澪「なあ、律…私明日から桜ケ丘高校に通うんだ」
律「…」
澪「お前と一緒に行くって約束したよな…」
律「…」
私が話しかけているのはうさぎのぬいぐるみ、名前は律
これは去年の夏、どこかへ転校してしまった親友の名前だ
彼女が転校してしまってから私はこのぬいぐるみを通して声が届くように
毎日話しかけている
学校であったこと、家族のこと、彼女の家族のこと…
細かいことでも何でも話している
澪「律…お前は今どこにいるんだ?両親から離れて私に内緒で転校なんてさ…」
律「…」
澪「日本国内かな?それともイルクーツクにでも転校したのかな?」
律「…」
澪「そうだ!私高校で軽音部に入ろうかと思ってるんだ!」
澪「ビックリだろ?でも約束したからな『一緒にバンドやろう』って」
律「…」
澪「どうせお前がいたら私が文芸部に入りたいって言っても
ムリヤリ軽音部にされてただろうし…」
澪「お前が帰ってきたときに私が迎えてやらないとだしさ!」
律「…」
澪「お前が帰ってきたときには有名なベーシストになってるかもな」
律「…」
澪「あ、今お前笑っただろ!いいじゃないか、夢を語るぐらい!」
律「…」
澪「じゃあ、明日も早いしおやすみ、律…」
律「…」
澪「軽音楽部は廃部したんですか!?」
さわ子「まぁ、一応4人集まれば活動できるけど…」
澪(私一人で人を集めるなんて恥ずかしいなぁ…でも…)
澪「じゃあ私一人で頑張ってあと3人集めます!」
さわ子「頑張ってね」
澪(私一人でもやってやる!)
──────────
澪「なぁ律~…私どうしたらいいんだろ…」
澪「4月中にあと3人部員集めなきゃいけないんだってさ」
澪「お前だったら『私が部長だー』とか言って盛り上がるんだろうなぁ」
律「…」
澪「でもまぁ…やらなきゃどうにもなんないよな!私頑張るよ!」
律「…」
澪「愚痴聞いてくれてありがとうな、律…おやすみ…」
律「…」
澪「今日も誰も来ないな…」
澪「律…」
ガラッ
紬「あの~、見学に来たんですけど~」
澪「あ…軽音部ですか!?」
紬「いえ…合唱部の…」
澪「あ…すみません、大きい声出しちゃって…」
紬「お一人なんですか?」
澪「まぁ…わけあって今は一人です」
紬「じゃあ私、軽音部に入ろうかしら」ニコッ
澪「え…いいんですか?」
紬「キーボードぐらいしかできませんけど♪」
澪「ありがとう!これであと2人か!」
紬「?」
澪「ああ、4月中にあと2人入らないと廃部になっちゃうんだよ」
紬「そうなんですか…じゃあ作戦会議しませんか?」
澪「作戦会議?」
紬「私、会議とかするのが夢なんです♪」
澪「へぇ~、じゃあ近くのファーストフードでも…」
紬「ファーストフード!?すごい!!」
澪「…え?」
紬「あ…私ファーストフードに行くのも夢なんです♪」
澪「…そうなんだ(変な子だなー)」
紬「うふふ♪ポテトも一緒にどうですかって言われちゃった♪」
澪「そんなに珍しいの?」
紬「中学まではあまり自由に外に出られなくて~」
澪「お嬢様も大変なんだな」
紬「で、どうします?」
澪「う~ん、とりあえず…もっと親しくなろう!」
紬「え?」
澪「あだ名で呼び合ったり、敬語とか使わないで話そうよ」
澪「和気あいあいとしてたほうが他の人が入りやすいんじゃない?」
澪(律だったらこういうこと言いそうだよな)
紬「いいですね!…じゃなくて、いいわね!」
澪「じゃあ琴吹さんのことはムギって呼ぶことにしよう」
紬「素敵♪あだ名で呼ばれるのも夢だったの!」
澪「夢が多いな」
紬「秋山さんは…澪ちゃんでいいかな?」
澪「もっとみっちゃんとかあだ名っぽいほうがいいんじゃない?」
紬「澪ちゃんは…澪ちゃんって感じがするから♪」
澪「それはよく分かんない」
──────────
澪「なあ律…今日部員が増えたんだ」
律「…」
澪「すごいお嬢様でさ…世間知らずでほわほわした可愛い子なんだ…」
澪「ファーストフード行っただけですごい盛り上がったんだ」
澪「帰ってきたらお前にも紹介するよ」
律「…」
澪「明日も部員増えるといいな…じゃあおやすみ、律…」
律「…」
澪「来ないな」
紬「来ないわね~」
澪「どうすれば来るんだろうな…特典でも付ける?」
紬「特典?別荘とか車とか?」
澪「どんだけ豪華なんだよ…お菓子とかかな?」
紬「あ、お菓子と言えば今日お菓子持ってきたの♪二人で食べようと思って♪」
澪「え、いいの?」
紬「うん♪貰いものなんだけど多くて処理しきれないの~」
澪「うわ!すごい高級そうなお菓子!」
澪「ポスターでも作るか」モグモグ
紬「いいですね♪どうせ二人じゃ練習できないし」モグモグ
澪「ポスター作るのは夢じゃないのか?」
紬「うふふ♪ポスターぐらい作ったことあるわよ~」
澪「ははは、基準がわかりにくいんだよ」
紬「澪ちゃん…絵が小さすぎない?」
澪「う…自分の絵が張られるとか恥ずかしくて…」
紬「大丈夫、私のと一緒に張りましょう♪」
澪「うん…今度は大きく描く!」
紬「澪ちゃんは絵が上手なんだからもっと自信を持って♪」
澪「…」
紬「…澪ちゃん?」
澪「褒めないで…恥ずかしくなるから…」
紬「澪ちゃんって可愛いわよね♪」
澪「!…」カァァ
紬「あ、ごめんね~♪」
──────────
