1 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 13:51:18.07 GGp02QeRP 1/54


   放課後 2年1組 教室

「あー、部活行くのだるいなー」

「え、どうして?」

「だって部活だよ、部活」

「楽しいじゃない、部活」

「はい?」

「はい?」



2 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 13:52:04.17 GGp02QeRP 2/54


「絶対変だよ、それ。だって部活だよ」

「純がおかしいんでしょ。私は軽音部が嫌って思った事は、一度もないよ」

「軽音部は、楽しそうだよね。みんな仲良いし、優しいし」

「そう、それっ」 びしっ




3 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 13:52:52.67 GGp02QeRP 3/54


「ジャズ研といっても結局は、部活のノリなのよ。先輩がいて、後輩はそれに従って。練習は厳しく、礼儀は正しく。返事は短く、はきはきと」

「最後のは良く分かんないけど、軽音部はそんな事無いよ」

「だーかーらー。それは、軽音部だからでしょ。一度ジャズ研に来て、私の代わりにやってみなさいって」

「純ちゃん。ゆっくりしてて良いの?」

「やばっ。と、とにかく、軽音部が羨ましい訳じゃないんだからね」 どたどたっ




4 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 13:53:44.30 GGp02QeRP 4/54


「行っちゃった。・・・軽音部って、そんなに緩いのかな?」

「純ちゃんが言うように、普通の部活よりは雰囲気が丸いよね」

(なんか、上手くごまかされた気がする)




5 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 13:54:42.49 GGp02QeRP 5/54


「私はジャズ研みたいに、しっかり練習もしたいけどな」

「軽音部でも、練習はしてるんだよね」

「まあ、一応は」

「その時、澪さんとかに怒られたりする?」

「怒られた事は・・・。無いのかな」

「純ちゃんの言った通りだね」

「もう、憂まで」 

「ごめん、ごめん。でも良い先輩に恵まれてるとは、私も思うよ」

「良い先輩、か」




6 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 13:55:36.54 GGp02QeRP 6/54


    軽音部部室

「今日はチーズケーキをホールごと持って来たの♪」 

「うわー♪これ、一人で食べきれるかな」

「さらっとぼけるな、おい」

「ムギ、こっちの瓶は?」

「フルーツソースよ。ずっと同じ味だと、飽きると思って」

「・・・私、このソースだけで十分幸せだよ」 ぺろぺろ
 
「突っ込もうかと思ったけど、私も同感だ」 ぺろぺろ




7 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 13:56:28.34 GGp02QeRP 7/54


「済みません、遅れました」

「よう。今日のデザートは、チーズケーキだぞ」

「こ、このサイズ?一人で食べきれますか?」

(本気っぽいから、突っ込まないでおこう) 




8 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 13:57:23.66 GGp02QeRP 8/54


「あずにゃん、あずにゃん。このソースも、美味しいよ」

「フルーツソースですか。・・・何故、指を」

「いいから、舐めてみんさい」

「もう、今日だけですよ」 ぱくり

「どう?」

「え、ええ。まあ、美味しいですね」 かーっ

「だよねー♪」

「うふふ」 きらきらっ




9 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 13:58:22.14 GGp02QeRP 9/54


「でも毎日お菓子を食べてると、太りそうでちょっと怖い・・・」

「だったら、澪のもーらい」 あーん

「ちょ、ちょっと。止めろー」 あむあむあむあむあむ

「おいおい、冗談だよ。ほら、慌てて食べるから頬に付いちゃったぞ」 ひょい。ぱくっ

「え。ああ、ありがとぅ・・・」

「本当、このケーキ美味しいなー」

「うふふ♪」 きらきらっ




12 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:00:12.40 GGp02QeRP 10/54


「主食だねー♪」 じゃ、じゃーん

「唯先輩、コード間違ってます。それと律先輩、リズム早すぎます」

「たはは、怒られちゃった」

「梓様は怖いの-。こわや、こわや」 ぶるぶるっ

「もう。二人とも、真面目にやって下さい」

「まあまあ。私も上手く弾けなかったし、もう一度やってみよう」

「演奏をサンプリングして、聞いてみる?」

「ああ。梓、それで良いか?」

「あ、はい」

「だったら、今のパートからもう一回な」

(もしかして、怒ってるのは私だけかも) たらー




13 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:01:08.63 GGp02QeRP 11/54


