃げられたのかしら」
側近「さぁ?でも少なくとも奴隷商は懲らしめておいたから、追ってくるのはいないと思うッスよ」
幼女「あいつを懲らしめた?なんで??」
側近「許せないことを二つしたから」
幼女「……?」
側近「ひとつは魔王様に傷をつける原因を作ったこと。もうひとつは…」
側近「まぁ、私も、こういうのは許せないと思っただけッス」
側近「ごめんッス。って私が謝って、どうにかなることじゃないかもしれないッスけど…」
幼女「…食べるわ。ご飯」
側近「え?」
幼女「あなたは、言うほど悪い人じゃなさそうだから…」
魔王「おう側近…ガキは飯食ったか?」
側近「なんとか食べてくれたッスよ」
魔王「うんうん、そりゃいいことだ」
側近「しかし魔王様、改めて考えると我々のやっていることは非人道的すぎるッス」
側近「今まで悪いと思ったことはなかったッスけど、ああいうのを見てしまうと…」
側近「魔王様はどうお考えッスか?」
魔王「ああいうのって?奴隷商が村を襲って幼女たちを攫ってきたことか?」
側近「他にないでしょ…」
魔王「勇者を倒して3年、力も希望も失われた民に、僅かに残された大切なものを奪うに奪ってきたが」
魔王「正直どうでもいいんだよ。我ら魔族の力を示すため…と言っても抵抗するヤツらなどもはやいないしな」
魔王「あんなことをする必要がないといえばそうだし、止める必要がないといえばそれもそうだ」
側近「ではなぜ魔王様はさっき奴隷商を土に埋めたッスか」
魔王「やり口が必要以上に悪辣だったからだ」
側近「我々がやっていることは悪辣ではないッスか?」
魔王「だからどうでもいいんだよ」
魔王「そんなことをさじ加減ひとつで決めてしまえるのが魔王だからな」
側近「……」
幼女「食べたわ」
側近「美味しかったッスか?」
幼女「…まぁまぁ」
側近「そッスかぁ。じゃそろそろ魔王様にご挨拶でも…」
幼女「イヤよ、ふざけないで!」
側近「……」
幼女「あれは悪いやつよ…確かに私たちを解放したけれど」
幼女「あの目は本当に私たちを救おうだなんてかけらも思ってない…ああしたのはきっとただの気まぐれよ」
側近「ひどい言い様ッスねぇ。まぁ当たってると思うッスけど」
側近「あの人はあの人で、償いのつもりだったんだと思うッスよ」
幼女「だったら私と同じように、親をなくした子たちも救ってあげてよ!」
側近「そこまでしないのがあの人の悪いとこッス」
幼女「…やっぱり、最低だわ!」
側近「んー、否定はしないッスけど、あんまり魔王様のこと悪く言うなら、私も側近として仕事しなくちゃいけなくなるんで…」
側近「お風呂でも入るッスか!」
幼女「……」
大浴場
側近「どうッスか?広いお風呂でしょ?」
幼女「でも、他に誰もいない」
側近「ここには他に魔族はいないッス」
幼女「いない…ひとりも?」
側近「私たち以外誰もいないッス」
幼女「どうして?」
側近「3年前…勇者との戦いでほぼ全員やられてしまったッス」
幼女「勇者…」
側近「辛うじて生き残ったとは、私と魔王様…とその他戦力にならないのが百名余。彼らはみんなこの城を離れて好きに暮らしてるッス」
幼女「勇者はどうなったの?」
側近「魔王様に敗れて、それっきり見ないッスねぇ」
側近「リベンジ…してこないのかなぁ。早く来ないかと魔王様は退屈してるッスね」
幼女「あなたたちが勇者を倒したせいで、私たちがこんな目に遭っているのに…!」
側近「うん、でも」
側近「殺された数で言うと、魔族側は人間側の数倍と言われてるッスよ」
幼女「か…数の問題じゃない!人間より多くの魔族が殺されたからって…」
側近「そッスね。だからって、勇者がいなくなったあとの世界を蹂躙する必要は、ないッスよね」
側近「それでもみんな、怒っちゃってるから仕方ないッスよ」
幼女「し、仕方ないって…」
側近「魔王様が口でもうやめとけと言ったって、魔族たちは納得しないと思うッス」
側近「だから、まぁ、節度を守って、ほどほどに人を襲えと…」
幼女「ふざけないでよ!!!」
側近「まったく、おっしゃる通りッスねぇ…」
魔王「あいつ遅いなー…いつまで風呂に入れてんだか」
魔王「あーあ、なんかあのガキ俺に会いたくないとか言ってるらしいし、ペット飼うのも大変だなー」
魔王「やっと、いい暇つぶしを見つけたと思ったのになー」
魔王「………」
魔王「つまらない世の中になっちまったなぁ。誰かさんのせいで…」
人間界の城
兵士「王様!ご報告が!!」
国王「なんじゃ!まさかまた魔族どもが…!?」
兵士「い、いえそれが…」
兵士「各地から姿を消していた子供たちが、一斉に帰ってきたと…」
国王「なにっ!?」
兵士「親や家を亡くした子たちも皆この城の前に…」
国王「す、すぐに入れてやれ!ああ、なんという奇跡だ、皆生きておったのか…!」
幼女たち『うえーん…!』
幼女たち『こわかったよー!』
国王「しかし何故一斉に帰ってこれたのだ…?」
幼女たち『えらそうなのが逃がしてくれたんだよー』
幼女たち『どれいしょうを土にうめたの』
国王「…???」
兵士「偉そうなのとは…魔王か、あるいはその幹部では??」
国王「かもしれぬが…しかしそんなことがあるのか?」
幼女「ねぇ国王さまぁ、その人は魔王様ってよばれてたよぉ?」クネクネ
国王「ん?君は?」
幼女「わたしはおたま。おたまちゃんって呼んでねぇ」ペロッ
国王「む…」ムラムラ
国王「兵士よ、わしはこの子と二人で話がしたい」スクッ
国王「よいか、誰も部屋に入れるなよ」スタスタ
おたま「くすっ」
兵士「えっ??は、はぁ…」
王の寝室
国王「ああ!おたま、おたまちゃん!なんて滑らかできめ細かい肌だ…!ああ、たまらない!!」パンパン
おたま「んふっ、王様ってエッチなんだねぇ?」
国王「ふぅっ、たまらん!いやらしすぎる!子供のくせになんて魅力的なのだ!!」パンパン
おたま「いいよぉ、おたまに、いっぱいちょうだい!」