澪「律、今日はムギにからかわれちゃったよ…」
律「…」
澪「あ、ムギっていうのは昨日話してたお嬢様な」
澪「私、律以外からからかわれるの慣れてないからな、黙り込んじゃったよ」
律「…」
澪「妬いてるのか?ははは、ムギはいいやつだぞ~」
澪「お前にも会わせたいな」
律「…」
澪「じゃあ、おやすみ」
律「…」
さわ子「秋山さん、新入部員が入るって!」
澪「本当ですか!?これであと一人ですね」
さわ子「でももう4月も終わっちゃうし…あんまり期待しすぎないほうが」
澪「いえ、私は最後まで諦めません!」
さわ子「そう、じゃあ頑張ってね」
澪「新入部員か~、どんな人なんだろ…」
唯「こ、こんにちは…」
澪「あなたが新入部員の平沢さん?」
唯「は、はい…」オドオド
澪「いや~、もうダメかと思ってたよ!今月中に4人集まらないと廃部になるんだ」
唯「あ、あの…」
紬「はい、お茶♪」
唯「ど、どうも…」
唯(どうしよう…すっごい断りにくい…)
紬「それで、平沢さん楽器は何やってるの?ギター?ドラム?」
唯「…ごめんなさい!軽音楽部ってもっと違う感じの音楽だと思ってて…」
澪「じゃあ何ができるの?」
唯「カスタ…ハーモニカとか!」
紬「はい、ハーモニカ♪」サッ
唯「ごめんなさい!嘘です!」
唯「本当はやめますって言いに来たんです!ごめんなさい!」
澪「そうか…じゃあ仕方ないな」
紬「いいの?澪ちゃん…」
澪「仕方ないさ、無理に引き止めるのは良くない」
澪(律ならやりそうだけど)
唯「本当にごめんなさい…」
澪「そんなに謝らないで…そうだな、記念に一曲聴いてってよ」
唯「私のために演奏してくれるの?」
澪「ムギ、いいよな」
紬「がってん!」
~♪
唯「…」
澪「どう…だった…?」
紬「楽器も少ないけど…」
唯「なんていうか、すごく言葉にしにくいんだけど…」
唯「あんまりうまくないですね!」
澪(バッサリだーーー!)
唯「でもすごく楽しそうな感じが伝わりました!私、やめるのやめます!」
紬「ホント?ありがとう♪」
唯「私でもできそうだったし!」
澪「う…」
澪「これであと一人か」
紬「どうしましょうか…」
唯「…私が友達に入ってもらうよ!」
澪「いいのか?」
唯「うん、和ちゃんならきっとオッケーだよ!」
紬「ありがとうね、平沢さん♪」
唯「唯でいいよ~」
澪「じゃあ私は澪でいいよ、唯」
紬「私はムギって呼んで♪」
唯「わかったよ、澪ちゃん、ムギちゃん!」
──────────
澪「今日3人目の部員が入ってな!平沢さん…唯っていうんだけど」
澪「なんかほわっとした人だったんだ~」
律「…」
澪「うーん、律みたいな奴が一人くらいいたほうがいいのかもな…」
律「…」
澪「まぁゆっくりやっていくさ、おやすみ」
律「…」
唯「ってわけでさ~、和ちゃん軽音部入らない?」
和「うーん、私は生徒会に入りたいし…」
唯「かけもちでもいいからさ~」
和(唯がせっかくやる気になってるのに廃部になったら唯がニートになっちゃう…)
和「…仕方ないわね、他の人が入るまでよ」
唯「わ~さすが和ちゃん!ありがとう!」ダキッ
和「ちょっと唯、いきなり抱きつかないでよー」
唯「というわけで新入部員の和ちゃんです!」
和「よろしく」
澪「よろしく(唯の友達なのにしっかりしてる感じだな)」
紬「じゃあ早速お茶にしましょう♪」
和「え、練習は?」
澪「あー、まずお茶しながらでも唯と真鍋さんの楽器を決めよう」
澪「とりあえず欲しい楽器はギターとドラムだな」
唯「どっちがいいかなんて分かんないや…」
和「実際に見てきたほうがいいんじゃない?」
紬「じゃあこのあとみんなで見てきましょうか♪」
唯「うん、そうしよう!」
唯「うわ~、楽器がいっぱいだね!」
澪「安い楽器はこっち側だけど…って」
唯「このギター可愛い…」ジー
和「唯、そのギター25万もするわよ」
唯「私のお小遣い50ヶ月分…」
澪「それは無理だと思うな」
唯「わかってるんだけど~…」
紬「じゃあみんなでバイトしてそのお金で買いましょう!」
唯「そ、そんな悪いよ~…」
和「いいの?琴吹さん」
紬「私バイトするのが夢だったの♪」
澪「これも軽音部の活動の一環だと思えばアリだな」
唯「二人とも…ありがとう!」
和「ごめんね、唯のために…」
──────────
澪「律、今日も色々あったんだ」
澪「まず部員がやっとそろったんだ!これで廃部にならなくて済むぞ!」
律「…」
澪「今日入った人は和さんって言ってさ、結局ドラムやることになったんだ」
澪「素質とかはまだ分からないけど、次にお前に会うときはどっちが上手いかな?」
澪「なんてな!」
律「…」
澪「明日も楽しみだ、じゃあおやすみ、律」
律「…」
唯「何のバイトがいいかな~?」
和「ティッシュ配りとかファミレスとかが普通じゃない?」
紬「素敵~♪」
澪「ぅ…(接客業は恥ずかしい…)」
唯「澪ちゃん?」
澪「あ…い、いや、いいと思うよ!コンビニもファミレスも!」
唯「ごめんね…無理しなくていいから…」
澪「いや…やる前から諦めちゃダメ…私、何でもやるよ!」
紬「あ!これならどう?」
和「交通量調査…これなら大丈夫じゃない?」
唯「んじゃそれにしよ!」
澪「うん!」
