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韓国の東京オリンピックボイコットの可能性について考えてみた。

旭日旗の使用を許可したと大騒ぎしたかと思えば、パラリンピックのメダルが旭日旗に似ているとして非難。さらに、東京オリンピック組織委員会のホームページの地図に竹島(独島)が表記されているとして猛反発。最近では、放射能問題を取り上げてその危険性を世界に発信しようと一生懸命になっている。

これら騒動もあって現在、東京オリンピック参加に対する韓国の世論はかなり否定的な方向に傾いている。上記の問題が浮上する前の8月上旬の段階でも、放射能の危険性から国民の実に10人に7人がオリンピックボイコットに賛成していたことを考えれば、現在は、その数はさらに増えているはずだ。



普通に考えれば、国民がいくら騒いだところで、世界的なビッグイベントであるオリンピックをボイコットすることはまずあり得ないだろう。しかし、現在、文在寅政権が置かれている状況は普通ではなく、オリンピックボイコットという大博打を打たなければ政権運営はもちろんのこと、自身の退任後の進退まで危険にさらす恐れがある。そこまで追い込まれた状況なのだ。


東京オリンピックの3ヶ月前に文政権の命運を分ける総選挙


東京オリンピックは2020年の7月に開催される。オリンピックは世界が注目するビッグイベントであるが、韓国政府にとっては、それよりももっと重要なビッグイベントがオリンピックの前に開催される。

それが2020年4月に行われる第21代総選挙だ。韓国の国会議員を入れ替える選挙であり、文在寅政権2年半の評価が言い渡されるある種の裁判である。前政権の朴槿恵政権は、この選挙で敗北し、セヌリ党は過半数を落とし第2党に陥落し、いわゆる「ねじれ国会」となり、政権運営に大きな影響を及ぼした。



つまり、この総選挙は当代政権の死活に関わる問題であり、どんな手を使ってでも勝たなければならない超重要な選挙なのである。もし、負ければ、残りの任期2年間が地獄絵図になることは火を見るより明らかだ。さらに、ここでの勝敗が、次の大統領選挙にも影響を与える。これは文在寅大統領とその周辺の退任後の進退にも関わる問題だ。万が一政権交代するようなことがあれば、積弊という名の政治報復を思うがままにしてきた文政権が、平穏な余生を送れるとは到底思えない。政治生命を超えて、人としての生命に関わる本当の意味での死活問題なのである。

このようなウルトラハイパービッグイベントが、東京オリンピックが行われる3ヶ月前の2020年4月15日に開催されるのだ。


韓国が東京オリンピックをボイコットせざるを得ない理由


その選挙で勝利するために、東京オリンピックをボイコットするというのがこの記事で予測するものであり、そうなる可能性が極めて高いと見ている。その理由について説明しよう。

現在、文在寅政権の支持率が歴代最低の40%まで下落したと報じられている。否定世論は実に53%に達し、肯定世論を大きく突き放している。こうなった要因は、昨今のチョ・グク法務部長官任命に至る人事問題と、低迷する経済の問題からだ。文在寅政権の国政運営に否定的な回答をした約半数がこの2つを上げている。具体的な内訳は、人事問題が29%、経済問題が20%だ。



一方、肯定世論40%を支えたのは「外交」だ。肯定的な回答の中で、最も多くあげられたのが「外交が良い」(18%)という評価だ。外交とひとくくりにしているが、対日政策が占める値が大きいだろう。実際、先月実施された世論調査でも、国民の54%が日本の輸出規制に対する文在寅政府の対応を肯定評価している。



要するに、人事も経済も駄目だが、外交、すなわち日本への対応は良いと評価しているのである。つまり、支持率を上げて選挙に勝つためには、克日政策が最も効果的ということだ。ちなみに、文在寅政権の支持を支えた北朝鮮との関係改善については、肯定回答の7%にとどまっている。実際、北朝鮮との関係は改善しておらず、米朝関係はさておき、南北関係については今後も改善の兆しを見せていない。