国王「うっ、射精る!!王家のザーメンをその身に受けろおたまちゃんッッ!」ビュルルルル
おたま「……♡」
おたま「ねぇ王様ぁ?こんなかわいい私たちを、ひどい目に合わせた魔族…ほっといていいのぉ?」
国王「うむ…実はわしもずっと考えておった…このままこの国は…じわじわとヤツらに食い尽くされて滅んでいくのかと…」
おたま「そんなのよくないよねぇ?」
国王「うむ、そうじゃな…」
おたま「じゃあ、どうしよっかぁ?」
国王「挙兵を……しかしこの国の兵力はわずかで…」
おたま「幼女(みんな)がいるよぉ?」
国王「は?」
おたま「わたしがねぇ、こっそりみんなに教えてあげたんだぁ」
おたま「男の人の落とし方、相手を警戒させずに擦り寄る方法…」
おたま「そして、戦い方も」
国王「お、おたまちゃん…君はいったい何者なんじゃ!?」
おたま「うーん、王様はぁ、もうなんにも気にしなくて、いいんだよぉ?」チュッ
国王「あっ、ああ…」ゾクッ
国王(何も考えられなくなる…ダメじゃ、このままでは…)
国王(どう転んでもこの国は落ちる!!)
魔王「zzz…」
側近「お風呂上がったッスよ」
魔王「!お、おお…長かったな」ムニャムニャ
魔王「ん!」
幼女「……」コソッ
魔王「おいどこ行く!」
幼女「!」ビクッ
側近「髪も綺麗に洗って、ついでに私のずっと昔の服も着せてあげたッスよ!可愛くなったッスねぇ」
魔王「ほぉ!馬子にも衣装というがこりゃなかなかのもんだな」
幼女「……チッ」
魔王「しかし何年前の服なんだこれは」
側近「そういうのは聞かないのがマナー、ッスよ」
幼女「この人には…とても感謝しているわ」
魔王「ん?」
幼女「美味しいご飯も作ってくれた、お風呂にも入れてくれた、着るものまで用意してくれた」
側近「えへっ」
幼女「だけどあんたは許さない…すべての根源である、あんただけは絶対に!」
魔王「なんでこいつこんなに敵意むき出しなのだ、幼女ってもっと素直な生き物じゃないのか?」
幼女「そういう態度が許せないのよ!殺してやる!」バッ
側近「ちょっ…また刃物用意して…ダメッスよ!!」ガシッ
幼女「あなたが言うならやめるわ」スンナリ
側近「あ、はい…」
魔王「うーんそれなりに素直なのかもしれんな」
魔王「まぁ座れよ」ポンポン
幼女「あんたの隣なんて絶対にイヤ」ガルルル
側近「じゃあこっちおいでッス」
幼女「うん」ピョン
魔王「露骨だなぁ」
幼女「……」ジロジロ
魔王「なんだぁそんな好奇の目で見て…俺と遊びたいか?」
側近「いやたぶん隙がないか探してるッスよ」
魔王「なんとまぁ抜け目のないガキ」
魔王「なにが不満なのだ?俺にぶつけたい感情があるなら好きなようにぶちまけよ」
幼女「ならまず全身グサグサに刺すわ」
側近「だからダメッスよ!」
魔王「お前の親を、家を、村を、襲ったことか?」
幼女「…お前じゃない、私を含むみんな、よ」
魔王「うーん」
魔王「あれは別に俺がやらせたことではないんだよ」
幼女「……」
魔王「どこから話そうか…そうだな…」
魔王「おまえ今いくつだ?」
幼女「9歳。たぶん…」
魔王「ならおまえが6つのときに、この魔王城に勇者が攻めてきたのは知ってるか」
幼女「知らないわよバーカ 」
魔王「口悪いなぁ」
魔王「まぁそういうのがいたんだよ。俺たち魔族はひっそりと暮らしていたつもりだったが、一部の魔族が人間たちにちょっかいを出したらしい」
魔王「ほんでこの小競り合いが次第に増えていき…ついに人間の王は優秀な戦士をひとりこの魔王城に送り込んだ」
魔王「曰く『代表者に会って話をつけろ』と」
幼女「それが勇者?」
魔王「そう。俺に会って、人間と魔族のこれからの生き方について話をするために、やつはここにやってきたわけだ」
勇者『魔王よ、我は勇者!今後について話し合おう!』
魔王『なんのことだ?』
勇者『魔族に襲われた人間がいる。あなたの支配している者ではないのか?』
魔王『スマンが俺にも全体は把握しきれてないんだ』
勇者『それで済むと思っているのか!?』
魔王『済まんならどうする?』
勇者『徹底抗戦だ!』
魔王『……』
魔王「とどのつまり、国王が用意したのは勇者ひとりではなかったのだ」
魔王「話し合いがうまくいかなかった時の備えとして、しっかりこの城の前に伏兵を、それも結構な数を引き連れてきていた」
魔王「となればこっちも迎え撃つしかあるまい」
魔王「魔王城の総力を上げ、奴らに抵抗した…」
魔王「結果、我々魔族は大打撃を受けた…。いくらホームと言えども我々は基本的に『戦闘』を想定しとらんから、数で勝る魔王城の兵たちでも、きっちり準備してきた人間の兵にはかなわなかった」
魔王「大半がやられちまったよ。もちろん向こうの兵も抵抗の末ボロボロになったが、被害はこっちのほうが遥かに多かった」
幼女「それはさっきこの人から聞いた」
側近「ちょっと話したッスよ」
魔王「あーそう。先言ってほしかった」
魔王「お互いの兵がほとんど倒れたあとで、勇者はまた話し始めた」
勇者『魔王よ、もう一度問う。今この城に倒れている無数の魔族たち、あの者達が我ら人間に危害を与えたことを認めてくれまいか?』
魔王『認めたらどうなる?この殺戮が正当化されるのか?』
勇者『殺戮ではなく、復讐になる』
魔王『……違うな。おまえら最初っから俺たちを潰す気で来てたんだろう。なーにが話し合いがうまくいかなかった時のためだ』
魔王『そもそも発端となった小競り合いだって、人間側が先に手ぇ出したかもしれんだろ?お前実際に見てたのか?』
勇者『いや、見てはいないが…』
魔王『俺もそうだ。ウチのかわいい魔族たちが人間を襲うところなんて見ちゃいないぜ』
勇者『あくまで認めないつもりだな』
魔王『不毛なんだよこのやりとりは』
勇者『不毛じゃないやりかたがある』
魔王『最初からそうするつもりだろ』
勇者『俺とお前が戦えばいい。勝った方が正しい!』
魔王『そりゃ単純だ。負けても恨みっこなしだぜ?』
ガキンッ!!!
