―学校―
純「澪先輩、カッコいいなー」
梓「はいはい」
純「その態度は何さー」
梓「だって純ってば、最近ずっとそればっか。聞き飽きちゃったよ」
純「きっ、聞き飽きるほど言ってない!」
梓「言ってる」
純「むぅ……」
梓「だいたい澪先輩とそんなに話したこともないでしょ?」
純「そんなの関係ないもんっ」
元スレ
純「澪先輩を好きな気持ちなら誰にも負けないんだから!」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1281932261/
澪(よし、部活行くかっ)スタスタ
澪(あれ、あそこにいるのは……)
梓「純より私の方が澪先輩と仲良しだもんね」
澪(梓じゃないか。隣りにいるのは確か、鈴木さんとか言う……)
純「だから関係ない!」
梓「どうだかねー」
澪「おーい、梓ー」タッタッタッ
純「澪先輩を好きな気持ちなら誰にも負けないんだから!」
澪「」ビクッ
梓「えっ?」クルッ
澪「」サッ
純「だっ、だから、澪先輩を好きな気持ちは……」
梓「そうじゃなくて! 今だれかに呼ばれたような……」
純「え? 誰もいないじゃん」
梓「気のせいだったかなぁ?」
純「きっとそうだよ」
澪(えっ、なにっ? なんだっ?)ドキドキ
梓「それより純、今言ったのって……」
純「ん、何?」
澪(い、今のうちに逃げろっ!)ダッ
梓「それって……、本気で?」
純「本気だよ!」
梓「その『好き』ってのは……、恋愛的な意味で?」
純「え? んなわけないじゃん」
梓「そっかぁ。……良かった」ボソッ
純「え、なに?」
梓「ううんっ、なんでも」
―トイレ―
バタンッ
澪「ふぅ……」ドキドキ
澪(鈴木……純、って名前だったよな、確か。いきなりあんなこと言うからびっくりしちゃったよ……)
純『澪先輩を好きな気持ちなら誰にも負けないんだから!』
澪「なんで……」
唯「おトイレおトイレ~♪」ポテポテ
澪「なんで私のことが好きなんだよぉ……」
唯「むむっ」
唯(今の……澪ちゃん、だよね?)
澪「はぁ……」
唯(誰かが澪ちゃんのことを好き……?)
澪「あっ、部活行かなきゃ」
唯「はっ!」ダッ
ガチャッ
唯(にげろー)タッタッタッ
澪「あれ?」
澪(今だれかいたような……)
澪「……気のせいか」
梓「そろそろ部活行かなきゃ」
純「うん」
梓「へへーん。澪先輩にいろいろ教えてもらおっと」
純「あっ、梓はギターじゃん!」
梓「それでも教えてもらえることはあるもーん」
純「……ずるい」
梓「え?」
純「ずるい! 私は澪先輩と同じベースなのに!」
梓「純はジャズ研じゃん」
純「むむむ……」
―部室―
梓「――というわけで」
純「体験入部ですっ」
澪「」
律「いらっしゃーい!」
紬「今お茶の用意するわね~」
純「えっ?」
梓「ム、ムギ先輩っ、純は練習を見てもらいたくて来たんです!」
紬「見てもらうって……?」
純「澪先輩にです!」
澪「」ビクッ
澪「なななっ」アワアワ
律「あ? どした?」
澪「わたっ、私は……」
純「よろしくお願いします! 澪先輩っ!」
澪「いやー!」
純「えっ……」
澪「いやっ! ちがくてっ」オロオロ
梓「澪先輩?」
律「鈴木さん、ごめんなー。澪のやつ人見知りが激しくて」
純「でも、前に話した時は普通に……」
紬「きっと体調が悪いのよ~」
律「んなバカな……」
澪「そ、そうなんだ! ちょっと具合が……」
律「えっ、あ、そうなの? じゃあ保健室でも行くか?」
澪「う、うーん……、それは」
純「あ、じゃあ私が付いて行きますっ」
澪「いや律、頼む、付いて来てくれ」
律「う、うん」
ガチャッ
唯「遅れちゃったあ! ごめんね~」
唯「およ?」
律「おっ、唯か。わりーんだけどさ、ちょっと今から澪を保健室に連れて行くから待っててくれ」
唯「うん。分かったぁ」
