1 : 以下、?... - 2018/11/16 21:31:14.329 xCg56D3JD 1/17

喪黒「私の名は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。

    ただの『せぇるすまん』じゃございません。私の取り扱う品物はココロ、人間のココロでございます。

    この世は、老いも若きも男も女も、ココロのさみしい人ばかり。

    そんな皆さんのココロのスキマをお埋めいたします。

    いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます。

    さて、今日のお客様は……。

    金丸夢男(40) 会社員

    【宝くじ】

    ホーッホッホッホ……。」

元スレ
喪黒福造「たまには、宝くじを買ってみるのもいいでしょう」 派遣会社正社員「全く、いきなり何を言い出すかと思えば……」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1542371474/

4 : 以下、?... - 2018/11/16 21:33:14.755 xCg56D3JD 2/17

とある街。駅と周辺のビル。あるビルのパネルに、入居した会社や団体の名前が記されている。

人材派遣会社「スティギモロク」もその一つだ。スティギモロクが入居しているのは、ビルの12階のようだ。

スティギモロク社内。待合室にいる派遣社員たち。窓口では派遣社員と、スティギモロク正社員が会話をしている。

金丸「井端さん、お疲れ様でーす」

テロップ「金丸夢男(40) 人材派遣会社『スティギモロク』正社員」

井端「お疲れさまです」

金丸に対し、何かの書類を渡す井端。書類に目を通す金丸。しばらくした後、金丸は井端に封筒を渡す。

金丸「3万8160円……。これが今週分の給料です」

井端「確かに……。ありがとうございます」

金丸「井端さん。来週からお歳暮の包装のお仕事がありますけど、引き受けますか?」

井端「は、はい……。喜んで……」

金丸「助かります」

7 : 以下、?... - 2018/11/16 21:35:17.046 xCg56D3JD 3/17

井端がいなくなる。窓口にいる金丸は、待合室にいる派遣社員たちを見つめる。

金丸(こいつらが将来、這い上がる可能性はまずあり得ない……)

金丸(派遣社員になった時点で、事実上、人生は終了……。俺は正社員になれて、本当によかった……)

派遣社員・中田が金丸の前に立つ。

金丸「どうしましたか、中田さん?」

中田「私、この派遣会社を辞めようと思っているんです。実は……」

金丸(真面目で仕事ができる派遣社員が、またいなくなった……)