魔王「結果、俺が勝ったわけよ」
幼女「……」
魔王「楽しかったよあの戦いは…今まで生きてきた中で一番楽しい時間だった」
魔王「できることならずーっとああしていたかった」
魔王「しょせん俺たち魔族は獰猛な種族なんだろうな。それを実感したよ。たぶん剣を抜いたときあの表情…やつもきっと同じことを思っただろう」
魔王「どっちが先かとかどうでもいいんだよ。起こってしまったことを抑える力が俺達にはどっちもなかった」
幼女「言いたいことがぜんぜん分からない」
魔王「そりゃお前がガキだからだよ」
幼女「違う!!!!」
幼女「肝心なところを聞いてないわ…なぜ!私たちの村を!家を!親を!襲ったのかって聞いてるの!!」
魔王「だから言っただろう、先の戦いで同胞を殺されたという怒りを、抑えることができないんだ」
幼女「復讐だっていうの!?」
魔王「あいつはそう言ったよ」
魔王「誰かがどっかで我慢しなきゃいけないのを…俺たちはうまくやれてない。だから人々を襲う魔族がいるし、またその仇を討ちたいと思うおまえみたいな人間もいる」
幼女「……」
魔王「わかるか?」
幼女「…じゃあ、どうすればいいのよ」
魔王「さぁ…少なくともお前がいま我慢できても」
魔王「あいつらは違うだろうな」
幼女「あいつら…?」
魔王「俺が自由にしてやったガキどもだ」
幼女「……!」
魔王「ああいう扱いを受けりゃ俺たちを恨むのは分かる。我慢できないのは仕方ないが」
魔王「それを煽ってるやつがいるな」
幼女「…いたわ。ひとり…」
幼女「あの子は私たちと本質的に違う…なにかもっと、凶暴な…」
魔王「戦おうと言った、あの時の勇者みたいな目をしてた」
国王「……」ガチャ…
兵士「あ、国王様…先程子供たちに食事を与え新しい衣服を」
国王「……」ボーッ
兵士「こ、国王様?」
国王「食事に…衣服?」
兵士「は、はい。なにか…」
国王「次は武器を用意せよ」
兵士「は…?」
国王「あの子らと共に魔王を討つのだ。そのための武器を」
魔王「……」
幼女「……」
側近「そんなにやばい子なんッスか?おたまちゃんって」
幼女「あの子、ずっと前からあの檻にいたみたいで」
幼女「入ってくる子になにかいろいろ教えていたみたい」
幼女「なんだかあの子、一目見ただけでその人の強みと弱みが分かるんだって」
幼女「それで、その子の長所を伸ばして、短所を埋めるようにいろいろ教えてた」
魔王「どこのセンセイだよ、あれはどう見てもお前と同じくらいのガキだったぞ」
幼女「出自は聞いてないけど、もしかしたらなにかいいところのお嬢様なのかもね」
幼女「私もいろいろ教えて貰ったわ。あなたは頭がいいから言葉を覚えた方がいいって」
魔王「それでお前ガキのくせにそんな口の利き方なのか」
幼女「うるさいわね、別にいいでしょ」
側近「でもあそこに居たのはせいぜい30人程度…それっぽっち女の子がいたってどうすることもできないッスよ?」
幼女「そうね…武器でもあれば別だけど…」
魔王「おいおい、武装したガキどもが攻めてくるってのか?俺が言ったのはなぁ、あいつらが数年後に復讐に来るかもしれないって話で、今すぐとは…」
幼女「私だって」スッ
幼女「あのナイフを使えばあなたを刺し殺せるわ」
魔王「そうだな、最初に刺されそうになったし」
幼女「子供だって、武器があれば殺せるのよ」
魔王「そうか…おい側近」
側近「なんッスか?」
魔王「そこのナイフ渡してやれ」
側近「ええ、いいんッスか?」
魔王「ほら、早く」
側近「もう嫌な予感しかしないッスけど…はい」
幼女「……」スッ
魔王「では刺してみろ」
幼女「!」
側近「ほらこーなる…」
魔王「そのナイフがあれば俺を殺せるんだろう?やってみろ」
魔王「ほらどうした。ここをサクッと刺せばいくら魔王と言えどあっけなく死ぬぜ。試したことはないけどな」
幼女「……」グッ
魔王「ほらほら、どーしたどーした。飯も食って元気になった、もう最初みたいに外さんだろ?もちろん俺も避けたりしないから安心しろ」
幼女「……」ブルブル
魔王「俺が王としてきちんと魔族を管理できていなかったからおまえの親は死んだんだ。悔しいだろう?」
幼女「…うあああ!」ダッ
ザクッ
側近「もう、危ないッスよ…」ボタボタ
幼女「!!!」
魔王「おまえ、庇ったら意味ないだろーが」
側近「いやそこはほら、側近ッスから…」ボタボタ
幼女「て、手が…」
側近「大丈夫ッスよ、このくらい平気…いやそれなりに痛いけど…」
幼女「ご、ごめんなさい…」
魔王「わかるか??刺されると痛いんだよ」
魔王「いや、お前はそれが分かってただろう?あのままなら側近が止めなくても俺には当たらなかった」
魔王「当てるつもりはなかったんだよ。お前は結局、人を傷つけたり殺したりすることはできないんだ」
魔王「刺されると痛い。それが想像できるし、そんなことをしたくないという気持ちがあった」
魔王「復讐したいという気持ちを、我慢できたんだよ」
幼女「………」
魔王「あとはお前にできたことが、他のガキにできるかってことだが、そこまではちょっと分からんなぁ」