律「鈴木さん、ごめんなー」
純「えっ、いえ、いいんですよっ」
梓「り、律先輩っ、私も行きます!」
律「いやいや、私1人で十分だよ」
梓「でも……心配です」ボソッ
澪「え?」
梓「あ、いやっ、何でもないですっ」アセアセ
律「じゃあ、ちょっと行って来るよ」
ガチャッ バタン
梓(澪先輩……)
紬「?」
紬(梓ちゃん、もしかして……)
唯「ちょうどよい」
梓「えっ?」
純「どうかしたんですか?」
唯「ふっふっふ、私は今日、澪ちゃんの重大な秘密を知ってしまったのです」
梓「澪先輩の……秘密?」
純「な、なんですか?」
唯「知りたい?」
梓純「知りたいですっ!」ズイッ
紬(あらあら)
唯「じゃあ言っちゃおー」
梓純「」ゴクリ
唯「実はね……、澪ちゃんのことを好きな人がいるらしいよ~」
梓純「ええっ!」
紬「あらぁ……」
~梓脳内~
梓(だ、誰かが澪先輩のことを好きぃ?)
梓(むぅ……)
梓(いったい誰が澪先輩のことを!)
梓(いったい私以外に……)
梓(誰が……)
梓(あれ?)
梓(私だー!)ガーン
梓(なんでっ、なんでバレちゃったの!?)アワアワ
~紬脳内~
紬(誰かが澪ちゃんを好き、ねぇ……)
紬(澪ちゃんは綺麗だし、無理もないわぁ♪)
紬(問題は『誰が』ってことだけど……)
紬「」チラッ
梓(私だー!)ガーン
紬(やっぱりね……)
純「唯先輩っ」
唯「ん?」
純「それは澪先輩の秘密ではないんじゃないんでしょうか?」
唯「?」
純「あー……つまり、澪先輩にとっては秘密とは言えない、というか……」
唯「え、え~」オロオロ
純「ま、まぁ、別にいいんですけど、その情報はいったいどこで?」
唯「トイレで澪ちゃんが言ってたのです! 『なんで私のことが好きなんだよぉ』って!」
純「なるほど……」
梓「ゆゆ、唯先輩?」
唯「え?」
梓「澪先輩は……その、誰から好かれてるかを知ってるんですか?」
唯「どうなんだろう? でもなんか澪ちゃん、困ってるみたいだった」
梓「」ガーン
純「そりゃそうだよ。だってさ、もしもその相手が女の子だったりしたら……」
紬「あら、性別なんて関係ないわ」
梓「……え?」
紬「確かに同性から好意を持たれてることを知ったら戸惑うかもしれない。けど、そんなの最初だけよ。大した問題にはならないわ」
梓「ムギ先輩ぃ……」
純「?」
唯「それにしても、誰が澪ちゃんのこと好きなんだろ?」
純「確かに気になります!」
唯「澪ちゃんが帰って来たら聞いてみよっか」
梓「いや、それは止めた方が……」
紬「そうよ。それに澪ちゃんが教えてくれるとは思えないし」
唯「そっかぁ……」
純「じゃあ、こっそり調べちゃえばいいんですよ!」
唯「ああっ! なるほどぉ!」
純「私すごく興味があるので知りたいんです!」
唯「じゃあ私と一緒に調べよう!」
純「はいっ」
唯「あずにゃんとムギちゃんはー?」
梓「い、いえっ! 私はいいです! プライバシーの問題で……」
紬「私も梓ちゃんと同じで遠慮しとくわー」
唯純「」ワイワイ
梓「はぁ……」
紬「梓ちゃん、大丈夫よっ」
梓「えっ! はい、何がですかっ?」
紬「さっきまで澪ちゃん、梓ちゃんにも普通に接してたじゃない?」
梓「え……、はい。それが……?」
紬「自分のことを『好きだ』と言う相手に、澪ちゃんが平気で接することができると思う?」
梓「! ……思えませんっ」
紬「だから澪ちゃんにはバレてないはずよ。梓ちゃんが澪ちゃんを好きだ、ってこと♪」
梓「は、はい、そうですね! ……って、ええええええ!?」
梓「なんで私が澪先輩のことを好きだって……」
紬「見てたら分かっちゃったぁ」
梓「そんなぁ……」
紬「大丈夫! 私は梓ちゃんに協力するわよっ」
梓「協力?」
紬「恋の成就の手助けよっ」
梓「」ゴクリ
紬「2人で頑張りましょ♪」
梓(ど、どうなっちゃうのぉ~?)