「ごはんー♪」 じゃーん

「今の、良かったんじゃないか」 

「あずにゃんがアドバイスしてくれたお陰だよ」

「軽音部は、梓無しでは成り立たないな」

「もう、またそういう事を」

「冗談、冗談。・・・ああ、申請書出すの忘れてた。ちょっと生徒会室行ってくるわ」 とたとた

「和ちゃんの所なら、私も-」 ぱたぱた

「だったら、私も行くぞ」 ぱたぱた

「行ってらっしゃーい♪」

(ムギ先輩は行かないのか。・・・でもって、二人きりか) 




15 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:02:00.48 GGp02QeRP 12/54


「私達も休憩しましょうか。お茶、淹れ直すわね♪」 ぱたぱた

「あ、はい。ありがとうございます」

「ふふふーん♪ふふふふーん♪」」

(ケーキ余ってるな。食べたいけど、さすがにソースを掛けても飽きてきたし)

「お待たせー」 こぽこぽ

「ありがとうございます。ケーキ、どうしましょうか。冷蔵庫に入れて・・・」

「えいっ」 ぐしゃっ

(ご、ご乱心ー?)




16 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:03:21.35 GGp02QeRP 13/54


「あ、びっくりさせちゃった?」 まぜまぜ

「それはその。ええ、まあ。はい」 あせあせ

「うふふ、ごめんなさい。ちょっと待っててね」 まぜまぜ

(なんか、すごい事になってきてるな。元々が美味しいから、問題はないんだろうけど)

「後は牛乳を少し足してと」 こぽこぽ、まぜまぜ

(まさか、これを食べろって言うのかな。問題はないんだろうけど、問題だよな) だらだら




17 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:04:14.98 GGp02QeRP 14/54


「最後にブルーベリーソースとオレンジソースをこう掛けてと」 さっ、さっ、しゃっ、すっ、さーっ

(うわ、なんかすごい手さばきっ。でもって、一気にアートな模様っ)

「お待たせー♪」

「なんだか、急にお洒落な食べ物になりましたね」

「味はどうかしら?うふふ♪」

「では、頂きます」 ぱくり



18 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:05:04.77 GGp02QeRP 15/54


(フルフルとした触感とチーズクリームのコク。それが牛乳で程良く押さえられていて、かつソースの配分が絶妙だっ)

「どうかしら?」

「すごい美味しいですっ」 はむはむ

「良かった♪ちょっとはしたないから普段はやらないんだけど、今日は特別にね♪」

「あ、ありがとうございます」

「梓ちゃんは、いつも素直で可愛いわね♪」

「は、はぁ」 かーっ




19 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:05:59.19 GGp02QeRP 16/54


(あー、色んな意味で堪能した)

「食器、片付けるわね」

「それは私が」

「だったら、一緒にやりましょうか♪」 ニコッ

「はいっ」 ニコッ




21 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:06:52.84 GGp02QeRP 17/54


 給湯室

「ふふふーん♪ふふふーん♪」 カチャカチャ

(後片付けなのに、楽しそうだな。お嬢様だからこういう性格なのかと思ってたけど、ムギ先輩だからこういう性格なんだろうな。優しくて、思いやりがあって、ちょっとへんてこで。でもって、良い匂いがして♪) くんか、くんか

「これで最後ね」 ふきふき

「はい。・・・ムギ先輩、このノートは?」

「持って来たお菓子の名前を書き溜めてるの。同じ物が続くとみんな困るだろうし、好みもあるから」

(そうだったのか。私は美味しい美味しいって、何も考えずに食べてただけなのに。偉いな-、やっぱり)




22 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:07:50.88 GGp02QeRP 18/54


「澪ちゃんはどちらかというと、洋菓子やケーキよね。りっちゃんは和菓子も好きかな」

「そう言われてみると、そうかも知れないです」

「唯ちゃんと梓ちゃんは何でも美味しそうに、一杯食べてくれるわよ♪」 ニコッ

(喜んで良いのかな、それ) たらー




23 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:08:48.66 GGp02QeRP 19/54