これが現在、文在寅政権が置かれている状態だ。このような状況で、来年の4月に自らの政治生命及び退任後の進退がかかった絶対に負けられない総選挙が実施されるのだ。これをどう乗り切るか。

残り7ヶ月の間に、人事問題を払拭し汚名返上できればいいが、一筋縄ではない。チョ・グク批判は依然として続いており、世論は悪化を続けている。野党も追求の手を緩めないでいる。経済についても、輸出で暮らす国だけに、世界経済の影響を受け、自分たちの努力だけではどうにもならない部分もある。しかも、自国の製品を完成させるために必要な素材や部品の供給元である日本との関係も最悪の状況で、生産に支障をきたすリスクも抱えている。さらに、不買運動によって自国企業に痛みが生じているのも事実である。頼れるところは中国だけだろうが、これも即効性という意味では望みは希薄であろう。

となると、最も確実で即効性があり、来年の総選挙に大きなインパクトを与えることができるのは、東京オリンピックボイコットを宣言し、国民のナショナリズムに火をつけることぐらいしかないのである。

ちょっと話がそれるが、これより前、おそらく今年末頃に、強制徴用賠償判決で差し押さえた日本企業の資産売却の時期を迎える。支持率が低迷したままこのタイミングを迎えれば、文政権はおそらく資産売却を黙認するだろう。文在寅政府は、一貫して「三権分立」を名分にその正当性を主張してきた。日本企業資産売却に関して世論調査が実施されたことがないので、具体的な数字はないが、ネットの反応を見る限り、多くの国民がこの名分に賛同しているように見える。

そんな状況で、日本企業の資産売却を阻止ことなどできるはずがない。もし、そんなことをすれば、オリンピックボイコット宣言でも回復不可能なレベルまで支持率が落ちることは目に見えている。レームダック状態になって残りの任期2年以上を過ごすぐらいなら、国民の後押しのもと、日本と徹底的に対立した方が政治的なメリットがはるかに大きいと言える。

東京オリンピックボイコットに話を戻そう。これは少なくとも、7割以上の韓国人が賛成している状況だ。これだけ多くの国民が賛同しているのであれば、それを実施すれば確実に支持率は上がるだろう。ただ、かなり大胆な行動だけに、いくら世論が後押ししているからと言え、国家代表選手を犠牲にする行為であり、生半可な名分では、オリンピックを自らの政権維持のために政治利用したと国内外の逆風にさらされる危険性もある。そうならないために、現在、韓国政府が取り組んでいる名分固めが、国内的には「旭日旗の使用」「竹島(独島)地図表記」であり、国内含めた国外的には「放射能問題」である。

旭日旗を名分としたボイコット


韓国の視点で旭日旗は、自分たちを苦しめた軍国主義の象徴であり、それが自由にはためく場所で競技はできないというもの。この名分はほぼ固まっているが、それをさらに固めるたに、今後は、国際的な同調を求めていく取り組みを強化していくはずだ。つまり、韓国以外の国が、旭日旗使用に異議を申し立てる構図を作ることだ。大方、中国と東南アジア諸国がその対象となるだろう。

また、ボイコットをすれば当然、世界のメディアはその理由を報じ、それを通じて、旭日旗がナチスドイツのハーケンクロイツと同じ意味(戦犯旗)であることを世界に知らせ、旭日旗拒否の動きを世界に拡散し、歴史を反省しない日本の態度を世界が非難する構図を作る機会を得ることになる(韓国の視点で見た場合)。これも大きな名分の一つと言える。

竹島(独島)表記地図を名分としたボイコット


これは国内的要素がかなり強い名分だ。韓国人にとっての竹島、つまり独島は、左右の理念を離れ、大多数の国民が共通した認識を持つ、内部対立の激しい韓国では極めて珍しい象徴物である。「独島は我が領土」この一言で、国民は統合するある種の韓国における天皇のような存在とも言える。これを自国領土と主張し、その証拠物がインターネット上に堂々と掲げられる国で開催されるオリンピックには到底参加できないという名分は、多くの韓国国民が共感するところだろう。