紬「それで、澪ちゃんのことを好きな人のだけど」
梓「はい! 澪先輩は誰かが自分に好意を持っていることを知っている。だけども私に接する様子から、その『誰か』は私じゃない」
紬「つまり、梓ちゃん以外の『誰か』も、澪ちゃんのことを好き……」
梓「むっ、ライバルです」ムッ
紬「誰かしら……」
梓「それじゃ、ライバルを探るのはあの2人に任せましょう!」チラッ
唯純「」キャッキャッ
紬「そうね。じゃあ私たちは、どうすれば梓ちゃんが澪ちゃんと仲良くなれるか考えましょうっ」
紬「うーん……」
梓「どうかしたんですか?」
紬「そういえば、さっき、澪ちゃん、鈴木さんに対してすごく変な態度だったなぁ、って」
梓「……言われてみれば、必死に避けようとしていたような」
紬「もしかして、梓ちゃんのライバルって鈴木さんなんじゃ……」
梓「いえっ、純は違いますよっ。人として澪先輩のことを尊敬してはいるけど、恋愛的な感情は持っていない、ってこの耳で聞いたばかりですから」
紬「あら、そうなの~」
梓「まぁ、ほんとにそうだったら澪先輩の態度にも納得ですけどね」
―保健室―
律「ほら、着いたぞ」
澪「うん……」
律「大丈夫かぁ?」
澪「律……、ごめん!」
律「えっ?」
澪「体調が悪いっていうの、嘘だったんだ!」
律「なにー!?」ガーン
澪「しっ、仕方なかったんだよぉ」
律「ん、どゆこと?」
澪「じ、実はな――」
律「鈴木さんが、澪のことを?」
澪「うん……」
律「いやぁ、ダメだ……」
澪「だ、だから困ってんだよ」
律「ははーん。だから鈴木さんが部室に来た時から様子がおかしかったんだなぁ?」
澪「……うるさい」
律「鈴木さんは、澪にバレてることを知らないのか?」
澪「うん、たぶん知らない」
律「ふーん」
澪「律ぅ……、どうすればいいと思う?」
律「どうするもこうするもなぁ。澪は鈴木さんのことどう思ってんだ?」
澪「ん……、そもそもあんまり話したことすらなかったし、嫌いってわけじゃないけど……」
律「ま、そりゃそうか」
澪「それじゃ……」
律「何も聞かなかったふりをするしかないな!」
澪「そんなぁ!」
律「いいんだよっ。もし告白でもされたら、その時にちゃんと断ればいいんだ」
澪「うーん、これからどう接すれば……」
―部室―
唯「澪ちゃんはファンクラブが出来るくらいの人気者ですからなぁ」
純「噂には聞いたことあります。やっぱりすごいなぁ……」
唯「どうして純ちゃんはファンクラブに入らないの?」
純「うーん……、なんかファンクラブってミーハーな人が集まりそうじゃないですか」
純「私はそういう人になりたくないんです! もちろん澪先輩のことは誰よりも尊敬してますけど、それゆえにです!」
唯「ふーん」
唯「澪ちゃんのことを好きな人って、純ちゃんじゃないよね?」
純「ち、違いますよ。好きは好きでも、私の『好き』は恋愛としての『好き』じゃありませんからっ」
唯「そっかぁ」
純「あの、なんでそんなことを……」
唯「んー、なんとなく」
純「とにかくっ、誰が澪先輩を好きなのか考えてみましょう!」
唯「そだね」
唯「誰だろ、りっちゃんとかじゃない?」
純「私に聞かれても……。普段から一緒にいる唯先輩の方が分かるんじゃないですか?」
唯「あっ、そっか。りっちゃんはねぇ、澪ちゃんのこと好きだけど、友達としての好きだと思うよ」
純「そうですか……」
唯「ムギちゃんも同じだよ、きっと」