「それに、お菓子あっての軽音部でしょ」

「え?」

「ただ集まって演奏してても、みんながまとまるのは難しいと思うのよね。知り合ってばかりの時は特に」

「それはあるかもです」

「でもお茶を飲んでお菓子を食べてれば、自然に気持も解れて色んな事が話せると思うの。そうすれば演奏の事で注意する時でも、少し空気が柔らかくなるでしょ」

「そう言われてみれば」

「それに甘い物を食べながらみんなとおしゃべりするのって、すごい楽しいじゃない♪」

(結論は、やっぱりそれか。でも、私も同感だな) 




24 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:09:40.21 GGp02QeRP 20/54


 軽音部・部室

「あー、疲れた」

「お帰りなさーい♪」

「ムギ、悪い。生徒会室へ行って来てくれ。和が機材を運ぶとか言い出してさ。私はもう限界だ」

「任せて♪それで、唯ちゃんとりっちゃんは?」

「ガラクタに夢中で、私には付き合いきれない。それと唯は和と帰るらしいから、バッグとギー太も頼む」

「了解♪澪ちゃん、梓ちゃんの事よろしくね」 ぱたぱた

「ああ。本当、悪い・・・」

(滅茶滅茶疲れてるな)




25 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:10:45.96 GGp02QeRP 21/54


「はー・・・」 ぐたー

「お茶、持って来ましょうか」

「あずさー」 

「はい?」 

「あずさー。本当、ごめんなー」 うるうる

(何故、涙目) びくっ




28 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:11:40.71 GGp02QeRP 22/54


「ど、どうしたんですか。澪先輩」 あせあせ

「・・・梓。私達は、何部だと思う?」

「それは軽音部に決まってるじゃないですか」

「私達は、軽音部らしい活動をしてると思うか?」

「それはその。えーと、あれですよ、あれ」

「どれ」 ぎろっ

(私にも分かる訳がない)





29 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:12:36.26 GGp02QeRP 23/54


「本当、ごめんなー」 うるうる

(感情の揺れ幅が激しいな)

「私も分かってるんだよ。もっと練習をして、曲を作って、コンクールとかにも出ないと駄目だって」

「はぁ」

「分かってるんだよ、私だって。だけど、駄目なんだよ。本当に、あー」

(酔ってるのかな、、この人)




30 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:13:27.87 GGp02QeRP 24/54


「確かに私達は練習の時間は短いし、お茶を飲んでくつろいでる時間が長い。いわゆる部活としては、駄目なんだと思う」

「そう、なんでしょうか」

「だけどさ。こういう雰囲気だから出来る事や、分かる事もあると思うんだ」

「分かる事、ですか」

「ああ。厳しい指導やミスの追求で、技術は向上するかも知れない。でも私は、それで失ってしまう事もあると思うんだ」

「失う」




31 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:14:17.49 GGp02QeRP 25/54


「甘い考えかも知れないけど、私はそれを失う事の方が駄目だと思うんだよ。・・・抽象的で分かりにくいか?」 

「いえ、そんな事は」

「本当。私は駄目だな-」

(澪先輩は本当に真面目で、色々考えてるんだな。それに技術の向上よりも大切な事か。良い事言うな、やっぱり。それに、良い匂いがするし♪) くんか、くんか




34 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:15:06.91 GGp02QeRP 26/54


「梓も本当はバリバリ練習して、ガンガン曲とか作りたいだろ」

「そう思う時もありますけど。私も澪先輩と同じで、それよりも大切な事はあると思いますよ」

「あずさー」 うるうるー

「それに私は、今の軽音部が結構好きですから」

「そう、そうなんだよっ。唯がにこにこ笑ってて、ムギが楽しそうにお茶を入れて。律がぼけて私と梓が突っ込んで。それが私達の良さで、大切な事なんだよ。ぴゅあぴゅあ♪のふわふわ♪なんだよっ」 きらきらっ

(良い事言ったはずなのに、いまいち感動しないな。でもこういう純粋さが、優しい詞を作る源なんだろうな)




36 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:16:01.74 GGp02QeRP 27/54


「あー、ひどい目に遭った」

「冷蔵庫はどうなった?」

「ムギがひょいひょい運んでったよ。それと和が、ファンクラブの事で澪に聞きたいって」

「・・・私は帰った事にしてくれ」

「ファンの子が可哀想だろ。ほら、早く行った行った」
 
「分かったよ。私もこのまま帰るから、後の事頼むぞ」 

「わーった、わーった」

「お疲れ様でした」




39 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:16:52.91 GGp02QeRP 28/54