──────────
澪「律、私達バイトするんだ」
律「…」
澪「まぁ、バイトと言っても交通量調査なんだけどな」
律「…」
澪「私が接客ニガテだからみんなに迷惑かけちゃったかな?」
律「…」
澪「バイト頑張るよ、おやすみ律」
律「…」
バイト当日
和「二人ずつ一時間ごとに交代だから」
紬「とりあえずまだ時間があるからみんなでお茶にしましょう♪」
唯「わーい!ピクニック~!」
澪「なんだか不安だなぁ…」
澪「…」カチッ
和「…」カチッ
澪「…なぁ、和?」カチッ
和「何?秋山さん」カチッ
澪「どうして軽音部に入ってくれたんだ?」カチッ
和「…本当は唯がせっかくやる気なのに廃部にするのがもったいなかったからだったんだけど…」
澪「…」
和「今はここにいるのが楽しいから…かな?」
澪「和…じゃあずっといてくれるか?」カチッ
和「カチッ」
澪「…プ…ははは、返事の代わりに押してるぞ」カチッ
和「…そういう秋山さんだって話すたびに押してるじゃない」
澪「…!」
和「ふふ、職業病かしら」
澪「ははっ、お互い様だったな!」
紬「お疲れ様~♪」
唯「ねえねえ、和ちゃんと澪ちゃんバイト中盛り上がってたけど何話してたの?」
澪「別に、なー和」
和「うん、澪さん、普通の話よね」
唯「ん~…私にも教えてくれたっていいじゃん!」
紬「まぁまぁ」
唯「カチカチッ」
紬「…まぁまぁまぁまぁ」
唯「カチカチカチカチ」
澪「…やっぱり職業病だな」
唯「じゃあね~、明日もお菓子よろしくね~」
和「こら唯、甘え過ぎよ」
唯「冗談だって~」
紬「ふふ、二人は仲がいいわね♪」
澪「…」
唯「澪ちゃん?」
澪「…ぁ?あ、ああ…うらやましいな~って思ってさ」
和「うらやましいって言ってももうみんな友達でしょ?」
澪「ああ、そうだな」
澪(…律)
澪「じゃあ私はバスで」
紬「私は電車ね」
唯「あ…」
和「ん?どうしたの唯?」
唯「みんな~、今日は本当にありがとうね~!ギター買ったら毎日練習するから~!」
紬「ふふ♪唯ちゃんって良い子よね♪」
澪「…」
紬「澪ちゃん?(…澪ちゃん、何かあったのかな?)」
──────────
澪「なあ、律…和ってすごい良い奴だったぞ」
澪「きっとお前も会ったら『ええ人や~』とか言ってついてっちゃうんじゃないか?」
律「…」
澪「なぁ律…本当にお前はどこにいるんだよ…寂しいだろ…」
律「…」
澪「…ごめん、律の事情も知らないのに我がまま言って…おやすみ」
律「…」
2日目終了
澪「1日8千円か…まだ足りないな」
唯「…やっぱりこのお金はもらえないよ、みんな自分のために使って」
紬「唯ちゃん…」
唯「私、自分で買えるギターを買うよ」
和「唯、いいの?」
唯「うん、みんなに我儘を言ってるだけじゃなくて早く練習してうまくならないと!」
紬「…私があのギター安くしてもらうわ!」
澪「え?」
紬「あの店、うちの系列のお店なの」
楽器屋
紬「5万円にまけてもらったわ♪」
唯「本当にありがとう!いつか必ず返すよ!」
和「…いいの?これ…」
紬「これって『値切る』って言うんでしょ?私夢だったの~♪」
澪「そんなこと夢にするなよ…」
──────────
澪「律、唯がとうとうギターをゲットしたんだ」
澪「ムギが値切ってさ~」
澪「そういえばお前もドラムセット値切ってたよな…」
律「…」
澪「お前のドラムセットはお前が帰ってくるまで和が使うからな」
律「…」
澪「そのほうが有効活用だろ?」
律「…」
澪「んじゃ、おやすみ…明日からは練習できるな…」
律「…」
澪「人数も揃ったし早速部活申請書を出そう」
和「私達の顧問ってどうするの?」
澪「こもん…?」
和「メンバー集めるだけじゃなくて先生がいないとダメなんじゃない?」
澪「どうしよう…そこまで考えてなかった…」
唯「さわ子先生とかどうかな?」
紬「素敵♪」
澪「そうだな、あの人ならやってくれそうだな」
さわ子「私は合唱部の顧問だし…かけもちはちょっと…」
澪「そこをなんとか…」
さわ子「ごめんね」
唯「先生…ここの卒業生ですよね?」
さわ子「え…そうだけど?」
唯「軽音部でしたよね?」
さわ子「え…何でそれを…」
唯「実は音楽室からアルバムが…」
さわ子「!!」ダッ
澪「全力疾走!?」
澪「唯、いつの間にアルバムなんて…」
唯「あー…お菓子ないかなって探してたら」
和「あんたって子は…」
紬「その写真の人がさわ子先生?」
唯「そうだよ、カセットとかもあってね、すごかったよ!」
澪「どんなのだった?キラキラした感じ?」
唯「『お前らが来るのを待っていたぁぁぁぁぁーーーー!!』って感じ」
澪「ひぃっ!キコエナイキコエナイ…」
和「澪、置いてくわよ」
さわ子「…これさえ処分すれば…」ゼーハー
唯「そこまでだ!」
さわ子「!クッ…ここまでか…」
唯「証拠はあがってるんだ~覚悟しろ~」
さわ子「…あれは学生時代のころ…」
澪(なんか語り始めた…)
さわ子「…というわけなのよ」
唯「そうなんだ…さわ子先生…」
さわ子「…唯ちゃん…」
唯「ばらされたくなかったら顧問になって♪」
さわ子「…!」
和「脅迫!?」
澪(唯ってちょっと律っぽいところあるよな~)
紬(澪ちゃん何ボーっとしてるんだろ?)