純「じゃあ、梓はー……」
唯「ううんっ、あずにゃんは違うよ!」
純「えっ、なんで……」
唯「あずにゃんは違うのっ!」
ガチャッ
律「うーい、今けーったぞー!」
澪「なんで酔っ払いなんだ!」
梓「!」
唯「あー、りっちゃん、澪ちゃん!」
純「具合は大丈夫なんですか、澪先輩?」ズイッ
澪「ひぃっ! ……う、うん」
律(うはー、積極的な子だなー)
純「あの、それじゃ練習の方は……?」
澪「えっ、ちょっ!」
純「ダメ……、ですか?」
澪「うう……」
律(こりゃ、どうにかした方が良さそうだな……)
梓「きょ、今日は練習なしにしましょう!」
純「え?」
梓「ほらっ、澪先輩もまだ具合が悪いかもしれないし……」
律「うんっ、そうだな! 今日は解散だっ」
唯「ほいほーい」
紬「分かったわぁ」
純「は、はい……」
律「んじゃ、例によって私は澪を送って行くから、あとは適当にやっててくれい」
澪「それじゃあ……」
唯「バイバーイ」フリフリ
ガチャッ バタン
純「あーあ、残念だなぁ」
梓(やっぱり澪先輩と純が2人で練習するのなんて見たくないよ……)
紬「私たちも帰ろっか」
唯「そうだねぇ。時に純ちゃん!」
純「はいっ?」
唯「さっきの話の続きをしようじゃないか!」
純「分かりました!」
唯「それじゃ私の家に行こっか。憂もいるよー」
純「はい!」
梓「ムギ先輩、私たちもさっきの続きをっ」
紬「了解ですっ」
梓「私の家に行きましょう!」
紬「はーい♪」
―田井中家―
律「鈴木さん、すごく積極的だったなぁ」
澪「うん……」
律「見た目からしてそんな感じだったもんなー」
澪「うん……」
律「うん、こうなったらはっきり言うしかないな!」
澪「な、なんて?」
律「『私はあなたの気持ちには答えられません!』ってな!」
澪「ええっ」
律「だって、何もしないでいたら気まずいまんまだろ?」
澪「何も聞かなかったことにしよう、って言ったのは誰だよ……」
律「う、うるさいっ」
澪「でも、そんな一方的で大丈夫かなぁ……」
律「たぶんまた鈴木さんは練習に来るぜー?」
澪「んん……」
律「覚悟を決めるんだ、澪っ!」
澪「……うん」
澪「分かった! 明日、ちゃんと断るよ!」
―平沢家―
唯「ただいまぁ」
憂「あ、おかえりー。今晩ご飯作って……、純ちゃん?」
純「よっ」
唯「これから2人で大事な話なんだ~」
憂「へぇ、珍しいねっ。何について話すの?」
純「実はかくかくしかじかでさぁ」
憂「へぇ、澪さんが……」
唯「じゃ、始めますかぁ」
純「でも、何から考えていけばいいんでしょうかね?」
憂「私、ちょっと考えてみたんだけどっ」
純「なになに?」
憂「視点を変えてみたらいいんじゃないかな?」
唯「してん?」
憂「誰が澪さんのことを好きか考えるんじゃなくて、その人が澪さんのどこを好きになったのか考えるの!」
純「そんなんで分かるかなぁ?」
憂「うーん……たぶん」
唯「じゃあそれで考えよぉ」
唯「澪ちゃんの良いところ~。はいっ、純ちゃん!」ビシッ
純「えっと……、ベース上手い、髪が綺麗、スタイルが良い、後輩の面倒見が良い、おしとやか、あとはー」ブツブツ
唯「いっぱいあるねぇ」
憂「そんなに挙げられる純ちゃんって……」
純「今ので何か分かりましたか?」
唯「純ちゃんが澪ちゃんのこと好きってこと」
純「えっ」
憂「うん」コクリコクリ
純「ええええええっ」
―中野家―
梓「私、不安なんです」
