1 : 以下、?... - 2019/03/13 21:48:03.739 U216UaVZ0 1/30

「晴れて俺たちは結婚したわけだが、これからは主婦として俺を支えて欲しい」

「ならば主婦として報酬を1000万円頂こうか」

「キャッシュで支払おう」

「これだ」パカッ

「確かに、これで契約は成立だ」

「金額を確認しなくていいのか?」

「この期に及んで小細工をするようなつまらない男だったら、結婚などしていない」

「フッ……さすがはプロだ。期待しているよ」

「貰った報酬の分は働く……」ザッ

元スレ
妻「主婦として報酬を1000万円頂こうか」夫「キャッシュで支払おう」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1552481283/

3 : 以下、?... - 2019/03/13 21:52:11.321 U216UaVZ0 2/30

ジリリリリリリ……!

「う、ん……」

「あなた、起きて」

「あと五分~!」

「なんという寝起きの悪さ……仕方ない」ガシッ

「?」

フワッ

(体が浮いた!?)

4 : 以下、?... - 2019/03/13 21:54:18.023 U216UaVZ0 3/30

ストンッ

(体が起き上がった……)

(しかも、脳がいい感じにシェイクされて、目覚めもバッチリ!)

「すでに朝食の用意はできている」

(合気道かなにかの技を応用したのか……さすがプロ!)

6 : 以下、?... - 2019/03/13 21:57:18.298 U216UaVZ0 4/30

「朝食だ。食してもらおう」

「……!」

(トーストとサラダ、ハムエッグといったオーソドックスな朝食だが、きっちり30品目揃ってる!)

(料理は見た目も味のうちというが、見てるだけで朝っぱらからお腹が減ってきた)グゥゥゥゥ…

(早起きしてこんな朝食を作るとは……恐ろしいプロだ)

「いただきます」モグモグ

8 : 以下、?... - 2019/03/13 22:00:15.249 U216UaVZ0 5/30

「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」

「靴を……」ゴソッ

(この靴……温かい!?)

(まさか、温めておいてくれたというのか!? 若き日の豊臣秀吉のように……!)

(おかげで気分は織田信長っ……! 会社統一も夢じゃないっ……!)

(さすがプロ、小粋なマネをする……!)

10 : 以下、?... - 2019/03/13 22:04:09.679 U216UaVZ0 6/30

「ただいまー」

「お帰りなさい」

「さっそく食事にしようかな」

「準備はできている」

ズラッ…

(おおっ……! 近所のスーパーでよく見る食材ながら、豪勢な料理に仕上がっている!)

(味はもちろん一流シェフのそれに匹敵する……!)モグモグ

(凄腕のプロと聞いていたが……ここまでとはな。敵に回さなくてよかったぜ)

12 : 以下、?... - 2019/03/13 22:06:17.209 U216UaVZ0 7/30

「ビールを注ごう」

「ありがとう」

「瓶ビールなのはありがたいけど、家に栓抜きあったっけ?」

「素手で十分だ」

シュピンッ

「……!」

(ビール瓶を手刀で切断した……さすがはプロ……)

14 : 以下、?... - 2019/03/13 22:10:16.471 U216UaVZ0 8/30

休日――

「今日はのんびりしようっと」

「……」チラッチラッ

(妻が掃除をしたそうな目でこっちを見ている)

(だが、俺はゴロゴロと昼寝をしている……さあ、どうするプロ!?)

(俺の昼寝を妨げないよう掃除をする……こんな不可能を可能にできるのか!?)

「……」

15 : 以下、?... - 2019/03/13 22:12:14.971 U216UaVZ0 9/30

「……」

シュババババババババッ

サササササササッ

(音を立てずに……掃除を!?)

(闇の技である無音清掃術(サイレントクリーニング)を身につけているとは、さすがはプロ!)

18 : 以下、?... - 2019/03/13 22:15:30.116 U216UaVZ0 10/30

買い物に出かける二人。

「これぐらい買えばいいかな?」

「ええ、付き合ってくれてありがとう」

(買い物をしている時の妻の目はまさに獲物を狙うハンターの眼光を放っていた……)

「――む」ジャキッ

「え、なに!?」

(妻が抜刀を!? まさか……敵か!?)

19 : 以下、?... - 2019/03/13 22:18:16.599 U216UaVZ0 11/30

「雨が降ってきた」サッ

「え?」

ポツッ…

ポツッ ポツッ ポツッ

(ホントだ……)

(雨が降る前に、雨雲の殺気を感じ取っていたというわけか……プロめ、やりおる!)