幼女「どうして私が刺さないと思ったの」
魔王「いいペットってのは飼い主を噛まないもんだろ」
幼女「ペットじゃないって言ってるでしょ…今度は本気で刺すわよ」
魔王「うはは」
側近「……あ、そろそろ止血しないとやばいかもッス…」フラー
幼女「ねぇ、あんた」
魔王「…ん?」
幼女「本当に、あの子たちがここに来ると思うの?」
魔王「来るだろうね」
幼女「なにしに?」
魔王「魔族のトップである俺を殺しに。それが手っ取り早いが、まぁ魔族なら誰でもいいかもな」
幼女「そうしたら、あなたは今みたいに無抵抗のまま殺されるの?」
魔王「どうしようかな。まだそこまでは決めてない」
幼女「ねぇ、魔王」
魔王「ん?」
幼女「私、あの子たちを止められないかしら」
魔王「……」
魔王「まぁ、やってみるのもいいかもな…」
側近「ままま魔王様!包帯ってどこッスか!?」
魔王「知らねーよ!この城にあるもんはお前が管理してんだろーが」
側近「包帯なんてしばらく使ってないから、どこにしまったか忘れてしまったッス!!」
魔王「そのへんの布でいいじゃねぇかよ」
側近「雑菌が入ったらどうするッスか!!!」
魔王「うるせぇなぁ。じゃあいいよ、包帯くらい買ってきてやるよ」
側近「えっ?魔王様が??」
魔王「おまえも来るかぁ。散歩しようぜ」
幼女「……」
魔王「……」ザッザッ
幼女「……」テクテク
魔王「なぁー」
幼女「……なに」
魔王「なんでそんな後ろ離れて歩くんだよ、ペットならちょっと前行くもんだろ」
幼女「ペットじゃないし、場所知らないもの…」
魔王「あ、そうかぁ」
幼女「……」
魔王「奴隷商に捕まってる間に、逃げようとはしなかったのか?」
幼女「考えたことはあるけど、たぶん私が逃げたら他の子たちがひどい目に遭うから」
魔王「なるほどね。まぁあいつ結構なクズだったしありえるよな」
幼女「あんただってクズでしょ」
魔王「んなことねぇだろ」
幼女「そもそもあんたが勇者に負けてたらよかったのよ」
魔王「そういうもんでもないんだけどなぁ」
幼女「魔王が負けて、魔族も大損害なら、さすがにやり返せないでしょ」
幼女「あんたが生きてるから、残った魔族が調子づいてるんじゃないの」
魔王「ふーん、そういう考え方もあるかー」
幼女「私はあの檻にいる間、ずっと地獄にいるような気分だった」ピタッ
魔王「へぇー…」スタスタ
幼女「でも、あんたに出してもらえて、あの人に優しくしてもらえて」
幼女「少し、幸せな気がしてる…パパは帰ってこないのに、ママは帰ってこないのに…」
幼女「私、悪い子ね…」
魔王「……」ピタッ
魔王「いいんじゃねぇの」
幼女「…え?」
魔王「気が楽になったんだろ。復讐を我慢できるようになったから」
魔王「復讐以外になかった人生が、やっと別の方に向き始めたんだろ」
魔王「それを幸せだと思うのは悪いことじゃないんじゃねぇの」
幼女「…そうかしら」
魔王「まぁ、しばらくしたらまたぶり返すかもしれねぇけどな」
幼女「ねぇ魔王、あんたは?」
魔王「ん…?」
幼女「幸せ?」
魔王「……なろうとしてるよ。精一杯に」スタスタ
幼女「……ふぅん」トコトコ
魔王「ほらよ、包帯」ポイッ
側近「ありがとッス…」パシッ
側近「痛たたた…!?」
魔王「馬鹿だな、刺されてない方の手で受け取れよ」
幼女「ごめんなさい、本当にごめんなさい」
側近「いいッスよ、謝らなくても…私が好きでやったッスから」
幼女「……」
幼女「ねぇ、どうしてあなたはこんなクズみたいなやつの側近なんてやってるの?」
側近「く、クズみたいなやつッスか…」チラッ
魔王「けっ、クズで悪うござんしたね」
幼女「なにか弱みを握られてるとか?」
側近「そういうわけじゃないッスよ、むしろ弱みなら私の方が握ってるッス」
魔王「!」ギクッ
側近「まぁ、なんて言えばいいッスかね…」
側近「私には、この人を見届ける義務があるッスよ」
幼女「ふーん…」
側近「それよりお散歩はどうでしたッスか?」
幼女「つまんなかったわ。ほとんどなんにもなかったし…」
幼女「私は毎日あの奴隷商の顔しか見てなかったから分からなかったけど」
幼女「魔族って、ずいぶん少ないのね」
魔王「あーそうだよ。勇者のバカと兵士どもにほとんどやられちまったからな!」
魔王「この城の裏は墓地なんだぜ。そりゃもう屍鬼累々よ」
幼女「……」
魔王「残った魔族は少ない。だから俺はあんまりあいつらを縛り付けたくねぇんだ」
魔王「好きなようにやらせときゃいいと思ってる…まぁそのせいで、ああいうことになっちまったんだが」
幼女「無責任ね」
魔王「無責任…そうだな」
魔王「いずれ滅びる種族だからな。自棄になってるのかもな」
幼女「滅びる…?」
魔王「…寝るか」ゴロンッ
幼女「えっ!なに急に…!?」
魔王「眠くなったら寝る、それが魔王イズムよ…」
魔王「それに明日には早速…ガキどもが攻めてくるかもしれない…zzz」スヤスヤ
幼女「信じられない…こんなぐーたらなのが王だなんて」
側近「いやそれはホント常日頃から思うッス」