紬「女同士だから?」
梓「……はい」
紬「梓ちゃんが思ってる以上に、同性を好きになる人は多いのよ?」
梓「澪先輩が受け入れてくれるかどうかは別の話です! 現に、澪先輩は困ってたらしいじゃないですかっ」
紬「それじゃ、いつまでも見ているだけ?」
梓「……それで悩んでるんですよ」
紬「例えば、梓ちゃんが澪ちゃんに告白したとして」
梓「は、はい」
紬「澪ちゃんは梓ちゃんを軽蔑するかしら?」
梓「みっ、澪先輩は……そんなこと……」
紬「うん。私も、澪ちゃんは梓ちゃんの想いを全部受け止めた上で、返事をすると思うわ」
梓「ムギ先輩……」
紬「澪ちゃんに限らず、軽音部のみんなね♪」
梓「私は……、告白した方がいいんでしょうか?」
紬「ふふっ、そういうことは自分で決めるべきじゃない?」
梓「……ムギ先輩の意見が聞きたいんですっ」
紬「そうねぇ。鈴木さんが澪先輩に練習を見てもらう、と言った時、梓ちゃんはどう思った?」
梓「えっと、最初は気にならなかったです。言葉は悪いですけど、澪先輩を自慢するみたいな気分になってて……」
紬「でも、いざ練習をする時、梓ちゃんは無理矢理練習をなしにしてもらった」
梓「やっぱり嫌だな、って思ったんです。分かりますよね? この感じ」
紬「ええ」
紬「そのうち、鈴木さんはまた部室に来るんじゃない?」
梓「たぶん……」
紬「その度に練習をなしにしてもらう?」
梓「う……」
紬「私に言えるのはここまでね。偉そうにベラベラと喋っちゃったけど、もともと梓ちゃんの恋に干渉する権利はないから」
梓「い、いえっ! 参考になります!」
梓「……おかげで、私、決めました」
紬「?」
梓「明日、澪先輩に告白します!」
―平沢家―
純「だからっ、私は澪先輩を尊敬してるだけで!」
唯「で、でもぉ」
憂「うん、澪さんのことを好きだとしか……」
純「う、憂までー」
唯「きっと自分じゃあ気付いてないだけなんだよっ」
純「え……」
憂「うんうんっ」コクリコクリ
純「そうなのかな……?」
唯「自分の胸に手を当てて考えてみなさいっ!」
純「は、はい……」ペタッ
─────────────
澪『おーい、純ー』
純『み、澪先輩!?』
澪『純!』ギュッ
純『澪先輩!』ギュッ
─────────────
純「うへ、うへへへ……」
憂「純ちゃん……?」
純「そうだ。私、澪先輩のことが……」
唯「やっぱり! 私は最初からそうじゃないかと思ってたもんね!」フンス
純「うわー、なんか恥ずかしくなって来たー」
唯「あれ? じゃあやっぱり澪ちゃんの言ってた人って、純ちゃんなんじゃ……」
憂「それは違うよ、お姉ちゃん。純ちゃんはたった今自分の気持ちに気付いたんだから、澪さんが知ってるはずないよ」
唯「そっかぁ」
憂「じゃあさ、その人は純ちゃんのライバルってことじゃない?」
純「むっ、ライバルか」ムッ
憂「純ちゃん頑張って!」
唯「私たちが応援するよぉ」
純「善は急げ」
憂「え?」
純「思い立ったが吉日!」
唯「?」
純「私、決めたっ!」
純「明日、澪先輩に告白するっ」
その夜
―鈴木家―
純「勢いに乗って告白することになっちゃったけど、不安になってきたー」
純「ライバルにも負けてらんないしなぁ」
純「……よしっ!」
純「寝ちゃおーっと」
純「……」
純「……」
純(眠れないぃ……)
―秋山家―
澪「……」
澪(眠れない……)
澪(なんて言えばいいんだろう?)