夜。線路を走る電車。電車の座席で居眠りをする金丸。金丸の前には、吊り革を持った喪黒福造がいる。

ある駅に停車する電車。眠ったままの金丸に声をかける喪黒。

喪黒「もしもし、もしもし……。終点ですよ。しゅ・う・て・ん!」

金丸「えっ、そんな……。完全に乗り過ごしてしまった……。今の電車が終電なのに……」

8 : 以下、?... - 2018/11/16 21:37:18.448 xCg56D3JD 4/17

駅のプラットフォーム。ベンチに座り、会話をする喪黒と金丸。

金丸「仕事で疲れきっていたもので、つい寝過ごしてしまって……」

喪黒「あなたのお仕事は?」

金丸「私ですか?私はこういう者です」

喪黒に名刺を渡す金丸。

喪黒「ほう……。金丸さんは、人材派遣会社の正社員ですか」

金丸「はい、そうです……。ひょっとすると、あなたはどこかの会社のサラリーマンなんですか?」

喪黒「いいえ、私はセールスマンです」

金丸に名刺を渡す喪黒。

金丸「……ココロのスキマ、お埋めします?」

喪黒「現代の人々は多かれ少なかれ、心にスキマを持っています」

喪黒「私は、その心のスキマをお埋めするボランティアをしているのです」

金丸「そうなんですか……。変わったお仕事ですね」

9 : 以下、?... - 2018/11/16 21:39:12.647 wDDm4/FxD 5/17

喪黒「連絡先は、名刺の裏に書いてあります」

喪黒から貰った名刺を見つめる金丸。名刺の裏の白地には、BAR「魔の巣」の住所がボールペンで書かれている。

喪黒「見たところ、金丸さんにも心にスキマがおありのようですねぇ」

金丸「そんなことはありません。しがない平社員とはいえ、会社の正社員になれましたし……」

金丸「一応、妻や娘を持つことだってできました。平凡ながらも、私は今の生活に満足しているんです」

喪黒「本当にそうでしょうか?」

金丸「えっ!?」

喪黒「あなたは正社員ですが、勤務先は人材派遣会社だから非常に忙しいです」

喪黒「仕事が終わる時間はいつも不定期ですし、帰宅は深夜になることが多いでしょう」

金丸「ええ、まあ……」

喪黒「それに、あなたは家の中では一家の大黒柱……。だから、心の中で責任感も感じているはずです」

金丸「はい……」

喪黒「毎日、ただ働くことを繰り返すだけの生活……。果たして、一体何が面白いのでしょうか?」

喪黒「これは正社員においては言わずもがな、派遣社員においてはなおさら当てはまるでしょう」

10 : 以下、?... - 2018/11/16 21:41:19.504 wDDm4/FxD 6/17

金丸「確かに……」

喪黒「単に働くだけの存在として人生を送るのは、ロボットと何も変わらないですよ」

喪黒「人間に生まれたならば、夢や希望を追い求めてみてもいいのではないですか?」

金丸「まあ、その……。私がもう少し若ければ、夢や希望を追い求める気になったでしょう」

金丸「ですが、私はもう40歳ですよ。やり直しのきかない年齢ですし、失うものが多すぎるわけですから……」

喪黒「金丸さん。平凡な会社員のあなたでも、夢や希望を追い求めるいい方法がありますよ」

金丸「何ですか、それ?」

喪黒「宝くじを買うことです。たまには、宝くじを買ってみるのもいいでしょう。ほら、年末ジャンボ……」

金丸「全く、いきなり何を言い出すかと思えば……。宝くじだとか、こんなのまず当たるわけないでしょう」

喪黒「金丸さん。宝くじを買うというのは、夢を買うことでもあるのです」

喪黒「夢を買うことを諦めるというのは、将来への可能性を放棄しているのと同然なのですよ」

金丸「で、でも……。ほとんどの購買者が、ハズレくじを手にしているわけでしょう……」

喪黒「くじがハズれるのは、必ずしも悪いことではありません」

喪黒「宝くじを買って夢を見るというのは、それ自体を楽しむことができるのですから……」

11 : 以下、?... - 2018/11/16 21:43:14.722 wDDm4/FxD 7/17

金丸「とはいえ、喪黒さん……。宝くじなんて得をするのは胴元で、損をするのは購買者でしょう?」

金丸「それじゃあ、買って夢を見るなんてあまりにもバカバカしいじゃないですか」

喪黒「それは、くじがハズれた場合の話ですよ。当たった側はむしろ得をしたと言えるでしょう」

金丸「で、ですが……」

喪黒「夢を追い求めたからこそ、当たりが掴めたのですよ。あなたもくじを買えば、ひょっとすると当たるかもしれません」

金丸「そんなこと、あり得ません……」

喪黒「大丈夫です!きっと当たります!1等だって掴めますよ!」

喪黒は金丸に右手の人差し指を向ける。

喪黒「さあ、金丸さん……。あなたは明日、駅の近くの店で宝くじを買います!!必ず買います!!」

喪黒「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」

金丸「うわああああああああああ!!!」


夜道を走るタクシー。タクシーには喪黒と金丸が乗っている。マンションの前に停車するタクシー。

喪黒「金丸さん、タクシー代は私がおごりますよ」

12 : 以下、?... - 2018/11/16 21:45:18.111 wDDm4/FxD 8/17

金丸「えっ、いいんですか?」

喪黒「構いません。いろいろ長話につき合わせてしまったもので、お詫びの代わりですよ」

タクシーを降り、マンションへ向かう金丸。金丸の部屋では、玄関に彼の妻がいる。

金丸の妻「おかえりなさい……」

金丸「実は、終電で寝過ごしたんだけどさ……。親切な人に出会って、タクシー代をおごって貰ったんだ……」

金丸の妻「ふぅん、そんなことがあったんだ……」


翌日、昼。立ち食いそば屋で、そばをすする金丸。彼は昼食を食べ終わり、道を歩く。

金丸(食った、食った……。さあ、会社に戻るか。いや……、その前に宝くじでも買いに行こう)