幼女「それに、いくらなんでも明日早速あの子たちが来るなんてありえないわ」
側近「あはは…」
翌朝
「助けてくれーーーーッ」
幼女「!」ビクッ
側近「な、なんッスかぁ?」ムクッ
魔王「……」スヤスヤ
幼女「今の声、まさか…奴隷商!?」
側近「鼻の下まで土の下に埋めたのに、声が出せるところまで這い出てきたッスかねぇ」ヒョコッ
側近「えっ!?」
幼女集団『魔族どこー??』
幼女集団『はやくころしちゃおうよー』
幼女集団『おなかすいたよー』
側近「ぶ、武装した幼女集団がきてるッスー!!」
幼女「まさか、本当に来るなんて…」
側近「魔王様起こさないと…」
幼女「ほら来たわよ!!起きなさいよ!!!」
魔王「……ん」パチッ
魔王「きた?なにが?新聞屋さんかぁ?」
幼女「寝ぼけてる場合じゃないわよ!!」
側近「魔王様、武装した幼女集団が攻めてきてるッスよ!」
魔王「子供は…元気だな…こんな朝早くから…」
魔王「俺はもうちょっと…寝る…」モゾモゾ
幼女「布団に戻るなっ!!」
奴隷商「やめてくれーっ!助けてくれー!!!」
幼女集団『私たちにひどいことしたおじさんがうまってるよぉ』
幼女集団『あわれだねぇ』
幼女集団『みじめだねぇ』
幼女集団『こっけいだねぇ』
幼女集団『この首ねらって試しうちしようよ!』
奴隷商「ひ、ひぃいいいい!!」
ガチャッ
幼女集団『!』
魔族「なんの騒ぎだぁ?」
魔族「うるせぇなぁ」
魔族「またおめぇんとこのガキか!」
幼女集団『わーいっぱい出てきた!』
魔族「うっ…!武装した幼女がたくさん…!?」
魔族「何事だ!?」
幼女集団『どうするの?おたまちゃん』
おたま「うーん、いっぱい掃射(だし)ちゃえ♡」
幼女集団『らじゃー!!!』ガチャッ
魔族「機銃!?」
魔族「やばい!逃げろ!!」
バララララララララララララララララララ
バラララララララララララララララララララララ
側近「ああ…撃ってるッス…」
幼女「そんな…本当にやっちゃうなんて…」
バラララララララララララララララララララララ
バラララララララララララララララララララララ
バラララララララララララララララララララララ
魔王「…あぁもう!!うっさいわ!!!」ガバッ
魔王「こんなはよから騒いでるガキには…」ヌギヌギ
魔王「説教だ!」バサッ
幼女「5秒で着替えた」
側近「本気ということッスね…」ゴクリ
魔王「おおぃガキどもぉ!!!」
幼女集団『!』
魔族たち「ああ…」
魔族たち「うう…」
魔王「めちゃくちゃやってるじゃねぇかおい…」
幼女集団『おたまちゃん!もしかしてあれが…』
おたま「あれが魔王…だねぇ」
魔王「ガキどもせっかく自由にしてやったのにまーた帰ってきちまったのか?」
魔王「お前らも俺のペットになりたいか?」
幼女集団『あなたを殺さないと、わたしたちはじゆうになれないんだよ!』
幼女集団『そーだそーだ!しね!!』
魔王「けっ、揃いも揃って…口先だけの意気地無しがよ」
幼女集団『なんだとー!!』
幼女集団『ころしてやるー!!』
魔王「あのなぁ!そんだけの数がいて、みんな機銃持ってるのに、そこらに倒れてるやつらは誰一人死んでねぇぞ」
魔王「おめぇらこいつらを殺せないんだろ!ビビっちゃってみっともねぇな」
幼女集団『うっ…』
幼女集団『び、ビビってないもん!!』
おたま「魔王さまぁ、言いたいほうだいだねぇ」
おたま「殺す気があるかどうか…そのからだでためしてみたら?」
魔王「おうやってみな」ニヤッ
おたま「イっちゃえ!!」
幼女「やめなさい!」バッ
おたま「!」
幼女集団『どいてよ!あぶないよー!』
幼女「危ないのはあんたたちよ!よくもこの人たちを撃てたわね!!」
幼女集団『そいつは人じゃないよ!まぞくだよ!』
幼女「一緒よ!」
幼女集団『ちがうよ!』
幼女「一緒じゃない!!やられたらやり返す!お互い同じじゃない!!」
幼女「一人も殺してないんでしょ!?だったらまだみんな戻れる!これ以上はやめて!」
幼女集団『うう…』
幼女集団『もどれる…?』
おたま「ふふ、戻れるって、どこにぃ?」
おたま「分かってるでしょ?わたしたちには、パパもママもいない、おうちもなくなっちゃったんだよぉ」
おたま「もどるところなんてどこにあるのかなぁ?」
幼女「……」
おたま「あなたはどこにもどれるって言うの?」
幼女「たしかに、私もパパとママが死んで、家もなくて、戻る場所なんてどこにもない」
幼女「でもまだ生きてる!戻る場所なんてこれから作ればいい!」
幼女「あなたたち1人でも誰かを殺したら、もう本当にどこにも戻れなくなる…そんなの死んでるのと一緒よ!」
おたま「うーん…いってることがよくわかんないなぁ。でもひとつ分かること、はっけん!」
おたま「あなたが魔王様にみかたするなら、わたしたちのてきってことだよねぇ」スッ
おたま「いいよぉ。わたしがじきじきにイかせてあげるね」ググッ
幼女「!!」
魔王「おい…」ガシッ
おたま「う…!!」
おたま(はやい…それにすごい力…ひきがねがひけないよ)