澪『ごめんな、私、鈴木さんとは付き合えないんだ』
澪(なんか上から目線だな……)
澪『ごめんなさい! 私、他に好きな人が……』
澪(……嘘はダメだよな)
澪(それじゃこんな感じは―――)
―中野家―
梓「澪先輩……」
梓(ちゃんと伝わるかな……)
梓「って、ダメダメ! 弱気になるなーっ」フルフル
梓「……」
梓「はぁ……」
梓「……」
紬『澪ちゃんは梓ちゃんの想いを全部受け止めた上で、返事をすると思うわ』
梓「んっ!」フンス
翌日
―学校―
唯「澪ちゃん澪ちゃん」
澪「どうしたんだ、唯?」
唯「実はね、今日の放課後、体育館の裏である人に会って欲しいんだ」
澪「えっ、放課後?」
澪(参ったな、放課後は鈴木さんと会わないといけないんだけど……)
唯「その人、どうしても話したいことあるんだってぇ。ダメかな?」
澪「えっと……、誰が?」
唯「それは言えないのです! ねっ、いいよね?」
澪「う、うん……分かった。少しだけだからな」
紬「澪ちゃん澪ちゃんっ」
澪「どうしたんだ、ムギ?」
紬「実はね、今日の放課後、体育館の裏に来て欲しいの。ダメかしら……?」
澪「ちょうど放課後、体育館裏に行くけど……」
紬「ちょうど良かったわぁ。梓ちゃんが話したいことあるんだって♪」
澪「梓が? なんだろう、部室じゃダメなのかな……」
紬「それがダメみたいっ。じゃあよろしくね」
澪「う、うん……」
澪(そうか、さっきの唯が言ってた『ある人』ってのは梓だったんだな)
―2年教室―
律「鈴木さーん」
純「えっ、はい!」
律「あのさ、今日の放課後って空いてる?」
純「えっ、今日はちょっと……。何かあるんですか?」
律「それがさ、澪が話したいことあるんだってよ」
純「澪先輩が!? ちょっ、ちょっと待ってください!」
律「ん?」
純(あれー、唯先輩、澪先輩になんて言ったのかなぁ……)
律「どうかな? 体育館の裏なんだけど……」
純「わ、分かりました! 行きます!」
放課後
―体育館裏―
唯「憂っ、いるー?」ヒソヒソ
憂「いるよ、お姉ちゃん」ヒソヒソ
唯「いやぁ、楽しみですなぁ」
憂「でも覗き見なんて後ろめたいね……」
唯「大丈夫だってぇ」
ガサッ
唯憂「」ビクッ
律「あれ?」
紬「あら?」
律「お前らっ、なんで!」
紬「みっ、みんな!?」
憂「皆さんここにいるってことは……」
唯「そっか! みんな今から何があるか知ってたんだねぇ」
律「へ? そーなの?」
紬「なぁんだ。私だけが知ってたわけじゃなかったのね♪」
憂「私も……、てっきり私とお姉ちゃんしか知らないのかと思ってましたっ」
唯「じゃあさじゃあさっ、せっかくだから、みんなで見守ってあげよーよ!」
律「そだなっ」ニカッ
紬「ええ」ニコッ
律「おっ、来た来た」
澪『』スタスタ
唯「来ました、ターゲットっ」
紬「驚くでしょうね~」
律「あ? 何言ってんだ?」
憂「あっ、来ましたよ! 今日の主役がっ」
紬「どこどこっ?」
純『』スタスタ
律「えー、主役ではないだろー」
紬「鈴木さん……? なんで?」
澪『や、やぁ、来てくれたんだな……』