──────────
澪「律、とうとう軽音部が部活として承認されたよ」
律「…」
澪「顧問の先生はさわ子先生って言うんだけど、きれいな先生でさ」
澪「でも実は中身はかなり激しい性格の人なんだ」
律「…」
澪「あ…別にヤバイ人なわけじゃないぞ、人は見かけによらないってだけで」
澪「そういえば今日の唯はお前っぽかったな」
律「…」
澪「お前とは相性が良さそうだな、会わせるのが楽しみだ!」
澪「それじゃ、おやすみ」
律「…」
唯「いやー、ギターもやっと上手くなってきたね!」
和「そういえば唯、中間テストの勉強は?」
唯「ちゅうかん…てすと…?」
和「もう中間テストの時期よ」
唯「あ~…」
唯「…と、言うわけでみんな勉強教えて!」
澪「いいけど?」
紬「いいわよ♪」
唯「やったー、みんな成績良さそうだもんね!」
和「よかったわね、唯」
紬「…ここがこうなって…」
唯「ふんふん…なるほど、わからん」
紬「…ごめんなさい、人に勉強教えたこととかなくって…」ウルッ
唯「あ、いや、ムギちゃんが悪いんじゃなくて私がバカなだけだから~…」
澪「…ここが分からないのか?ここはこうやって…」
唯「お~!そういうことか!」
澪「わからなかったらこうやって覚えるといいぞ」
和「澪、勉強教えるの上手いわね」
澪「ああ、昔ちょうど唯みたいにテスト前に勉強を教えてもらおうとする奴がいてな」
和「私なんか唯が集中してくれないから教えるの諦めてたわ」
紬「あの…澪ちゃん、その友達って今どうしてるの?」
澪「ん?ああ、あいつは去年の夏に行方不明になってな」
唯「行方不明!?それって…」
澪「ああ、でも両親から離れて私に内緒で転校しただけなんだ」
紬「その子の名前は?」
澪「田井中律って言うんだけど…居場所知ってるの?」
紬「…知らないわ、ごめんなさい」
澪「そうか、まぁいいんだ、きっと帰ってくるからさ」
紬「…」
──────────
澪「今日は唯がテスト勉強で泣きついてきたんだ」
澪「律~、お前向こうで私なしでちゃんと勉強してるか~?」
律「…」
澪「唯は集中したらすごい勉強できるな」
澪「お前ももうちょっと勉強に集中してくれれば…」
律「…」
澪「ふふ、じゃあおやすみ」
律「…」
澪「テストも終わったし合宿をしよう!」
和「合宿?バンドの?」
澪「唯が見つけてきた先生の演奏がすごすぎてな」
紬「学園祭までにもっとうまくなっておきたいわね」
唯「合宿といえば海!」
澪「遊びに行くんじゃないぞ」
紬「わ~、みんなで海!素敵ね~♪」
澪「ムギまで…」
紬「じゃあ場所は私の別荘で♪」
和「いいの?別荘なんて…」
紬「いいのよ、別荘はたくさんあるし」
唯「べっそうがたくさん…ムギちゃん、恐ろしい子!」
澪「…ちゃんと練習するんだよな?」
紬「大丈夫、ちゃんと機材もあるから♪」
──────────
澪「律、私達合宿に行くんだ」
澪「合宿にお前も連れて行くか?」
律「…」
澪「ふふ、せっかくだから連れて行ってやるよ」
律「…」
澪「それじゃ、おやすみ」
律「…」
合宿当日
澪「みんなおはよう」
和「おはよう、やっぱり最後は唯ね」
紬「ちょっとぐらい遅れてもいいじゃない♪」
和「ところで澪、そのぬいぐるみは?」
澪「ああ、こいつは律って言うんだ」
紬「それって…お友達の…?」
澪「そう…恥ずかしい話だけどこの子に話してると律と話してるみたいでな」
紬「…澪ちゃん」
唯「おくれてごめ~ん!」
和「みんなそろったし行きましょうか」
唯「海だーーー!早速泳ごうよ!」
澪「練習してからな」
紬「私も遊びたいな♪」
澪「まさかの裏切り!?」
澪「の、和は?」
和(…ここで練習しようって言うと多数決で2対2になって大変…)
和「私は遊んでも良いと思うわ」
澪(ええええええええ!?)