魔王「そこまでだ。うちのペットに危害を加えることは許さん」
おたま「ペットだって、さいてーだね!」
幼女「最低だけど、でも…」
幼女「きっとこの人は、私の帰る場所になってくれふ人だから…」
おたま「はっ?りかいふのう~」
魔王「側近!」
側近「はいはい、この子を連れて逃げろ、ッスよね?」
魔王「頼むわ」
側近「さぁ逃げるッスよ!巻き込まれたら大変ッス」
幼女「待って!ねぇ、みんな聞こえてるでしょ!お願いだからもうやめて!」
幼女「こんなクズ魔王どうなってもいいけど、あなたたちのためにやめてほしいの!」
幼女集団『わからない…わからないよ』
幼女集団『なにいってるの??』
幼女「殺しちゃったら、あなたたちはもう…後戻りできなくなる!」
側近「…必ず伝わるはずッス、だから行くッスよ」ダッ
幼女「あっ…」
おたま「後戻りだって。いまさらそんなことできるわけないのにね」
魔王「ほーう。ずいぶん悟ったような口利くな」
おたま「わたしはずーっと、あなたをころすために生きてきたんだよぉ」
おたま「あなたにパパがころされて、わたしのじんせいぜーんぶだいなしになっちゃった」
おたま「もうパパのかおもおもいだせないよ」
魔王「……」
おたま「どれいしょうにつかまって、もうだめだとおもったんだけど、そこで思いついたんだよねぇ」
おたま「これからここにつれてこられる子たちに、わたしのちしきを、ちからをわけてあげられたら…」
おたま「ひとりじゃなにもできなくても、なかまがいればきっとなんとかできる!」
おたま「そうやってしんじつづけて、ようやくこの日がやってきたんだよ!」
おたま「後戻りなんてできない。そんなのもういらない。ここであなたをころして、わたしのじんせいはかんけつするんだよぉ!」
魔王「いい親だったんだろうな。優れた知識と力を持ち、カリスマ性に溢れていた…そしてその才がすべて子であるおまえに受け継がれた」
おたま「みんな、まおうにしょうじゅんを!!」
幼女集団『おー!!』ガチャッ
側近「ここまで来れば大丈夫ッスよ」
幼女「う、うん…でも魔王ひとりで、大丈夫かしら…もしあの子たちが本当に撃ってきたら…」
側近「……」
幼女「で、でもあいつ魔王って言うくらいだし、相当強いのよね?」
幼女「勇者を倒したんだし、あの子たちを傷つけずに制圧するくらいやってのけるのよね?」
側近「まず、魔王様はひとりじゃないッス」
側近「今からお城に戻って武器を持ってくるッス。私も魔王様と戦うッスから…」
幼女「銃!?だ、だめよ!あの子たちを撃たないで!」
側近「もちろんそのつもりッスけど、さすがに手ぶらじゃあね…」
側近「それと、もうひとつ…」
側近「あの人、撃たれたら普通に死ぬッスよ」
幼女「え……」
側近「勝ち目はないかもッスね。いや、勝ち負けとか言ってる時点で、ズレてるのかな?」
幼女「ねぇ、行かないで、おねがい…」
側近「怖くないッス。ここに隠れてれば絶対に見つからないッスから」
幼女「こ、怖いわよ…ねぇ、ひとりにしないで…」
幼女「死なないで…」
側近「……なるべく、頑張るッスよ」ダッ
幼女「あ……」
幼女「……」
幼女集団『おたまちゃん、いつでもうてるよ!』
幼女集団『このいちならかならずあたるよ!!』
おたま「…んー…」
魔王「…なんだ?ぽんぽん痛いのか?」
おたま「どうしてていこうしないのかな、っておもってぇ」
魔王「抵抗してほしいのか?」
おたま「でないとつまんない!かたきうちなんだからさぁ、もっとみっともなくいのちごいとかしてるところがみたかったのに」
魔王「俺が命乞い?死んでもせんよ」
おたま「あっそ、やっぱあなたきらい!もうころすね!」
おたま「さいごになにかいいのこしたことがあったら、きいてあげるよ?」
魔王「…お」
側近「はいそこまでッスー!」ザッ
魔王「……来たんかい」
側近「そりゃー来るッスよ」
おたま「じゃまするならおねえちゃんもころすよ!」
側近「おうおうやってみんかい!こちとらハジキ用意しとんじゃあ!!」
幼女集団『うぅっ…銃だぁ…こわいよぉ』
魔王「キャラ変わってないか?」ボソッ
側近「あくまで威嚇が目的ッスから…ていうかこれ球入ってないし」ボソッ
幼女集団『おたまちゃん…どうしよぉ』
おたま「……」スッ
側近「えっちょっ…」
パンッ
側近「!!」ビスッ
側近「いったああああ!!」
魔王「お、おい側近!?」
側近「肩!肩撃たれたッス!!」
おたま「やっぱり。うつ気なかったんだね」
側近「ひぃー容赦ないッス!」
魔王「当たり前だ!あいつの殺意は本物だぞ!」
側近「魔王様、子供は簡単には撃たないって言ってたじゃないッスか!」
魔王「こいつは例外だ。なぜならこいつは…」
おたま「あの銃がふぇいくなら、もうなにもしんぱいすることはないねぇ」
おたま「じゃこんどこそ、さよならぁ」パンッ
幼女集団『うてーーー!!!』カチッ
バラララララララララララララララララララララ
幼女「!」ビクッ
幼女「今の音…撃った?撃たれた?ど、どうしよう…」