駅の近くの宝くじ売り場へ寄る金丸。店の前には行列ができている。いつの間にか、金丸が一番前になる。

窓口の女性「宝くじの購入ですか?」

金丸「は、はい……。年末ジャンボを買いたいんです」

14 : 以下、?... - 2018/11/16 21:47:33.733 wDDm4/FxD 9/17

夜。自宅マンションで、机に向かいながら宝くじを見つめる金丸。

金丸(これが年末ジャンボ……。俺は、生まれて初めて宝くじを買った。まあ、たまには夢を見るのも悪くないだろう)


数日後。派遣会社スティギモロク。窓口で考え事をする金丸。

金丸(俺が買った宝くじはどうなるんだろうか?発表まで待ち遠しくなってきたな……)

派遣社員「……お疲れ様です!」

金丸「お、お疲れ様です……」


12月下旬の休日。喪黒と金丸が席に腰掛けている。

金丸「いやぁ……。休日ということもあって、ようやく喪黒さんに会えました」

喪黒「金丸さん、宝くじを買ってみた気持ちはどうですか?」

金丸「まあ、何て言うか……。もしかしたら当たるんじゃないか、っていう期待感があって……」

金丸「その気持ちがあるだけでも、毎日が少しは楽しくなった気がするんですよ」

喪黒「楽しみを持ちながら生活をするのは、いいことですよ。楽しみが一切なく、ただ働くだけでは面白くないですから……」

15 : 以下、?... - 2018/11/16 21:50:03.494 wDDm4/FxD 10/17

金丸「ええ、まあ……。あの宝くじを持っている限り、夢を見続けることができるわけですから……」

金丸「たとえ当たりであってもハズレであっても、夢を見れるというだけで十分満足ですよ」

喪黒「いえいえ……。今回のあなたに限っては、ハズレはあり得ませんよ。きっと1等が当たるはずです」


12月31日、昼。マンション。液晶テレビを見つめる金丸一家。テレビでは、年末ジャンボの結果が中継されている。

遂に1等の番号が発表される。回転盤の的に次々と突き刺さる矢。番号をメモ用紙に書き込む金丸。

金丸(こ、これは……。まさか……)

急いで机に向かう金丸。机の引き出しから宝くじを取り出し、メモ用紙に書かれた番号と照らし合わせると……。

金丸(お、俺が買った年末ジャンボが……。よりによって1等に……。本当にこんなことが起きるなんて……)