澪「…結局晩まで遊んでたな…」
和「あなたが一番はしゃいでたでしょう…」
唯「ご飯食べて寝たい~…」
紬「そうだ、まずは買い出しに行かないと!」
澪「じゃあ私が…」
紬「澪ちゃんはここで食器の用意とかしててほしいの」
和「じゃあ私が行くわ」
唯「私はごろごろしてる~」
澪「手伝え!」ポカッ
唯「わかってるよ~…」
和「…どうして澪ちゃんはダメだったの?」
紬「実は…田井中律って子…」
紬「調べたら去年の夏に死んでるの…」
和「そう…じゃあ…」
紬「澪ちゃんはその子が死んでるのを認めたくないだけなのよ」
和「それを話すために?」
紬「ごめんね、このことは和ちゃんには知ってて欲しくて…」
和「それで…どうするの?」
紬「そっとしておいてあげてほしいの」
和「真実を伝えないってこと?」
紬「うん…いつか…自分で認められるようになるまでは…放っておいてあげましょう」
和「わかった、このことは唯にも…」
紬「唯ちゃんなら…言わなくても大丈夫な気がする」
和「そう?」
紬「それより…唯ちゃんは性格的に律って子に似てるみたいだから…」
紬「唯ちゃんには澪ちゃんを癒してほしいのよ」
和「よくそこまで分かるわね」
紬「けっこう澪ちゃんは分かりやすい子よ♪」
唯「澪ちゃん、その子は?」
澪「ああ、律って言ってな、この子を通して毎日遠くの友達と話してるんだ」
唯「それって行方不明の?」
澪「ああ」
澪「まぁ…こんなんじゃ声は届かないのもわかってるんだけどね…」
唯「そんなことないよ!」
澪「!」
唯「きっと思いは届いてるよ!だから心配しないで!」
澪「唯…」ウルッ
唯「よしよし…」
紬「あらあら♪」
澪「すーすー…」
唯「ぐーぐー…」
和「何があったの?二人抱きついて寝てる…」
唯「…ん、ムギちゃん…たくあんたべさせて~」
紬「?」
和「ほら、起きなさい唯!」
唯「うーん…あ、和ちゃん…どうしたの~?」
和「どうしたの?はこっちの台詞よ」
唯「あー…澪ちゃんが泣いちゃって~」
和「?」
唯「…というわけでありまして…」
紬「ね、唯ちゃんなら大丈夫でしょう♪」
和「近くにいすぎて唯を過小評価してたわ」
澪「…う、うーん…あ、おはよう…」
和「おはよう、買い出し行ってきたわよ」
澪「…!ま、まだ用意できてない!すまん!」
紬「いいのよ、ゆっくりやりましょう♪」
唯「そうだよ~、別にそんなんじゃみんな怒らないよ~」
和「唯も寝てたけどね…」
澪「…みんな寝たか…」
澪「さすがに人前で律に話しかけるのは恥ずかしい…」
澪「律、見てるか?みんな良い奴だろ」
律「…」
澪「ふふ…今日は練習も上手くいったんだ」
澪「その前は遊びすぎちゃったけどな…」
律「…」
澪「じゃあ、今日はおやすみ…」
律「…」
紬(澪ちゃん…やっぱりつらいのかな…?)
澪「学園祭も近いし、先生にオリジナルの曲を聞いてもらおう!」
唯「おうさ!」
和「演奏は合宿で完璧になってきたしね」
紬「じゃあ私先生呼んでくるね」
さわ子「…曲はまあまあだけど、歌は?」
澪「あ…」
和「誰が歌う?」
唯「パチッ♪(ウインク!)」
澪「わ、私は嫌だ!恥ずかしい!」
和「じゃあ…」
唯「ニコッ!」
和「…紬は?」
紬「私は…キーボードで精いっぱいだし…」
和「私は初心者だし…」
唯「フンス!」
和「…唯、やりたいの?」
唯「べ、別にやりたかったわけではないんだけどね!みんなができないって言うんなら…」
和「じゃあボーカルなしにしましょうか…」
唯「うそです!歌いたいです!」
澪「じゃあ私は歌詞書いてくる」
さわ子「決まりね、じゃあ私は服を作ってくるわ!」
和「先生…それは…」
──────────
澪「歌詞か…どうしようかな…」
澪「なあ律…どんな歌詞がいいかな…?」
律「…」
澪「…律には歌詞なんて書けないよな」
律「…」
次の日
さわ子「歌詞はできたの?」
澪「できたにはできたんですけど…」
さわ子「どれどれ…」
澪「あ…」
さわ子「…!!ぐ…背中がかゆい…」
和「澪って…」
唯「すごい!可愛い歌詞!」キラキラ
紬「…!(澪ちゃんイメージと違って可愛い!)」キラキラ
澪「…そ、そんなに良かった?」
さわ子(ここは良いって言ったほうが若く思われるのかしら!?)