幼女「やっぱりこんなところでじっとしてられないわ…」
幼女「おねがい…死なないでふたりとも…」ダッ
シュウウウウウ…
魔王「……」
側近「…ま、魔王様…」
魔王「へっ、思ったより当ててきやがったな…」ボタボタ
側近「魔王様が私をかばってどうするッスか…!」
魔王「撃たれたら死ぬだろうが」
側近「魔王様だって…!」
魔王「俺は体が丈夫だからいいんだよ。それにあいつらもやはり本当は当てる気なかったんだ」
魔王「ま、この距離で撃たれたらさすがにいくらかは当たるに決まってるわな…」ドロッ
魔王「その点おたまちゃん…おめぇは優秀だよ、きっちり俺の臓器を撃ち抜いてきやがった」
おたま「な…」
おたま「みんな、なんでちゃんとねらわないの!?」
幼女集団『だ、だって…こわくて…』
幼女集団『あたったらいたそうだし…』
魔王「どうやらお前が銃を振りかざしたおかげで、あいつらも銃の怖さを思い出したらしいぜ」
側近「はぁ、でも、それより魔王様がぁ…」
おたま「あなたもあなただよ!なにかんがえてるの!?ほんとうに、よけようともしないなんて…」
おたま「ころされるのがこわくないの!?」
魔王「おめぇ、俺を怖がらせたいのかよ」
おたま「…!」
魔王「その程度で復讐かい?かわいいもんだな」
おたま「…うるさい!うるさい!」バンッバンッ
魔王「!」ビスッビスッ
魔王「急所を狙わねぇってことはそういうことなんだな?」ドクドク
側近「じゅうぶんヤバいッスよ!!」
おたま「…っ!!」
幼女「ど、どうしよう…道が分からなくなっちゃった…」
幼女「ここがお城でしょ??どっちだったっけ…」ウロウロ
幼女「!」
幼女「ここって…お墓…?」
幼女「そういえば…魔王が言ってた…お城の裏はお墓になってるって…これのことだったんだ」
幼女「……」
幼女「魔族と人間の兵士…両方のお墓だったのね」
幼女「……?」
幼女「このお墓…え??え!??」
魔王「さっき…言い残したことはあるかって聞いたよなぁ」
おたま「!」
魔王「ひとつあるんだよ。いいかい?」
おたま「……」チラッ
魔王「……」ドクドク
おたま「いいよ!このままほっといたらしゅっけつたりょうでしぬだろうし!すきなだけ話してなよ!」
魔王「おめぇは…」
魔王「本当に、父親の顔を忘れちまったのかい?」
おたま「……」
おたま「おぼえてない…おもいだせないよ…」
おたま「あんたにころされた勇者のかおが!!!」
側近「え…勇者…?」
おたま「そうだよ!しらなかった!?わたしは勇者のこども!!」
おたま「パパはおまえにころされた!だからわたしは…」
魔王「でかくなったなぁ。本当に…」
おたま「…は…?」
魔王「3年ぶりだから…おまえももう8つか」
側近「………」
幼女「うそよ…こんなこと…ありえないわ!」
幼女「ねぇ…どうして…どうしてここに…」
幼女「魔王の…お墓があるの……?」
魔王「パパの顔を忘れたなんて、悲しいこと言うなよな…」
おたま「は…?なに、いってるの…?わたしのパパは勇者で…おまえじゃない…」
おたま「おまえは魔王で…パパを…勇者を殺したんだから…??」
魔王「悪いな。俺がその勇者なんだわ」
おたま「……え?なに?わからない…わからないよ…」
魔王「……」ゴホッ
ビチャビチャ
魔王「魔族なんかじゃない…ただの…人間さ」
おたま「……うそだ!!!」
側近「…本当ッスよ」
側近「ここにいる魔王様は勇者…そして本当の魔王は…」
側近「3年前のあの一騎打ちで、死んだッスから」
3年前
魔王『なぁ勇者よ…この戦い、勝っても負けても』
魔王『後腐れのないようにしようぜ』
勇者『なにを…言ってる!?』
魔王『俺が負けても…おめぇが負けても』
魔王『残されたやつらが、もう一方を恨み続けることになるだろ』
魔王『そしたらまたそいつらの間で争いが起きるだろうよ…それこそ本当に不毛じゃねぇか?』
勇者『分かってるはずだ…俺もお前も一緒だ!戦いこそが我らが本性!』
勇者『残されたものたちがまた血を求めるならまた存分に戦えばいいだけだ!』
魔王『本性だとかなんとか言ってごまかすんじゃねーよ』
魔王『いいか?この先こんなことが繰り返し起きてたらな、それこそ本当にお互いに滅びちまうぞ』
魔王『誰かがどっかで我慢しなきゃいけねーんだよ』
勇者『そんなことは、お前だけがやっていればいい!』
魔王『ったく…分からねぇやつだな』ガシッ
勇者『!?』
ドスッ
勇者『…お前、なにを!?』
魔王『これで…勇者様は魔王をぶっ殺したことになるな』
勇者『馬鹿な、わざと負けてなんの意味が…』
魔王『敗者がいなけりゃいいんだよ』ゴホッ
勇者『なんだと…?』
魔王『おまえ…これから死ぬ俺になり代われ』
魔王『おまえは魔王として、勇者を下した…。そういうのが一番いい…』
勇者『ふ、ふざけるな!俺が魔王だと!?』
魔王『素直に勇者が勝ちましただと…うちの残り数少ない同胞どもが暴れちまうかもしれねぇしよ』
魔王『魔王が勝った、勇者は負けた、で実際は中身勇者の魔王が魔族を見張っといてくれよ』