テロップ「翌年――」

BAR「魔の巣」。喪黒と金丸が席に腰掛けている。

金丸「喪黒さん……。あの年末ジャンボ、本当に1等が当たってしまいました……」

喪黒「ほう……、私の予想通りになりましたなぁ。おめでとうございます」

16 : 以下、?... - 2018/11/16 21:52:18.365 wDDm4/FxD 11/17

金丸「は、はい……。でも、まだ実感が湧かなくて……」

喪黒「ねぇ、金丸さん。『1等が当たったら何をしよう』と考えたことはありますか?」

金丸「……なかったですね。だから、おそらくこれからも普段通りの生活を送るでしょう」

喪黒「それが一番いいんですよ。突然大金を手にしたからといって、むやみに贅沢をするのは危険ですから……」

金丸「ええ……。私は平凡な人生を送ってきましたから、いきなり贅沢とか無茶はできないでしょう」

喪黒「そうであるべきなのですよ。何しろ1等の賞金は、使い方次第であなたや家族の人生を大きく左右する大金です」

喪黒「だから、金の使い道には慎重さを重ねた上で、注意する必要があります」

金丸「はい……。十分、承知していますよ」

喪黒「ですから、金丸さん。あなたには、私と約束していただきたいことがあるんですよ」

金丸「約束!?」

喪黒「そうです。1等が当たっても、あなたは今までの仕事と生活を大切にしてください」

喪黒「その上で、あの賞金は好きな形で使うべきなのです。いいですね!?」

金丸「わ、分かりました……。喪黒さん」

17 : 以下、?... - 2018/11/16 21:54:24.802 wDDm4/FxD 12/17

マンション。金丸家。台所で食事をする金丸一家。妻と娘が、金丸に何かをせがむ。

金丸の娘「パパァ、ゲーム買ってぇ!!『モリオカート』欲しいぃ!!」

金丸の妻「ねぇ、あなた……。新しいコート買いたいんだけど、どう?」


正月明け。派遣会社スティギモロク。出社間もない金丸に、正社員たちが口々に声をかける。

正社員A「金丸さん、年末ジャンボで1等が当たったそうですね!!」

正社員B「ねぇ、金丸さん!!時間ができたら、私たちに何かおごってくださいよ!!」

午後。いつも通り、窓口で派遣社員に給料を手渡す金丸。しばらくした後、金丸は待合室にいる派遣社員たちを見つめる。

金丸(それにしても、ここにいる派遣社員たちは相変わらずしょぼくれている。まさに負け組の集まり……)

窓口の中にいる正社員たちを見渡す金丸。

金丸(でも……。この会社の正社員だって、組織に鎖で繋がれた奴隷であることは変わりない……)

金丸(それは、派遣社員よりはマシというだけ……。本当に勝ち組になりたいなら、金持ちになるかしかない)

金丸(結局、金がないから人生の選択肢を広げることができないんだ。でも、俺には金がある……)