さわ子「澪ちゃん、GJよ!」
和「…えー」
唯「あー、ギター弾いたら歌えないし、歌ったらギター弾けない…」
澪「初心者なのに歌おうとするからだぞ」
さわ子「じゃあ唯ちゃんは私の家で猛特訓ね!」
和「先生…無理させ過ぎないでくださいよ…」
さわ子「分かってるって!」
学園祭前日
さわ子「ふふふ…完璧にできるようになったわよ!唯ちゃん!」
ジャガジャガジャン♪
澪「難しい部分まで完璧!?」
唯「ぎみをおもうどー」
澪「ズコー」
唯「練習しすぎちゃった♪」ガラガラ
さわ子「練習させすぎちゃった♪」
和「仕方ないわね…澪、お願いできる?」
澪「へ…?わ、私…?」
和「澪なら歌詞も覚えてるし、元々上手いから歌えると思うわ」
澪「…」キョロキョロ
紬「頑張って♪」
唯「がんばれ~」ガラガラ
澪「…仕方…ない…や、やるよ…」
──────────
澪「律…どうしよう…私が歌うことになっちゃった…」
律「…」
澪「私にできるかな…」
律「…」
澪「律…お前がいてくれたら…」
律「…」
学園祭
澪「…」
紬「澪ちゃん、澪ちゃんなら大丈夫よ」
澪「…」
和「しっかりして澪、あなたが歌うのよ」
唯「ごめんね~」ガラガラ
澪「も、もうだめだあああああ!」
紬「ほ、ほら…お茶とお菓子よ!」
澪「アリガトウ…」ガタガタ
唯「お、お茶こぼれるよ!」ガラガラ
和「これは相当ね…」
紬(どうにかしてあげないと…)
紬「じゃあ…MCは唯ちゃんに任せましょう!」
唯「MC?」ガラガラ
和「曲の合間に喋ることね」
唯「私そういうのは得意だよ!」ガラガラ
唯「まずはドラムのボーイッシュメガネガール!真鍋和~!」ガラガラ
和「ふふ」
唯「次にキーボードのほんわかお嬢様!琴吹紬~!」ガラガラ
紬「いえーい♪」
唯「そしてボーカル&ベースの恥ずかしガール!秋山澪~!」ガラガラ
澪「…」
唯「そして私がやる時はやる天然系天才美少女!ギターの平沢唯で~す!」ガラガラ
澪「自分だけ評価高すぎるだろ!」
唯「最後にこの子が私の恋人!ギー太~!」ガラガラ
澪「その紹介はいらん!あと名前つけてたんかい!」ポカッ
唯「えへへ~、澪ちゃん緊張解けた?」ガラガラ
澪「あ…ありがとう!」
さわ子「みんな居るわね~」
バァン
唯「あ、さわちゃん先生!」ガラガラ
和「さわちゃん先生って…」
さわ子「衣装できたわよ~♪」
澪「ひっ…そんなの着れない…恥ずかしい…」
和「先生…せっかく秋山さんが緊張解けたのに…」
さわ子「緊張なんてすることないのよ~、逆に着ちゃえばそのノリでできるわよ~」
唯「これ可愛い~」ガラガラ
紬「素敵ね~♪」
澪「は、はは…なんだか楽しくなってきた…」
和(澪が壊れた…!!)
『それでは、次は軽音楽部の発表です』
澪「…ヤバイ…もうだめ…」
紬「大丈夫よ、澪ちゃん♪」
唯「私達が付いてるよ!」ガラガラ
和「観客はトマトだと思えばいいのよ」
澪「…え、パイナップルじゃないの?」
和「…え…パイナップルは初めて聞くけど…」
澪(そうか…あれは律が…)
澪(律…私頑張るよ!)
ジャーン♪
客「ワー!」パチパチ
澪「あ、ありがとう!」
ズイッ
紬「あ…」
澪「きゃああああ!」
バターン
唯「澪ちゃん隠して!まる見え!」
澪「…あ…きゃああああああああ!もうお嫁にいけないいいいいい!」
──────────
澪「律…もう私はダメだ…」
律「…」
澪「もうお嫁に行けない…」
澪「もう寝る…おやすみ…」
律「…」
新学期
澪「あ…和と同じクラス…」
和「今年はよろしくね、澪」
澪「ああ、よろしく」
唯「私はムギちゃんと同じクラスだよ~」
紬「よろしくね、唯ちゃん♪」
唯「うん!」
和「澪、新入生に配る紙できた?」
澪「う、うん…」
紬「あらあら、今年も絵が小さくなってるわよ」
澪「やっぱ一人じゃ無理だ…」
唯「んじゃ私がいろいろ書き加えてあげるよ~」カキカキ
和「『毎日お茶会やってマス!』って…軽音部の売りじゃないでしょ…」
唯「えへへ~♪」
澪「そういえば軽音部の売りって何だろう…」
さわ子「売りが無ければインパクトで勝負よ!」
和「先生、いたんですか」
さわ子「ええ、ずっと」
唯「インパクトってどうするの?」
さわ子「これよ!」
和「動物の…着ぐるみ…?」
唯「軽音部でーす、ライブやりまーす!」
紬「ぜひきてくださーい!」
和「あ、そこの人、怖がらないでください」
澪(…恥ずかしい)
梓「…」
唯「そこの君!軽音部のライブ来ませんか!?」
梓「…!(何、この人たち…)」
澪「別に怪しいものじゃないんだ…これを…」
梓「…(軽音部…)」
憂「純ちゃん、ここが軽音部の部室だよ」
純「ワクワクするな~♪」
ガラッ
唯「おかえりなさいませ~」
和「先生!やめてください!澪が死んじゃいます!」
澪「きゃああああ!お嫁にいけなくなるぅぅぅぅ!」
さわ子「待ちなさ~い!」
憂純「…」
憂「この人が私のお姉ちゃんの唯です♪」
唯「よろしく~♪」
純「よ、よろしく…(この人は変な人っぽい…)」
憂「この人が紬さんで、この人が和さんで、さっき走って行ったのが澪さん」
紬和「よろしく」
純(他の人はそうでもないのかな?)
和「澪も抵抗せずにコスプレしちゃえばあんなことにはならないのに…」
紬「でも恥ずかしがってる澪ちゃんが可愛いわ♪」
純(前言撤回…!)