「さてと私達も帰るとするか。食器は全部洗ったか?」

「え、はい」

「楽器は全部良し、備品オッケー。これは唯の忘れ物と。後は火の元と戸締まりか。梓、窓の鍵閉めて」

「あ、はい」

「戸締まりよーじん、火のよーじん♪にばい、にばーい♪」

(何言ってるんだろう、この人)

「じぇしー♪」




41 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:17:44.38 GGp02QeRP 29/54


 商店街

「そこのお店、秋物のセールをやってますね」

「服か。しかし、すごい人だな」

「ええ、まあ」 ちら、ちらっ

「少し見てくか?」

「え?あ、はい」




42 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:18:35.87 GGp02QeRP 30/54


「やっぱり、とてつもなく混んでるなー。ま、50%オフなら仕方ないか」

(・・・あそこのシャツ、ちょっと可愛いかも。でも遠いー) ぐいぐい

「どうした。どれか欲しいのでもあるのか?」

「いえ、あの。その」 ちらっ

「・・・ちょっと待ってな」

「はい?」



43 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:19:27.78 GGp02QeRP 31/54


「はい、ごめんなさい。ごめんなさいよ」 ぐいぐい

(うわっ。人混みに、無理矢理割って入って行った。でも行けるかな、あそこまで)

(はい、はい。ごめんなさい。ちょっと通りますよ」 ぐいぐい

(あ、ワゴンまで辿り着いた。・・・でも、私の欲しい物がどれかなんて)

「これだな」 ひょい

「あ」




44 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:20:19.89 GGp02QeRP 32/54


「ふー、疲れた」

「あ、あの。お疲れ様です」

「梓、ほれ」 ぱさっ

「あ、あの」

「ん?欲しいのと違ってたか?」

「い、いえ。私が欲しかったのは、このシャツです」 きゅっ

「そりゃ良かった。早く、レジへ行ってこいよ」

「はいっ」 とたとたっ




46 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:21:10.19 GGp02QeRP 33/54


 商店街

「でも、どうしてこのシャツだって分かったんですか」

「合ってたのなら、それで良いだろ」

「そうですけど」

「私も一応は梓の先輩だからさ。そのくらいは、お前の事を見てるって」 撫で撫で

「律先輩」 ぽー

「たはは。なんか、柄にもない事言っちゃったな。今の無し無し」

(普段はおちゃらけてるけど、すごい気が付くしみんな事を見てるんだよね。・・・私の事も。さりげなく優しくて、でもそれを全然表に出さなくて。それに、良い匂いがするし♪) くんか、くんか




47 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:22:01.47 GGp02QeRP 34/54


「・・・律先輩は部長として、今の軽音部をどう思ってますか」

「なんだ?澪に泣き付かれたか?」

「え、いえ。その」 あせあせ

「確かに今の軽音部は緩いけどさ。厳しい唯やムギなんて想像も出来ないだろ」

「まあ、それは」

「・・・唯、お前何度コード間違えたら気が済むんだよっ。澪、顔伏せないで、前を見ろっ。ムギ、笑ってる場合じゃないぞっ」

「え」




48 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:22:51.16 GGp02QeRP 35/54


「なんて事になったら、困らないか?」

「それは、はい。分かります」

「多分澪から聞いてるだろうけど、厳しければ良いって物でも無いと思うんだ」

「はぁ」

「大体唯やムギの顔を見て、どうやって怒るんだよ。子猫を叱るより勇気がいるぞ」 にこっ

(良い事言うな、やっぱり。おでこが夕日に輝いてるよ)




49 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:23:41.68 GGp02QeRP 36/54


 夜・コンビニ店内

(卵なんて、明日買えば良いのにな)

「あれ、あずにゃん?」

「あ、唯先輩。ジュースでも買いに来ましたか?」

「どうしてもおでんが食べたくなってね」

「おでん、ですか」

「すごいよね、今のコンビニは。おでんが年中無休、24時間売ってるんだから」

「あは。確かにそうかも知れませんね」




50 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:24:33.37 GGp02QeRP 37/54


