男「はじめまして」
飼育員「はじめまして」
男「こちらは日本で唯一、絶滅危惧種である暴力ヒロインの飼育に成功した施設と聞いておりますが」
飼育員「ええ、そうです」
男「ここに至るまでの間、さまざまなご苦労があったと存じます」
男「本日は色々とお話を伺わせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします」
飼育員「こちらこそよろしくお願いします」
飼育員「ではさっそく、参りましょうか」
元スレ
飼育員「絶滅寸前の“暴力ヒロイン”の飼育に成功したので取材を受けることになった」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1571137246/
暴力ヒロイン「……」ノッシノッシ
飼育員「あれが暴力ヒロインになります。当施設で飼育しているうちの一人です」
男「わぁっ、可愛いですね! まるでアイドルみたいだ!」
男「とても暴力を振るうようには見えませんよ!」
飼育員「……」
飼育員「中に入られますか?」
男「よろしいんですか? だったら是非!」
飼育員「ただし、入る時には必ずプロテクターをつけて下さい」
男「プロテクター?」
飼育員「はい、危険ですから」
男「……結構ごついですね。本当にこんなのつける必要あるんですか?」カチャカチャ
飼育員「ええ、我々でさえ直接接する時は必ずつけています」カチャカチャ
飼育員「では入りましょう」ガチャッ
男「お邪魔します」
暴力ヒロイン「!」ピクッ
暴力ヒロイン「なんなのよあんたら!」
暴力ヒロイン「勝手に人の部屋に入ってきて一体どういうつもりよ!?」
男「うわっ! す、すごい!」
飼育員「近づくとまず、ああやって威嚇をするんです」
暴力ヒロイン「あら、あんた見ない顔ね」
男「ど、どうも」
暴力ヒロイン「なんなのその挨拶! なめてんの!?」ブンッ
男「わっ!」
飼育員「攻撃が始まりました。しかし、プロテクターをつけているので大丈夫です」
暴力ヒロイン「なにボソボソ喋ってんのよ! 聞いてんの!?」
男「すごい迫力だ……!」
飼育員「まだ小手調べです。そろそろ本格的に攻撃してきますよ」
暴力ヒロイン「無視してんじゃないわよ!」ドカッ!
男「うおっ!」
暴力ヒロイン「こんなもんつけて……この臆病者がっ!」ドガッ! ドガッ!
男「わわっ! わっ!」
男「プロテクターつけてるのに、メチャクチャ響いてきますね!」
飼育員「基本的に手加減を知りませんからね、彼女らは」
男「友好的にお話しを……」
暴力ヒロイン「なぁ~にが友好的によ! このヘタレ! マヌケ! 甲斐性なし!」ドカッ! ドカッ! ドカッ!
男「ひっ!」
男(メチャクチャ怖い……!)
暴力ヒロイン「引っかいてやる!」バリバリバリッ!
男(プロテクターがなきゃ今頃顔面はズタズタだ……!)
男「なんて獰猛さだ! 虎やライオン以上……!」
暴力ヒロイン「だぁ~れが獰猛ですってぇぇぇぇぇ!?」
暴力ヒロイン「こんのぉぉぉぉぉ!!!」ドカッ! ドカッ! ドカッ!
男「ひいいいい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
飼育員「こうなるともう手がつけられません。この辺にしておきましょう」
男「は、はいっ!」
暴力ヒロイン「逃げる気!? 待ちなさいよっ!」
飼育員「いかがでしたか?」
男「いやー、予想以上でしたね」
男「あんな可愛い子が、あんなに豹変して襲いかかってくるなんて……」
男「怪我をされた飼育員の方も多いんじゃないですか?」
飼育員「ええ、飼育当初は何人もの飼育員が怪我させられ、病院に送られました」
飼育員「私も餌をやる時、肋骨を折られたことがあります」
男「凄まじいですね……」
飼育員「しかし、あの個体はまだいい方です。素手で攻撃してきますから」
男「というと?」
飼育員「中には武器を用いて攻撃してくる個体もいるんです」
男「想像したくありませんね」
男「それにしても、どうして暴力ヒロインは絶滅危惧種になってしまったんでしょう?」
飼育員「かつて、ちょっと言い方は悪いですが、今より野蛮だった時代は」
飼育員「一般市民たちにも彼女らの暴力を受け入れる素地がありました」
飼育員「それどころか、彼女らの暴力を楽しむ文化もあったようです」
男「そうなんですか!」
飼育員「しかし、時代が進むと、次第に我々の社会は暴力というものを忌避するようになっていきました」
男「そうですね、殴って解決するなんてのがまかり通ったら、法律や条例の意味がありませんから」
飼育員「当然、暴力を振るう彼女らの存在は疎ましくなっていったんです」
飼育員「結果、暴力ヒロインは次々と猟師に狩られ……」
猟師『見つけたぞ、殺せ!』ズキューンッ!
暴力ヒロイン『なにすんのよ!』
猟師『もう一発!』ズキューンッ!