21 : 以下、?... - 2019/03/13 22:23:09.769 U216UaVZ0 12/30

TV『来週もまた見て下さいね、ジャーンケーンポンッ!』ウフフフフ

「あーあ」

「サザエさんが終わると日曜日も終わるって、憂鬱になるんだよなぁ」

「だけど、また日曜日になれば、あたしたちに会えるわよ!」

(サザエさんの声!?)

「日曜日が終わるんじゃなく、また次の日曜日に向かって一週間が始まると考えるのよ!」

(サザエさんになりきって励ましてくれるなんて……これがプロ……!)

23 : 以下、?... - 2019/03/13 22:26:26.446 U216UaVZ0 13/30

ある日――

同僚「さて、そろそろ帰るか」

「そうだな」

同僚「お前はいいよなぁ~、毎日奥さんの手料理食べられてさ」

「うん……」

同僚「?」

「だけどたまには大雑把な飯を食いたくなるんだよなぁ。卵かけご飯みたいな」

同僚「贅沢な悩みだな。んじゃ、お疲れー」

24 : 以下、?... - 2019/03/13 22:29:25.578 U216UaVZ0 14/30

「ただいま」

「すまない、今日は晩ご飯の用意ができてなくて」

(プロがこんなミスを……? 珍しいな)

「卵かけご飯を用意したから、食べてくれ」

「……!」

(まさか、俺の思考を読んで……!?)

(しかも、俺が負い目を感じないよう、自分のミスだと偽って……)

(なんというプロ……!)

26 : 以下、?... - 2019/03/13 22:34:43.257 U216UaVZ0 15/30

また別の日――

「……ん」グビッ

「今日の味噌汁はいつもより塩気が薄いような……」

「最近、血圧が少々高いようだから、減塩してみた」

「血圧? 別に高くないよ」

「血管の具合から見て……上は132、下は75といったところだろう。少し高めだ」

「いくら君でも、血管見ただけで血圧が分かるわけないだろ。常に変動してるのに」

「ならば試してみるか?」

「ああ、君を疑うわけじゃないが、試させてもらう! この血圧計でな!」

(プロとの真剣勝負……! ワクワクしてきたぜ!)

27 : 以下、?... - 2019/03/13 22:37:15.410 U216UaVZ0 16/30

132 75

「……!」

「な?」

「さすがはプロ……!」

「私は一目見れば、体の異常がだいたい分かる」

(毎日人間ドック受けてるようなもんだな……。プロの医者も真っ青だ)

29 : 以下、?... - 2019/03/13 22:40:16.381 U216UaVZ0 17/30

ある朝――

「う~ん……」ピピピッ

37.5

「君のいうとおり、熱があるな……」

「よし、今日は休むといい」

「無理だよ……会社休むなら38℃はなきゃ」

「勝手な基準を作るな。風邪ならば休まなければならない」

「うちの課長は昔堅気で、微熱なら出てこいってタイプの人だし……絶対怒られる」

「ならば私が電話しよう。必ずや休暇を勝ち取ってみせる」

(ほう、プロの交渉術をぜひ拝見するか……)

30 : 以下、?... - 2019/03/13 22:44:06.278 U216UaVZ0 18/30

「もしもし、今日うちの夫を休ませてもらいたいのですが」

課長『熱は?』

「37.5℃です」

課長『おいおい、37℃程度で休まれちゃ困るんだよぉ~』

課長『他の者に示しがつかんし、這ってでも出てきてもらわないと』

「しかし、風邪の感染力を甘く見てはいけません」

「夫が無理に出勤した結果、職場中にウイルスが蔓延するかもしれませんよ?」

「もしかすると、パンデミックが発生するかも……」

課長『な、なにっ!?』

32 : 以下、?... - 2019/03/13 22:47:28.169 U216UaVZ0 19/30

「課長さんはもうご年配でいらっしゃる……免疫力も落ちていらっしゃるでしょう」

「定期健診でも気になる数値がちらほらあるのでは?」

課長『うぐ……』

「夫に風邪をうつされ、こじらせて、肺炎になるという最悪のケースも十分考えられる」

課長『私を脅すつもりか!?』

「いいえ、事実を述べているまでです」

「もしあなたが亡くなられたら、残された御家族はどうなるでしょうなぁ……」

「たしか、まだ小さいお子さんもいらっしゃるんでしょう?」

課長『子供には手を出すな! なにが……なにが望みだ!? 要求はなんだ!?』

34 : 以下、?... - 2019/03/13 22:49:12.360 U216UaVZ0 20/30

「なぁに簡単なことです。夫を休ませてくれればいいんです」ニィッ

課長『わ、分かった……要求を飲もう!』

「賢明な御判断、感謝いたします」ガチャッ

「さ、これで休める。あとでゆっくりがんこちゃんでも見よう」

「ありがとう」

(手段を選ばぬ冷酷非情な交渉……さすがはプロだ)

37 : 以下、?... - 2019/03/13 22:54:21.372 U216UaVZ0 21/30

……

(今日は彼女のために、ケーキを買っていこう)

「ふんふ~ん」

ブロロロロ…

「ん?」

ブロロロロロロ…

「うわっ、車が突っ込んできた!」

ドカァンッ!