純『こ、こんにちはっ』
澪純『……』
律「あちゃー、固まっちった」
憂「頑張って、純ちゃんっ」
紬「あの……、なんで鈴木さんが?」
澪『じー、実はー』
律「よしいけっ」
純『伝えたいことがあるんですっ!』
唯「よしいけっ」
澪『え……?』
純『えっとぉ……、実は!』
憂「お願いっ」
紬「待って! 本当の主役が来たわよ!」
唯「え?」
律「ここに誰が来るって言うんだよ?」
梓『』スタスタ
律唯憂「なっ、なんで?」
梓(澪先輩と……、純!?)
純『私、澪先輩のことが好きですっ!』
梓『え……?』
澪『えっ!』
唯憂「言ったぁっ!」
律「はあああ!?」
紬「えええっ!?」
梓『え……』
純『お願いしますっ!!』ペコッ
律「くそっ、先を越されたかっ」
紬「先を越されちゃったわ!」
唯「先?」
澪『私は……、今、鈴木さんに……』
梓『ま、待ってください!!』
純『あ、梓っ!?』
律「だからなんで!」
憂「梓ちゃんが入って来るのぉ!?」
梓『わたっ、私も!』
澪『え?』
梓『私も、澪先輩のことが大好きですからぁ!!』
紬「よしっ」
律「なあああ!?」
唯憂「えええっ!?」
澪『あれっ、えっ……、ちょっと!』
律「ああっ、澪がパニック状態に!」
唯「どおなってるの?」モンモン
憂「私にも分からないよ……」
梓『純……、やっぱりライバルは純だったんだね』
純『それはこっちのセリフ!』
梓純『『澪先輩は、渡さないっ!』』
紬「いいわぁ……」
梓『さぁ、澪先輩!』ズイッ
純『私か梓、どちらかを選んでください!』ズイッ
澪『私が……、今日伝えたいのは……』
律「澪が言うぞっ」
唯「もう難しくて分かんないよぉ」
澪『す、鈴木さんにっ!』ビシッ
純『!』パァァァ
梓『!』ガーン
澪『鈴木さんの気持ちには答えられない、って……!』
憂「ええっ!」
純『え……』
唯「なに? 純ちゃんフラれたの?」
純『そんなぁ……』
憂「純ちゃん……」
梓『じゃ、じゃあ!』
澪『そ、そして梓!』
紬「来たわぁっ!」
梓『は、はいっ!』パァァァ
澪『お前はっ……、なんだ!?』
梓『』
紬「」
律「うむ」
紬「そんな……」
梓『なんだ、って……。告白を……』
澪『こくっ、告白っ!?』
律「ダメだ、もう澪の頭は限界を超えてる!」
憂「こっちもですー!」
唯「うう~ん」ポワポワ
澪『わた、私、私は……』
純『澪先輩!』
澪『』ビクッ
純『どうして……、どうして私じゃダメなんですか!』
憂「純ちゃん……」
律「もっともな疑問だけど、今の澪には……」
澪『あ、いやっ! だってぇ……』
梓『私でもダメなんですか!?』
紬「梓ちゃん……」
律「ああー、またややこしく!」
澪『私にはっ!』
澪『私には、他に好きな人がいるんだー!』
梓純『えっ……』
律「ええええええっ!?」
梓『どっ、どういうことですか!?』
純『誰なんですか!?』
律「そんな……、澪……」ガクッ
唯「りっちゃん?」
紬「りっちゃん、まさか……」
澪『あー……、それはー、ほら』
梓『私の知ってる人ですか!?』
澪『私が好きなのはー……』