暴力ヒロイン『あぐぁっ!』
飼育員「瞬く間に絶滅寸前まで追い込まれたわけです」
男「なるほど……」
飼育員「しかし近年、他の絶滅危惧種の例に漏れず、暴力ヒロインを保護しようという動きが出てきました」
飼育員「この施設もそういった気運から生まれたのです」
飼育員「ご覧になった通り、暴力ヒロインの飼育は極めて困難なのですが――」
飼育員「思考錯誤を重ねた結果、どうにか今の段階までたどり着いたというわけです」
男「ではまだ途中段階であると?」
飼育員「もちろんです。飼育はもちろん、野生に戻せるかの試みや繁殖など、課題は山積みです」
飼育員「本日は課題の一つである、繁殖についての試みもご覧いただきましょう」
男「繁殖というと当然、オスを用意するんですよね?」
飼育員「ええ、まずこちらのオスです」
草食系主人公「よろしくお願いします」ニコッ
男「わっ、イケメンだ! 真面目そうで、それでいていざとなるとやりそうな感じですね!」
飼育員「ええ、今現在もっとも主流な主人公の一つです」
飼育員「大人しいので飼育しやすく、能力も高く、極めてバランスが取れた個体です」
飼育員「我々としても暴力ヒロインのいいパートナーになると思ったんですが……」
男「が?」
飼育員「ご覧になった方が早いでしょう。今からこの草食系主人公を部屋の中に入れます」
草食系主人公「やぁ」
暴力ヒロイン「なによアンタ!」
草食系主人公「これから一緒に暮らすことになった……」
暴力ヒロイン「なんでアンタなんかと一緒に暮らさなきゃいけないのよ!」バキッ!
草食系主人公「うがっ!」
男「うわっ、いきなり!」
飼育員「草食系主人公が大人しいのをいいことに、理不尽な暴力を次々加えていくわけです」
草食系主人公「僕が何をしたっていうんだ!」
暴力ヒロイン「うるさいわね! 大人しく殴られなさい!」ドカッ! バキッ! ドゴッ!
草食系主人公「うわぁぁっ……!」
男「これ、もうただのリンチじゃないですか! 草食系主人公はなんの非もないのに!」
飼育員「ええ、凶暴な暴力ヒロインと大人しい草食系主人公の相性は最悪だったわけです」
飼育員「そろそろ危険なので、草食系主人公を外に出しましょう」
飼育員「いかがでしたか?」
男「なんていうか、見ていて胸糞悪くなりましたね」
男「草食系主人公が可哀想で可哀想で……」
飼育員「そうなんです。残念ながら草食系主人公ではいいパートナーにはなりませんでした」
飼育員「そこで登場するのがこのスケベ主人公です」
スケベ主人公「ちいーっす」
男「うーん……さっきの草食系主人公に比べるとイマイチ頼りなくて、だらしなさそうな……」
飼育員「では今度はスケベ主人公を中に入れてみましょう」
スケベ主人公「お、いい女!」
暴力ヒロイン「なによ!」
スケベ主人公「お尻さわっちゃお!」ナデッ
暴力ヒロイン「キャーッ! エッチーッ!」バチンッ!
スケベ主人公「ぶほっ!」
男「……」
飼育員「いかがです?」
男「なんていうか、安定感があるやり取りですね。80年代的な懐かしさを感じられます」
飼育員「そうでしょう」
暴力ヒロイン「バカ! スケベ! 最低っ!」ドカッ! バキッ! ドカッ!
スケベ主人公「いてて……つれないなぁ」
スケベ主人公「だけど俺は懲りないもんね~」モニュッ
暴力ヒロイン「きゃあああああっ!」
男「スケベに対してヒロインがやり返す、という構図なので不快感がないし、見てて面白いですね!」
男「まるで夫婦漫才だ! 全然飽きませんよ!」
飼育員「そうなんです。実はスケベ主人公こそが、暴力ヒロインを最も生かせるパートナーなのです」
飼育員「しかし、これにも問題はありましてね」
男「どのような?」
飼育員「スケベ主人公も絶滅危惧種なんです」
男「あ……」
飼育員「近年のセクハラ防止、わいせつを取り締まる時代の流れに押され、すっかり数を減らしましてね」
飼育員「生きのいい個体を確保するのも一苦労なんですよ」
男「たしかに……今やボディタッチどころか言葉一つで懲戒免職になりかねない時代ですからね」
飼育員「そういった時代の流れの中、なんとか暴力ヒロインにはよいパートナーをあてがっていきたいです」
男「さて、今後はどのような活動をなさっていく予定ですか?」
飼育員「暴力ヒロインの飼育と並行して、暴力ヒロインの良さを再確認して頂くための啓蒙活動を行い」
飼育員「少しずつ暴力ヒロインに理解を示して下さる人を増やしていきたいです」
飼育員「そして、暴力ヒロインの数を回復させていき、いつか絶滅危惧種と呼ばれないようにしたいですね」
男「本日はどうもありがとうございました」
飼育員「ありがとうございました」
― 終 ―
マイナーだが「深山さんちのベルテイン」の暴力ヒロインのおそらく仕返しも覚悟しているであろう動機好き