店員「ありがとうございましたー」

うぃーん

「あずにゃんもどうぞ」

「良いんですか?」

「一緒に食べた方が美味しいからね」

「では、頂きます。・・・大根、良く染みてますね」

「うんうん。私はもう、思い残す事は何も無いよ」

「またそういう事を言って」 くすっ




51 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:25:23.88 GGp02QeRP 38/54


  公園内 ベンチ

「先輩、帰らなくて良いんですか。憂が心配しますよ」

「ん?私は大丈夫だよ。あずにゃんこそ、平気?」

「特に急いではませんから。・・・なんですか」

「なんだか、いつもと違うなと思って」

「そうでしょうか」

「なんとなくね。私の気のせいかな、たはは」

(さりげなく鋭いよな、唯先輩って。いつも温かくて、優しくて。ほんわかしてて。それに、良い匂いがするんだよね♪) くんか、くんか




52 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:26:15.89 GGp02QeRP 39/54


「先輩って、部活にどんなイメージがあります?」

「みんなで仲良く。いつも楽しく健やかに♪」

「はぁ」

「私は軽音部が初めての部活だから、今の雰囲気が部活のイメージなんだよね」

「でも世間一般の部活は違うじゃないですか」

「私はああいうの苦手だな。怒るのも、怒られるのも」

「誰でもそうでしょうけど、でも」

「あずにゃんは、ムギちゃんのお茶が好き?」




53 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:27:06.11 GGp02QeRP 40/54


「お茶、ですか?それは、勿論」

「澪ちゃんの詞は?」

「それも勿論好きです」

「りっちゃんの冗談は?」

「度が過ぎない時は」

「私も、そういうあずにゃんが好きだよ♪」

「先輩」




54 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:27:57.53 GGp02QeRP 41/54


「私はあずにゃんの先輩で、本当は色々教えて上げないと駄目なんだけどね」

「ええ」

「ギターやあずにゃんの方が上手いし、色々知ってるし。しっかりしてるから、私があずにゃんに教える事は何も無いんだよね」

「そんな事は」

「それにあずにゃんは後輩だけど、私は。私達は、あずにゃんと親友だと思ってるから」

「親友」

「だから私達は、仲良く楽しく健やかに。それで良いんだよ」

「・・・はい」 ニコッ




59 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:28:51.36 GGp02QeRP 42/54


   翌日・放課後、軽音部部室

「済みません。遅れ・・・」

「いい加減にしろ、このっ」 ぽかっ

「いてー、いてーよ。本当に叩くなよ」

「お前、また申請書を忘れただろ」

「ぴー♪ぴー♪ぴー♪」

「お前のせいで私が走り回って、みんなの前で謝って、あんな事やこんな事も。あーっ」




62 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:29:43.71 GGp02QeRP 43/54


「あの、遅れ・・・」

「お茶のお代わりはいかが?」

「はーい♪、私、はーい♪」

「はい、どうぞ」 こぽこぽ

「お菓子も美味しいしお茶も温かいし、言う事無いねー」 ぐたー

「本当ねー♪」 ぐたー




65 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:30:37.83 GGp02QeRP 44/54


「遅れ・・・」

「いてーよ、いてーんだよ。書類なんて、放っておけば誰かがやってくれるんだよー」

「お前が、全部お前が悪いんだ。ポストが赤いのも、雲が白いのも」 ぽかぽか

「なんだか、眠くなってくるよねー」 ぐたー

「もう、寝ちゃいましょうかー」 ぐたー

(・・・軽音部って、何?)




68 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:31:30.20 GGp02QeRP 45/54


「皆さん。ちょっといい加減に・・・」

「あの空が青いのは、どこまでも空が広いのは」

「もういっそ、詞にしろよ」

「お前はすぐにそうやって、混ぜ返すんだから。・・・でもまあ、イメージは湧いてくる」

「たまにはそういう、抽象的なのも良いんじゃ無いのか。ロケハンついでに、山に行ってみるか?」

「良いかもな、うん。君の瞳が澄んでいるから、空の青さはそれを映す・・・」

「全く」 くすっ




69 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:32:23.17 GGp02QeRP 46/54


「お客さん、凝ってますね」 もみもみ

「キーボードが、結構重いんですよー」

「それなのにお菓子も持ってきてくれるし。ムギちゃん、いつもありがとね」

「私が好きでやってる事だから。唯ちゃんも、いつも美味しそうに食べてくれてありがとう♪」

「てへへ。これからも、よろしくね♪」

「お菓子を?」

「もう、ムギちゃーん♪」

「うふふ♪」




70 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:33:17.10 GGp02QeRP 47/54