澪『……りつ?』ボソッ
律「」
梓『そん……な……』
純『そうですか……、分かりました』
澪『?』
純『私、澪先輩のことは忘れます! 律先輩には敵いそうもありません!』
澪『鈴木さん……』
憂「純ちゃんっ」ウルッ
梓『そんなの……、ズルイです!』ダッ
澪『あ、梓っ!』
紬「梓ちゃん!」
梓『もう知りません!』タッタッタッ
澪『まっ、待って!』
律「みおおおーー!!」ガシッ
澪「うわぁっ! って律!?」
紬「待って、りっちゃん!」バッ
澪「ムギ!?」
唯「待ってぇ」
憂「あっ、お姉ちゃんっ」
純「唯先輩! 憂!」
澪「お前ら見てたのか!?」
律「うわああん! 何が起きたのか分からないけど嬉しいよおおお!」ボロボロ
紬(りっちゃん、やっぱり……)
澪「梓が行っちゃって、……って放せよ!」
律「もう放さない!」ギュッ
唯「あずにゃん……!」ダッ
憂「お姉ちゃん、待って!」ダッ
純「あっ、ちょっとぉ!」ダッ
紬「ええ、良い流れよ」ダッ
律「みおー、みおー」ギュッ
澪「もうっ……、分かったよ」
律「あはっ」
梓「あーあ……」
澪『お前はっ……なんだ!?』
紬『澪ちゃんは梓ちゃんの想いを全部受け止めた上で、返事をすると思うわ』
梓(結局、私は向き合ってももらえなかったなぁ……)
梓「……」
梓「……んっ」
梓「……うっ、ああっ」グスッ
梓「……先輩ぃ……」ボロボロ
唯「あ~ずにゃんっ」ピョコッ
梓「んっ……、唯先輩?」
唯「えへへ~」
梓「なっ、何してるんですか、こんなとこで!」
唯「私ね、あずにゃんのこと好きだよ?」
梓「なっ!」
唯「私にギター教えてくれるし、よく怒るけど軽音部のこと考えてくれてるし」
梓「……やめてください」
唯「あずにゃんだ~い好き!」ギュッ
梓「やめて……くだ……」
梓「ううっ……」グスッ
梓「唯先輩ぃ……」ボロボロ
純「梓っ……」
憂「ふふっ」グスッ
梓「じゅ、純! 憂! なんで……」
律「おーい!」タッタッタッ
澪「あ、梓ー!」タッタッタッ
梓「みっ、澪先輩……」
澪「梓……、ごめん」
梓「えっ」
澪「私、さっきまで混乱しててさ……、なにも考えられてなかった」
梓「……はい」
澪「でも、勘違いしないでほしい! 梓が、その……告白してくれたことは、素直に嬉しかった!」
梓「え……」
澪「けど、私には……」
律「私がついてるのさっ」
澪「こ、こらっ」
梓「……ぷっ」
律「へっ?」
梓「あははははっ」
律「なーに笑ってんだよぉ」
梓「あはっ、すみませんっ」
澪「だから……」
梓「はいっ、私も……、澪先輩のことは諦めます!」
澪「梓……」
唯「あずにゃんには私がついてるもんね~。むちゅ~」ムチュー
梓「やっ、やめてください」
唯「ええっ」ガーン
紬「うふふふっ」
純「? どうかしたんですか、ムギ先輩?」
紬「ううん。ただ、いろいろあっても結局はこういう形になっちゃうのかなぁ、って」
純「こういう形?」
律「みおー、みおー」
澪「はいはい」
唯「あずにゃ~ん」ギュッ
梓「もっ……、少しだけですよ!」
純「なるほど……」
紬「うふふっ」
おわり