憂「…どう…だった…?」
純「う、うん…考えておくね…じゃあまた」
憂(…これは望み薄かな…)
憂「あ、同じクラスの梓ちゃん…ですよね」
梓「…そうですけど」
憂「良かったら軽音楽部のライブに行きませんか?」
梓「…」
憂「私のお姉ちゃんが出るんです♪」
梓「考えておきます…」
ライブ当日
唯「…私カスタネットとかやろうと思ってました~」
和「ワン、ツー…」
唯「あ、でもカスタネットはダメなんですよ~!」
澪「コミックバンドか!」
唯「あはは、ごめんごめん、じゃあいきま~す!」
~♪
梓「…(すごい…)」
憂「あ、梓ちゃん来てたんだ~」
梓「…うん」
唯「こないね~」
和「ライブは盛り上がってたのに…」
紬「寂しいわ…」
澪「やっぱりあの着ぐるみが…」
ガラッ
梓「あの~、入部希望なんですけど…」
唯「あ!どうぞ入って入って~!」
紬「お茶用意しますね~♪」
梓「…え…あの…」
さわ子「あ、新入部員の子ね~」
梓(先生来ちゃった…お茶とか大丈夫なのかな…)ドキドキ
さわ子「私は紅茶ね~」
紬「は~い♪」
梓(先生が率先して!?)
さわ子「あなた、猫耳が似合いそうね」
梓「え…はぁ…(何言ってんのこの人ーーーー!?)」
澪「ごめんな~、この先生頭おかしいんだ~」
梓「は、はぁ…」
さわ子「邪魔しないでよ秋山さん!」ブー
唯「ほらほら~にゃんにゃん!」
紬「次私~♪」
和「せっかくだから私も」
梓(私は試されてるのか…?だとしたらこれは着けないとダメな気がする…)
梓「やります!私が着けます!」
澪(ええええええええ!?)
スチャ
さわ子「私の目に狂いはなかったわね!」
唯「にゃ~んって言ってみて♪」
梓「にゃ…にゃ~ん…」
唯「今度からあだ名はあずにゃんに決定だよ~!」ダキッ
梓「…にゃ!何するんですか!」
和「唯のいつもの癖みたいなものだから」
──────────
澪「律、やっと新入部員が入ったんだ」
澪「梓っていってな、小さくて可愛い子だよ」
律「…」
澪「お前より小さいんだよ、お前は可愛くないしな!」
律「…」
澪「冗談だよ、それじゃあおやすみ」
律「…」
梓「練習しましょう!」
唯「今日は無理~…」
梓「どうしてですか?毎日練習すればその分だけ実力が…」
紬「まぁまぁ、お茶の後にでも…」
梓「そうやって甘やかすからダメなんです!」
和「まぁ梓ちゃんも落ち着いて…」
梓「これが落ち着いていられますか!」
唯「あずにゃん…」ダキッ
澪「そんなことで落ち着くわけ…」
梓「…」ホワワン
澪「落ち着いたーーーー!」
澪「だいたいどうしてそんなに怒ってたんだ?」
梓「…もっと本格的にやってるものだと思ってて…」
梓「皆さんを見てると…なんかアイドルがタバコ吸ってるのを見るような気分に…」
和「…ごめんなさいね、ちゃんと練習するから」
梓「私こそ…急に怒ってしまって…」
唯「あずにゃんは悪くないよ」サッ
梓「ケーキはやめてください」
唯「パクッ」
梓「…」シュン
唯「…」サッ
梓「…!」パァァ
紬「可愛い♪」
さるくらった
澪「じゃあ梓のために特訓しよう」
唯「えー…」
紬「じゃあピクニックに行きましょう♪」
澪「練習しに行くんだぞ?」
さわ子「そうしましょう!」
唯「さわちゃん先生!?」
さわ子「よーし、そうと決まったら善は急げ、今週末ね!」
澪「だから練習…」
──────────
澪「というわけでピクニックに行くことになったんだけど…」
澪「まったく困った顧問だよな~」
律「…」
澪「もちろんお前も行くよな」
律「…」
澪「じゃあおやすみ」
律「…」
ピクニック当日
唯「今日は晴れて良かったね~♪」
さわ子「これでこそみんなの衣装を作ってきた甲斐があるってもんよ!」
梓「…」
澪(まずい…梓の機嫌が…)
唯「はい、鯛焼きだよ~」
梓「…!」パァァ
澪「梓、鯛焼き好きなのか?」
梓「はい!」
梓「そういえば澪先輩」
澪「ん?」
梓「そのぬいぐるみは?澪先輩のイメージ的に気になって…」
澪「ああ、こいつは律って言ってな、私の友達なんだ」
梓「…?」
澪「正確には私の友達の代わり…こいつと話してると律と話してる気がするんだ」
梓「…(ロマンチスト…?)」
梓「和先輩、紬先輩、澪先輩のぬいぐるみなんですけど…」
和「その話は…」
梓「なにか引っかかることでもあるんですか?」
紬「実は律さんはもう死んでるの…」
梓「え!?」
和「澪も分かってはいるんだろうけど…」
紬「梓ちゃんも澪ちゃんが現実を受け止められるまで待ちましょう」
梓「…です…」
和「え…何?」
梓「絶対ダメです!そんなの…」
和「ちょっと梓!」
梓「そうやって現実を見せないで、あなたは幸せだと嘘ついて!」
梓「それは偽善です!本人のためにはならないです!」
紬「でも…」
梓「先輩方は真実を伝えるのが怖いだけです!私が伝えます!」
紬「待って…梓ちゃん…!」
梓「澪先輩!」
澪「何だ、梓…?」
梓「先輩はもっと強い人だと思っていました」
澪「…何のこと?」
梓「とぼけないでください!死んでるって…知ってるんでしょ!」
澪「…しん…でる…?」
梓「そのぬいぐるみの人です!」
澪「いやだ!律は死んでない!」
梓「嫌だじゃないです、これは真実です!」
紬「梓ちゃん!もうやめてぇ!」
澪「律が…死んで…」
梓「そのままだったら死んだ人も浮かばれません!」