(・・・結局、いつもの先輩達。いつもの軽音部。あったかくて、柔らかくて。練習はあまりしないけど、でもやっぱり)

「あずにゃん、どしたの?」

「い、いえ。皆さん楽しそうだったので、ちょっと」

「なんだよ、それ。ほら、和三盆の干菓子あるぞ。食え食え」

「和三盆?」

「砂糖の一種で、変わった食感が楽しいわよ」

「はぁ」

「ほら、座って」

「あ、済みません」




71 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:34:08.80 GGp02QeRP 48/54


「では、頂きます・・・」 ぱくり

「どう?」

「あっさりしてて。口の中ですーっと溶けて。すごい爽やかなお菓子ですね」

「あずにゃんみたいだね」

「え」 ぽっ

「そうかー?梓は檄辛系のお菓子って感じだぞ」

「それを言うなら、お前は光物の魚だろ」

「なんだとー」

「まあまあ。私は好きよ、鯖とか秋刀魚とか」

「美味しいよね-、サンマの塩焼き」

(微妙にずれてるし、やっぱり練習しないし。でもこれが、私達なんだよね)




72 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:34:59.73 GGp02QeRP 49/54


「そろそろ練習するぞ。食器片付けろよ」

「え?」

「え?」 びくっ

「梓らしくない反応だな。まだお茶してたいか?」

「だったら、もう一杯どうぞ♪」 こぽこぽ

「い、いえ。そういう訳では全然」

「あ、そうだ」 ぽんっ




73 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:35:51.85 GGp02QeRP 50/54


「澪良いかー」

「いつでも」 ボーン♪ボーン♪

「ムギー」

「私もー」 チャラララー♪

「唯ー」

「オールオッケー♪」 じゃじゃーん♪

「よしー。ワン、ツー。ワン、ツッ、スリッ、フォッ」 タン、タン、タタタタッ


「・・・なーんで♪なんだろー♪」 じゃじゃーん♪




74 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:36:42.92 GGp02QeRP 51/54


(なんで私お茶飲んでるんだろ。どうして先輩達だけで演奏してるんだろ) ずずー

「どー♪しようかな♪」 ボローン♪ボローン♪

(でもこれが先輩達の言う、軽音部って事なのかな・・・) ずずー





75 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:37:33.96 GGp02QeRP 52/54


  翌日、2年1組 教室

「先輩の演奏を聴きながら、お茶を飲んでたー?」

「う、うん」

「あんた一体何やってんの。というか、軽音部って何なの。梓至上主義な訳?」

「いや、意味分かんないし。それに私も、さすがに反省してる」

「でも良いよね。演奏を聴きながらお茶を飲めるなんて」

「私だって聴きたいわよ。そんなのプラチナチケットどころの騒ぎじゃないでしょ」

「ジャズ研だと無理かな?」

「退部届を握りしめてたら、別れの曲くらいは演奏してくれるかもね」

(あながち、冗談じゃないんだろうな) たらー





76 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:38:30.86 GGp02QeRP 53/54


「あーあ、軽音部が羨ましいよ」

「とうとう言っちゃったね」 くすっ

「う。だって、そんなの誰だって羨ましいに決まってるじゃない」

「私もそう思うよ。梓ちゃんって幸せだよね」

「そうかな。ムギ先輩はぽわぽわしてるし、澪先輩は結構固いし、律先輩はおちゃらけてるし。唯先輩はあんな調子だし」

「だったら、ジャズ研の方が良い?」

「まさか。私は軽音部が好きだから。先輩達のいる軽音部がね♪」



                                                  終わり






77 : 以下、名... - 2010/09/26(日) 14:39:22.82 GGp02QeRP 54/54


ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

私も部活に対するイメージは、上意下達。先輩絶対の縦社会。
先輩は神で、後輩は奴隷。下僕みたいなノリ(偏見込み)。
実際の軽音部は文化系なので多少緩いのでしょうが、純が言うように先輩後輩の壁は存在するでしょう。
テーマはやはり憂の言うように、「梓は良い先輩に恵まれてる」ですね。



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