放射能問題を名分としたボイコット


一言で、放射能の危険が広がる日本に、大切な国家代表選手を送ることができないという名分だ。これは旭日旗のような感情的な問題ではなく、人の生命に関わる問題としていることが、この名分の大きなポイントだ。これについては、冒頭でも記したように、今年8月の世論調査で、10人に7人が、この名分によるオリンピックボイコットに賛成しており、国内的には現段階でもかなり強固な名分を持っている。

ただ問題は、日本の放射能が本当に危険なものであることを論理的に説明、つまり証明できるのかということだ。仮に、問題がないのにボイコットすれば、国内外の逆風にさらされる可能性がある。この証拠をつかむことが、この名分を成り立たせる最も重要な仕事だ。最近、韓国政府が、IAEAで日本の汚染水処理をめぐり、現場調査と環境生態系に及ぼす影響評価などをIAEAに要請したこともこの脈略であると考える。

これ以外にも、日本から輸入した石炭灰の放射線量検査を強化したり、実際に日本を訪れ、高い放射線量を示す場所を探す取り組みを行っている。両者とも、現在までのところ、基準値以上の放射線量が検出されたとの報道はないが、このような取り組みを通じて、基準値以上の放射線量を探し出し、オリンピックボイコットの名分にしようと考えているはずだ。

潜在的な名分、経済制裁に対する報復


オリンピックをボイコットすることは、総選挙で勝ち抜くためのものだが、これに加えて、日本の経済制裁に対する報復的な意味合いも兼ね備えている。というのも、韓国が放射能問題を指摘し始めたのは、チョ・グク騒動によって支持率が低迷する前の話であり、不買運動の次の措置として取り組まれた側面があるからだ。8月22日のツイートにも書いたが、この時期から、不買運動に関する記事が落ち着き、放射能問題に関する記事が顕著に増え始めた。


この時は、放射能問題を日本に対する報復措置の次元で考えていただろうが、その後の支持率低迷で、オリンピックボイコットの名分に加えられたものと考えられる。

以上のことをまとめてみると


●現在、文在寅大統領の支持率は40%にまで低下(不支持53%)
●東京オリンピックが開催される3ヶ月前に、現政権を評価する総選挙が行われる
●選挙に敗北すれば、ねじれ国会となり文在寅政権レームダック化及び、次期大統領選挙で政権交代の可能性浮上
●政権交代すれば、大統領退任後に政治報復を受ける可能性あり
●韓国国民の10人に7人が東京オリンピックボイコットに賛成しているため、ボイコットを実施すれば即効的に支持率が上昇する可能性高い
●ボイコットの名分として、「旭日旗使用」「竹島地図表記」「放射能問題」などが上げられる

ボイコットによって得られるもの


●第21代総選挙勝利
●残り2年の政権任期を安定運営
●共に民主党による長期執権の足場
●退任後、政敵による政治報復回避
●旭日旗=ハーケンクロイツ(戦犯旗)や日本の歴史認識を世界に広報
●日本を放射能問題で苦しめることで経済制裁に対する報復を実現


もし、今後、何らかの理由で文政権の支持率が上昇し、来年の総選挙を乗り切れるようなら、ボイコットはないであろう。しかし、現在の韓国の状況を考えると、来年の総選挙までに、文政権の支持率が、対日強硬政策以外で上がるとは考えづらい。米朝交渉による非核化が実現し、それが文政権の成果として加点されるのであれば支持率は多少上がるだろうが、北朝鮮のこれまでの言動を見ると、文政権とは完全に決別しているように見えるし、文政権に加点を許すとは到底思えない。

とにかくポイントは文政権の支持率だ。これが今後どのように推移していくかに注目したい。


カイカイ管理人

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