勇者『なんで、そんなことを…!』
魔王『俺が我慢すりゃ丸く収まんだよ…』
勇者『わからん!なにがしたいんだよおまえは!これでいったい何になる!これからどうなるというんだ!?』
魔王『これからどうなるかはお前次第だろ…俺のやり方だけじゃ限度がある…あとはお前がきっちり魔王をやってくれるかどうかだ』
勇者『おい…そんなの…俺とおまえの戦いはどうなる!?』
魔王『そんなの、どうでもいいじゃねぇかよ…』
魔王『側近!!!』
側近『はっ、魔王さ…』スッ
側近『魔王様…!?』
魔王『悪いな…こうするのが一番いいと思ってよ』
魔王『これからはこいつが魔王様だ。俺の代わりによく見張っといてくれよ』
側近『そんな、魔王様、魔王様!!』
勇者『………』
側近「魔王様はあのとき勇者であることを捨てたッス…」
側近「そして今まで通りの魔王として、生きていくことになった」
側近「戦力を失った人間と魔族…それぞれを管理できるように」
おたま「人間を管理…は!?勇者がじつは生きてることなんてだれもしらなかったよ!?」
側近「いいえ、現に人間側が兵を挙げたことはあれ以来一度も起こらなかったッス」
魔王「実はひっそり国王に連絡寄こして、動きを抑えてたんだぜ…それをおめぇが無理やりその気にさせたんだろうが」
おたま「……」
側近「だけど魔王様は魔族のコントロールがうまくいかなかったッス…」
魔王「……しょうがねぇだろ。退屈だったんだよ」
魔王「心のどっかでなにか間違いが起きてほしいと、日々願っていたのは本当さ」
魔王「その結果がこれだ…俺もまぁバカだったわ…いい薬になったよ」
魔王「償いたい気持ちもあったしな」
おたま「だれに!?なにを!!!」
魔王「……わかんねぇな。魔族なのか、人間なのか、娘であるおまえなのか、あのとき死んだ魔王なのか、ここにいる側近なのか」
魔王「かわいいペットなのか…。みんなに償うには、俺の命一個じゃ足りねえか」
おたま「ねぇ、ほんとうにパパなの…!?うそだよね、しんじゃうの!?」
魔王「パパなぁ、やっぱりかっこいい勇者の姿でおまえに会いたかったけど…」
魔王「それも我慢しなきゃいけなくてよ…」
魔王「なぁ側近よ、これで…もうだれも我慢せずに生きられるようになるかね?」
側近「さぁー…どうッスかね…」
側近「私やっぱり許せなくなって…あの子のこと殺しちゃうかもッス」グスッ
魔王「やめろよバカ…俺の大事な娘だぜ…」
おたま「パパ…やだよ…せっかくいきてたのに、しんじゃうなんてだめだよォ!!」
魔王「ごめんなぁ…我慢我慢って…自分勝手だよなぁ」
側近「…分かったッス…私も我慢するッス」
魔王「おう…。どっちかが手を出して…もう一方がやり返して…またもう一方がやり返す…キリがねぇだろ?」
魔王「もう…終わりにしねぇとなぁ」
おたま「うわああああん…」ペタン
側近「……」グスッ
幼女「魔王!!!!」
魔王「おー…なんだ来ちゃったのか…」
側近「…隠れてろって言ったじゃないッスか…」ボロボロ
幼女「ねぇ、魔王の…魔王のお墓があった!あなたは本当は誰なの!?」
魔王「俺は勇者だよ…んであそこで泣いてるおたまの親父」
魔王「そして…おまえの飼い主様だよ…」スッ
ポン
幼女「さわら…ないでよ…」
魔王「嘘ついてごめんなぁ」ナデナデ
幼女「撫でないでよ…わたし…ペットじゃな…」
魔王「それも…謝らないとな…悪かったよ」
幼女「謝らないでよ……」
幼女「死なないでよ…!ペットでもなんでもいいから…もっとわたしと一緒にいてよ…」
魔王「……へへ」
幼女「バカ!バカ魔王…嫌いなままお別れなんて…」
魔王「おまえはやっぱり…口が悪いなぁ…」
側近「…魔王様、おたまちゃんが帰っちゃうッスよ…ほら、バイバイって…」
魔王「……」
おたま「ねぇ、パパ、こんどあそびにきてもいい?」
魔王「……」
おたま「いいよね、ともだちみんなであそびにいくからね」
魔王「……」
おたま「それからね、ママのおはかまいりにもいこうね。やくそくだからね」ガチャッ
バタン…
魔王「……」
幼女「お墓といえば、裏のお墓にはきれいな花が添えてあったわ…あれは?」
側近「魔王様に言われて、毎日添えてるッスよ」
幼女「…そう…」
魔王「……」
幼女「ねぇ、魔王、またこんど散歩に連れてってよ」
魔王「……」
幼女「あんなにきれいな花だもの、どこかに花畑があるんでしょ?こんど私にも見せてね」ガチャッ
魔王「……」
側近「そのときは、私も一緒に行くッスよ」
幼女「…うん」
バタン…
魔王「……」
側近「ずーっと退屈そうにしてたのに、ずいぶん満足げな顔ッスねぇ」
魔王「……」
側近「お務め、ご苦労様ッス」ガチャッ
バタン
魔王『勇者!久しぶりだな』
勇者『よお、魔王…』
魔王『どうだ?うまくやれたか?』
勇者『ぼちぼちだな…』
魔王『我慢するってのはしんどいだろ?』
勇者『まぁ、でも、あとはなんとかなりそうだ』
魔王『そりゃよかった』
勇者『そういえば俺、ペット飼ったんだよ』
魔王『ほーそりゃいいな』
勇者『今度お前にも見せてやるよ』
おわり