和「…」パァン
梓「痛っ!何するんですか!」
和「もういいでしょ…澪だって辛いのよ」
梓「でも!」
和「梓は澪の気持ち…考えたの?」
梓「…」
和「澪だって…ただ現状に甘えてるだけじゃないの」
和「私達だって…傷つけたくないのもあるけど、澪がゆっくり立ち直れるようにしたかったの」
梓「…すみません」
唯「…どったの?みんな…」
さわ子「トラブルとかやめてよ」
澪「…グスッ」
梓「私が…悪いんです…私がぬいぐるみの人は死んでるって言ったから…」
唯「あずにゃん…あずにゃんは頑張り屋さんなんだけどちょっと頑張りすぎちゃうだけ…」
唯「それに澪ちゃん…律さんが死んでたとしても…声は届いてたと思うよ」
澪「…本当?律…」
律『おい、澪~!泣いてんじゃね~よ!』
澪「律!」
律『全く私はお前の恋人かっての~』
律『ピクニックとかぬいぐるみフツー持ってかねーだろって』
澪「だって…」
律『だいたいなぁ、私は小さくないっての!今はぬいぐるみだけどな!』
澪「ギャグになってないぞ…」
梓「澪先輩はいったい…」
唯「きっと…律さんと話してるんだよ…」
和「律さんの死を理解するために、かもね」
紬「大丈夫、澪ちゃんなら…」
梓「…」
律『お前パンツ見せちゃったんだってな』
澪「それは言うな!」
律『でも澪の歌、聞きたかったぜ!』
澪「いつだって歌ってやるよ!律のおかげで歌えたんだ!」
律『意味わかんねーし、あとお前の歌は…歌詞がアレだろ…』
澪「アレってなんだよ~…」
律『わりーわりー、なんつーかこー…な!』
澪「はっきりしろ!」ボフッ
律『ぬいぐるみだから痛くねーし!』
律『でも、お前の歌詞…私は好きだぜ!』
澪「…律」
律『でも私を歌詞に使うのはやめてくれよ~、こっぱずかしい…』
澪「ふふふ…これからいっぱい作ってやる」
律『物理攻撃が効かないから精神攻撃に移ったよこの子!』
律『あとお前、遊ぶわ泣くわ寝るわで合宿楽しみ過ぎだろ』
澪「練習もしたって!」
律『そういえば私は今テストないから勉強の心配はいらないぞ~』
澪「お前は…」
律『おばけにゃ学校も試験もないってな!』
律『ドラムもないけどな』
澪「じゃあドラムはあげたけど大丈夫だな」
律『あの世で返せよ』
澪「まだまだ先だな」
律『お前がバイトするって聞いてドキドキしてたぞ~』
律『お前だったら交通量調査でも車に対して恥ずかしがって~』
澪「んなわけあるか!」
律『そういえばこっちにドラムはないけどドラムで負ける気はしないぞ~』
律『だいたい私のドラムだしな!』
澪「和は1年でものすごい上手くなったぞ」
律『お前が一人で軽音部立ち上げたのには驚いたな』
澪「そんなに意外か?」
律『だってお前人見知りだろ?』
澪「う…そういうことか…」
律『いや~やるようになったな~って』
律『伊達に有名なベーシスト目指してませんな~』
澪「いいだろ!夢を語るぐらい!」
律『でもお前も良い奴らに囲まれたよな~』
律『頑張り屋でお前想いの後輩』
律『テンション高くて面白い顧問の先生』
律『みんなのバランスを取ってくれる子』
律『天然で空気を明るくしてくれる子』
律『ちょっとズれてるけどみんなのことをいつも考えてる子』
律『これがお前の力で集まったんだぜ』
律『…言ってて恥ずかしくなってきた』
澪「もう…大丈夫だ」
律『そっか!んじゃ行くわ~』
澪「軽過ぎないか?」
律『だって重かったら別れにくいっしょ』
澪「そうだな…」
律『じゃ、またな、澪』
澪「またな…律…」
──────────
あれは幻聴だったのだ
私が律と話したかったから聞こえた妄想
だから…私は律の分まで生きなきゃならないんだ
律の分まで音楽を楽しむんだ
梓「澪先輩、そのノートに書いてるのって歌詞ですか?」
澪「ああ、ムギが曲を作ってくれたからな!」
梓「これは…恋の歌っぽいですけど…」
澪「ふふ、ある意味そうだけど実は違うんだ」
梓「意味が分かりません」
澪「この曲のタイトルは…」
「遠くの君へ」
おわり
178 : 以下、名... - 2010/08/11(水) 03:53:16.10 +cDt3QIN0 114/116読んでくださったり保守してくださったり本当にありがとうございます。
タイトルはGRAPEVINEですが理由は元が近いタイトルだったからせっかくだから変えただけです…すみません
律が好きなんで律がいないと悲しいなって思っていただければ光栄です。
ちなみに、澪が律に話してるシーンは一応全部「…」に律の台詞が入ります。
183 : 以下、名... - 2010/08/11(水) 04:19:15.95 +cDt3QIN0 115/116蛇足
人気バンド「ティータイム」のリーダーでベース、
シンガーソングライターとしても活動していた秋山澪(52)
がんのため死去
彼女が闘病中に作詞していた「会いにいく」は
「ティータイム」のメンバーによって追悼ライブにて歌われることになった
澪「やっと会えたな」
律「ババアになったなー」
澪「うるさい!こっちはもうちょっと遅くに行く予定だったんだぞ!」
律「あ、そうだ…ドラム返して~」
澪「ドラムは返せないから歌作ったんだろ!」
律「あれか、恥ずかしかった~、やめろって言ったじゃん!」
澪「やめろって言われたからな!」
律「澪~てめ~!」