18 : 以下、?... - 2018/11/16 21:56:46.187 wDDm4/FxD 13/17

ある休日。喫茶店で、昔の同級生・石川と会話をする金丸。2人とも私服姿だ。

金丸「なぁ、石川。ところで、話というのは一体何だい?」

石川「おい、金丸。俺と一緒に組んで、会社を経営しないか?」

テロップ「石川吾郎(40) 金丸の同級生」

金丸「何だって?」

石川「派遣会社を作って、お前が会社社長になるんだよ。俺は副社長か専務としてお前を支える。どうだい、いい考えだろ」

金丸「無謀すぎるよ!俺は今の身分に何も不満はないし、それに独立はリスクが伴う!」

金丸「下手をすれば、俺の家族やお前に迷惑がかかるかもしれないんだぞ!」

石川「心配いらないさ。俺は経営コンサルタントをやってきたから、いろいろお前にアドバイスができる」

石川「何よりも……だ。お前には、年末ジャンボの1等の賞金があるから、元手はいくらでもあるだろ」

金丸「そうか……。お前も、俺の年末ジャンボの1等のこと知ってたんだな……」

石川「あの金は、有効に使えばいくらでも増やすことができる。俺は同級生のよしみとして、お前のために一肌脱ぎたいんだ」

金丸「うーーーーん……」

19 : 以下、?... - 2018/11/16 21:59:10.804 wDDm4/FxD 14/17

そして――。とあるビルの中に、金丸の会社が入居している。執務室で机に向かう金丸。金丸は石川と握手をする。

金丸「お前のおかげで、俺は派遣会社の社長になることができた。本当に何とお礼を言ったらいいか……」

石川「なぁに……。お前は友達だから、手助けをしたかったまでのことさ」

ビルの外で、煙草を吸う金丸。

金丸「フーーーーッ……」

休憩中の金丸の側に喪黒が現れる。

喪黒「いやぁ……、それにしても立派なスーツを着ていますねぇ。あなた……」

金丸「分かりますか?あの1等の賞金で私の人生は変わりました」

金丸「これも、喪黒さんが私に宝くじを買うよう勧めてくださったおかげ……」

喪黒「ほう……、そうですか。金丸夢男さん……、あなた約束を破りましたね」

金丸「なっ……」

喪黒「私はあなたに言ったはずですよ。1等が当たっても、今までの仕事と生活を大切にしろ……と」

喪黒「しかしながら、金丸さんは1等の賞金を利用して会社を立ち上げましたねぇ」

20 : 以下、?... - 2018/11/16 22:01:17.308 wDDm4/FxD 15/17

金丸「で、ですが……。私に独立を勧めたのは高校時代からの友人ですし……。しかも、彼は経営コンサルタントなんです」

金丸「だから、話に乗らないわけにはいかないでしょう!何しろ、これはチャンス……」

喪黒「弁解は無用です。約束を破った以上、あなたには罰を受けて貰うしかありません!!」

喪黒は金丸に右手の人差し指を向ける。

喪黒「ドーーーーーーーーーーーーン!!!」

金丸「ギャアアアアアアアアア!!!」


3週間後。金丸の会社、執務室。ヤクザたちが手形を持ち、金丸を脅している。

ヤクザA「金丸さん。あんたの会社の手形、うちに回ってきたんだけどなぁ」

ヤクザB「ああ。うちの店にもこの手形が持ち込まれてきたんだよ」

金丸「バ、バカな……!!同じ手形がいくつもあるなんて……!!どれかは偽物のはずだ!!」

ヤクザC「偽物?そんなわけねぇだろ。確か、あんたの会社の専務がこれを持ってきたんだよなぁ。ほら、石川とかいう奴……」

金丸「そんな……!!まさか、石川が……!!」

21 : 以下、?... - 2018/11/16 22:03:20.277 wDDm4/FxD 16/17

ヤクザA「手形が出回ってる以上、今すぐ金を払って貰おうか。俺たちは、金を回収してぇんだ」

金丸「分かった……。銀行に行って、金を下ろしてくる……」


とある銀行、窓口。金丸は、金を下ろそうとしたものの――。

受付嬢「申し訳ございません、金丸様。実は、この口座は……」

金丸「な、何てことだ……!!預金が空になっているなんて!!ということは、これも石川の仕業……」


銀行の外へ出て、スマホを操作する金丸。

金丸(くそっ、石川め……!!石川はどこだ!!)

金丸は、石川と通話しようとしたが――。

スマホ「お客様がおかけになった電話番号は、現在使われておりません……」

金丸(石川に電話がつながらない……!!よりによって、あいつが詐欺師だったなんて――)

22 : 以下、?... - 2018/11/16 22:06:37.972 wDDm4/FxD 17/17

金丸の会社。執務室に戻った金丸を、あのヤクザたちが取り囲む。

ヤクザA「金丸さん、現金の用意はできたか?」

金丸「そ、それは……」

ヤクザB「金丸さん……。金を払えなかったら、どうなるか分かってるだろうな?ただじゃ済まねえぞ……」

ヤクザたちに詰め寄られ、蒼白な表情になる金丸。


とある駅の近くで、宝くじ売り場の前にいる喪黒。

喪黒「人々が宝くじを購入するのは、夢を買うためであり……。それは、人生を変えることを望む願望の表れとも言えましょう」

喪黒「しかしながら、当選する人は極めてまれですし……。ほとんどの人は、一時的に楽しい夢を見た後で現実を思い知らされます」

喪黒「それどころか、カネには魔力が宿っていますし……。普通の人が突然巨大な富を手にすると、人生を誤る恐れさえあるのです」

喪黒「結局、宝くじとは、夢を見るために買うわけであり……。夢は夢のままで終わるからこそ、楽しめるものなのかもしれません」

喪黒「だって、宝くじの高額当選者は、大半が人生を狂わせていますから……。例えば、金丸夢男さんなんてその最たるものですよ」

喪黒「オーホッホッホッホッホッホッホ……」

                   ―完―

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