38 : 以下、?... - 2019/03/13 22:57:27.828 U216UaVZ0 22/30

―病院―

「いやー、参ったよ。飲酒運転の車が突っ込んできて、二週間は入院だってさ」

「君特製のスーツを着てなきゃ、もっと大怪我してたかもしれない」

「……無事でよかった」

「二週間、俺は家にいないし、お互いゆっくり骨休めしよう」

「ああ、そうさせてもらう」

「それにこの病院……看護婦さんがキレイだしさ。退屈しそうにないよ。なーんて」ムフフッ

「……」

39 : 以下、?... - 2019/03/13 23:01:14.326 U216UaVZ0 23/30

「体を拭いてあげる」

「こりゃどうも」

ゴシゴシゴシ…

「ん、痛いよ?」

ゴシゴシゴシゴシゴシ…

「いだだだだだだだだだ……!」

「……」ゴシゴシゴシ

(まさか……ヤキモチ!? プロは言葉でなく行動で示すということか……!)

40 : 以下、?... - 2019/03/13 23:04:25.776 U216UaVZ0 24/30

「やっと退院だ!」

「俺がいなかったから、ゆっくり休めただろう?」

「ええ、休ませてもらった」

「君はいつも俺以上に忙しそうだったから、よかったよかった」

(これで家がグチャグチャに散らかってたら、それはそれで面白いな)

41 : 以下、?... - 2019/03/13 23:07:44.546 U216UaVZ0 25/30

「久々の我が家だ……ただい……」

「!」

ピカピカ… キラキラ…

(ピカピカだ……!)

(妻の乱獲によって、埃どころか、ハウスダストすら絶滅してる……!)

(俺はいなかったのに……いくらでも手を抜いてよかったのに……)

「……」

(どんな時でもプロは仕事をおろそかにしない、ということか……! 俺も見習わないと)

43 : 以下、?... - 2019/03/13 23:11:12.242 U216UaVZ0 26/30

「いただきまーす」

「うん、やっぱり君の料理はうまいや」

「……」

「このところ、さまざまな社会問題が世間を騒がせている」

「あなたに怪我をさせた飲酒運転も、社会問題の一つといっていいだろう」

「ああ、そうだね」

(どうしたんだ、突然?)

44 : 以下、?... - 2019/03/13 23:14:43.399 U216UaVZ0 27/30

「社会問題といえば、少子化もそうだ」

「減ってるみたいだね、出生率。結婚しない人も多いみたいだし」

「今のままでは日本の人口はどんどん減ってしまう。なんとか解決せねばならない」

「たしかに……政府はもっと子供を産みやすい環境作りを推進して欲しいね」

「それでは寝るとしようか」

「うん」

(思いのほか社会派な食卓になったな……)

45 : 以下、?... - 2019/03/13 23:17:34.918 U216UaVZ0 28/30

「……ん?」

(寝室に……布団が一つ)

(これすなわち……!)

「さあ、社会問題を解決しようじゃないか」ゴロン

(なるほど、社会問題という伏線で外堀を埋めてから、一気に旦那を捕獲にかかる!)

(回りくどいが、確実に獲物を仕留められるやり方だ!)

(迫り方まで、プロフェッショナル……!)

48 : 以下、?... - 2019/03/13 23:21:44.325 U216UaVZ0 29/30

……

「今日産婦人科に行ったら、子供ができていた」

「さすがはプロ……! よくやった!」

「養育費のためにも俺、もっともっと頑張らないとな!」

「よせ、無理をすると体を壊すだけだ。そうなればお腹の子も悲しむ」

「でも……」

「それにお金なら心配することはない」

「え?」

50 : 以下、?... - 2019/03/13 23:24:12.879 U216UaVZ0 30/30

「あなたから貰った1000万……独自の財テクで増やしておいたのでな」パカッ

「まあ、子供を大学まで出すくらいなら問題あるまい」

「いつの間に……!」

(まったくアフターサービスまで万全とは、つくづく凄腕のプロだぜ……)







― 終 ―

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